テキサス州VSバイデン政権ーーワクチン義務化を巡っての頭脳戦?
最初にひとこと。これはバイデン政権 、かなりトリッキーな技を使ってきたのかもしれません。サウスウエストの事例等を踏まえ、それに気が付いたアボット知事が早めに対処したのでは??
テキサス州・アボット知事のワクチン義務化禁止令
テキサス州のアボット知事は10月11日、州内のいかなる団体もワクチン義務化を禁止するエグゼクティブ・オーダーを発行しました。これは、バイデン 政権が今年9月発表した、ワクチン義務化に関する大統領令や政策を受けてのものかと思います。
このエグゼクティブ・オーダーに関するプレスリリースは下記の通りです。
グレッグ・アボット知事は本日、テキサス州のいかなる団体も、従業員や消費者を含むいかなる個人も、宗教的信念に基づく個人的な良心の理由、またはCOVID-19からの回復歴を含む医学的な理由により、COVID-19の予防接種を受けることを強制することはできないとする大統領令を発表しました。また、アボット知事は、下院の首席書記官と上院の書記官にメッセージを送り、この問題を第3回特別総会の議題として追加しました。この大統領令は、このような法案が可決された時点で取り消されます。 アボット知事は、「COVID-19ワクチンは安全で効果的であり、ウイルスに対する最善の防御策ですが、任意であるべきであり、決して強制してはいけません」と発言している。
アメリカのメインストリーム(左翼)メディアや、それを翻訳しただけの日本メディアはまた、”テキサス州がバイデン政権に対抗して反ワクチン政策を展開”みたいな報道をするのではないかと思いますが、まず反ワクチン政策ではありません。
プレスリリース最後にあるアボット知事の発言にもあるように、知事としてはワクチンを推奨しているものの、他人に強制されるものではないという見解です。しつこいようですが、「ワクチンを打つな」とは決して発言していません。特に、今回、このエグゼクティブ・オーダーが出された背景には、バイデン政権による、トリッキーなワクチン義務化政策があります。さまざまな理由から、ワクチン接種を控えている州民が失業してしまうことのないように、という目的で出されたようです。
大統領令が存在しない? by フェデラリスト誌
フェデラリスト誌で、バイデン大統領が発行したという大統領令(エグゼクティブ・オーダー)ではなく、プレスリリースだけではないか?と報じられています。
Joe Biden’s Vaccine Mandate Doesn’t Exist. It’s Just A Press Release
ワクチン義務化が憲法違反として、訴えようと思ったところ、根拠となる大統領令等の法律が発行されていないことがわかったというのです。特に100名以上の従業員を抱える民間企業を対象とした、ワクチンの義務化に関しては、「民間企業に対しては、労働省の労働安全衛生局(OSHA)が緊急暫定基準(ETS)を策定すること」と指示しているとのことでしたが、報道によると、OSHAにはいまだ指示が来ていないそう。
え?まさかそんなこと?もしかして・・・忘れちゃった?
念のため、連邦政府が発行した書類がまとめられたサイトで確認してみたものの、大統領令として出されたワクチン義務化は連邦政府職員を対象としたもののみ。
Requiring Coronavirus Disease 2019 Vaccination for Federal Employees
日付が2つあるのは、署名した日と発効日とです。署名してから発行するまでに時差があるようですが、発表された9月9日付けのものとしては、上記の連邦政府職員を対象としたワクチン義務化がありますので、1ヶ月以上経って発行されていないのは、奇妙です。
大統領令ではなく、アクションプランとして発表
バイデン政権は9月9日、新しいCOVID-19アクションプラン「Path Out of the Pandemic」を発表しました。 この計画には、大規模な民間企業(従業員100人以上)、連邦政府、連邦政府の下請け業者、医療機関で働く従業員にCOVID-19の予防接種を義務付けることが含まれています。
しかし、この発表は、少しトリッキーです。
同じワクチン義務化ですが、大統領令として発行されたのは、連邦政府の職員・下請け業者を対象としたもののみ。民間企業や、医療機関従事者向けのワクチン義務化は、このアクションプランの一部として発表されたのでした。
同アクションプランでは、民間企業に対しては、労働省の労働安全衛生局(OSHA)が緊急暫定基準(ETS)を策定することになっているようです。ETSは、雇用主に対して、従業員が完全にワクチンを接種するか、または毎週COVID-19検査を受けてから出勤することを義務付けるものです。 ETSはまた、ワクチン接種後の従業員に、副作用から回復するための有給休暇を提供することも要求するとされています。
ただし、今のところ、後者2つ(民間企業、医療機関)の法的根拠となるものは、何も発行されていないようで、訴えたくても訴えられないという状況のようです。
トリッキーと言えば、連邦政府職員のワクチン義務化もややトリッキーで、” 今回の大統領令は行政府内でのみ適用されるため、議会や連邦裁判所の職員はその対象外”と、立法・司法機関は免除。
・・・FDAが効果と安全性を保証した、コロナから”あなたとあなたの大切な人を守ってくれる”ワクチン。国をリードする大切なみなさんですので、対象外なんて作らず、ぜひ優先的に接種していただいた方が良いのでは?と思うのですが。
本当はやりたくなかった、でも、ジョーがやれっていうから! byサウスウエスト航空
10月11日、「米サウスウエスト便の欠航相次ぐ、ワクチン義務化で操縦士スト説も 組合否定」というような記事が流れました。
先週末のアメリカは連休で、それなりの航空便の需要がありました。ところが、サウスウエスト航空は10月10日、同社の1日当たりの運航便数の約27%に当たる1000便以上を欠航してしまいました。連休全体での欠航は、約2,200便。欠航の原因は、管制塔の問題や悪天候とされていますが、同社以外の航空便にそれほど大きな影響は出なかった(アメリカン航空は便の2%、スピリット航空は便の2%が欠航)ようで、「便の遅れや欠航は操縦士のストライキが原因ではないか」との臆測が広がっていました。同社は連休前に、全従業員を対象としたワクチン接種の義務化を発表していたからです。
この騒動を受けた前日の株価急落のため、同社CEOのゲイリー・ケリー氏は12日、CNBCの取材に応じました。そこで語った内容の概要が下記の通りです。
Southwest CEO says he never wanted a Covid vaccine mandate but Biden forced his hand
私は、企業がそのような義務を課すことに賛成したことはありませんでしたが、バイデン政権が導入した連邦規則を遵守するために、全従業員を対象としたワクチン義務化を発表しました。この目的は、従業員の健康と安全を改善することであり、職を失う人が出てほしいとは考えているわけではありません。
*追記:サウスウエスト航空は、”民間企業”枠だと思っていたら、”連邦政府の下請け業者枠”でした。
”大統領令っぽい”けど、大統領令ではないメリット
先ほどのフェデラリストの記事によると、連邦政府によるワクチン接種の義務化は明らかに違法・違憲であるとしています。その理由は、健康と安全を規制する全体的な警察権を持っているのは州政府だからだと言います。これについては以前、ファウチ博士も「ワクチンの義務化は連邦単位で出す類のものではなく、連邦政府やそれ以下の単位で出すべき」というようなことを言っていた記憶があります。
「連邦議会は、憲法に列挙されている限られた権限しか持っていない。その中には、予防接種を受けることを拒否した個人に罰金を課す権限は含まれていないし、ましてや生計を立てることを妨げることはできないだろう」(記事中の弁護士の発言)。
バイデン政権のトリックの狙いはここにあるのではないでしょうか?
大統領令が合法的に出せる(と思われる)連邦政府職員を対象としたワクチン義務化と同時に、管轄外の民間企業や医療機関に対しての政策を発表することで、メディアや企業・医療機関は”自分たちも義務化に従わなければならない”命令が出たのだと、勝手に誤解してくれます。
仮に、先ほどのサウスウエストが組合から訴えられたとしても、従業員に義務化命令を出したのは、同社であり、バイデン政権ではりません。フェデラリストの記事でも、下記のように考えているようです。
弱い共和党と悪い民主党がカメラに向かってシャドーボクシングをしている間に、アメリカ市民は放棄されたリーダーシップの下で苦しめられるのです。共和党の弁護士が、バイデン政権が最終的に発行する法的文書に対して訴訟を起こす頃には、政府に医療行為を強制されることを望まない大多数の人々は、失業したり、ほとんど実績のない治療法(ワクチン)を強制的に注射されたり、教育の道を断たれたり、これらの市民がCOVIDルールで免除された不法滞在者の下にいるかのような偽の文書を提供されたり、その他もろもろ最悪の事態に陥っているだろう。
大統領選の票監査等のバトルを巡っても、戦略としては、民主党の方がかなり上手というか、やり手です。闘いを挑んでいる共和党は、正しいこと(憲法に基づいたこと)を行っているのだからという自負があるためか、対抗策が弱く、いろいろ悔しい場面が続いてきました。ここで待ちに姿勢になるのは、危険です。
アボット知事の狙いは混乱の解消?
そのようなこれまでの流れを考えると、今回のアボット知事のワクチン義務化禁止令は、”っぽい大統領令”の勘違い効果を打ち消すことができます。
実は先ほど、ワクチン義務化で混乱した企業の事例として紹介した、サウスウエスト航空は、テキサス州ダラスに本社がある企業です。サウスウエスト航空のCEOは、「ワクチン義務化は本来行いたくなかった」というのは、本当のことかもしれません。というのも、夏の繁忙期が本格的に始まる独立記念日(7月4日)の前にも似たような話があり、ユナイテッド航空等は、この時に義務化をすでに決めていました。
サウスウエスト航空が義務化を発表し、混乱をきたしたのが先週。週明けの月曜日に、エグゼクティブ・オーダーが出たことを考えると、このタイミングで発行されたのには、サウスウエスト航空の件が全く無関係ではないようにも思います。
記事によっては、連邦政府の出したエグゼクティブ・オーダーと、州政府の出したエグゼクティブ・オーダーと、相反する命令の、どちらが優先されるべきか?みたいな論調も見かけましたが、前者は今のところ存在しないため、州政府の命令が唯一のものとなります。今後、バイデン 政権が正式な大統領令を出してきた際に、法廷で戦えば良いのであり、それまでは誤解に基づいた義務化を行わなくて済みます。(*追記:サウスウエスト航空は”民間企業”枠ではなく、”連邦政府の下請け業者枠”でした。そのため、義務化を続行するようです。)
何はともあれ、アボット知事、いつもありがとう!です。
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