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きらきら坂 写真のBefore After
SNSで話題になったきらきら坂
兵庫県の赤穂市にある、石畳の坂道を抜けた先に瀬戸内海を望む風光明媚な観光スポットです。
映え写真を撮りに多くの人が訪れていますが、日の当たり方によって思ったような写真にならない場合もあると思います。
私が訪れたのは9月初旬の午後でした。
強い日差しで明暗差が大きく、撮影後の調整なしにはイメージした写真に仕上げるのは困難な環境です。
惜しい写真が撮れたけど、もうちょっと良く見せたい!!
という人に向けて、今回は実際に調整を行う過程を解説してみようと思います。
アプローチの仕方は人それぞれですが…パラメーターを動かしたことにより、どの様に写真が変わっていくのか…記事を見て頂いた方が、より写真を楽しむ為の糧となれば幸いです。
まずは、無調整の状態です。
脇のお洒落なcafeと石畳が映り込むようにしながら、海へ抜ける路地という感じを出したかったので、広角レンズで水平線を写真の中心に配置して撮りました。
また、日が当たっている壁面の白飛び具合を許容できる範囲の明るさに抑えることも意識しています。
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全体的に青が強くて日影の部分が暗すぎる印象だったので、まず黄色方向にホワイトバランスを調整し、コントラストを下げました。
同時に、全体的な明るさの調整も行なっています。
ソフトによってパラメーターの呼び方が変わったりしますが…今回使っているソフトのcaptureoneでは、露出と明るさが使えます。
それぞれ変化の仕方が違うので、動かしてみて特徴を掴むのが大事ですが…破綻なく、必要な明るさに近づく様に調整します。
コントラストを弱くして薄れたメリハリをフォローする感覚で、彩度も持ち上げました。
どういう写真にしたいか、仕上がりをイメージをしながら進めていきます。
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まだ明暗が単調で細部のディテールに乏しく、爽やかさが足りないので…4段階で区切られたゾーン毎に明るさを調整できるパラメーターで解決を図りました。
ブラックを持ち上げることにより、暗すぎて何が写っているか分からなかった部分が見えてきます。
ハイライトで日差しを強調して、シャドウを上げて満遍なく光が回っている明るい雰囲気に寄せました。
白飛びを軽減させる為にホワイトは下げています。
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補正は一旦OKです、ここまでの調整でも場の魅力は十分に伝わるのではないでしょうか…
大体のソフトでこのぐらいのパラメーター調整はできるはずです。
変化も分かりやすいので、スマホでしか撮らない人にもぜひ試して欲しいですね。
さて、ここからは味付けです…自分が見せたい雰囲気に作り込んでいきます。
この写真に関しては…ふわっとしたドリーミーさも欲しかったので、トーンカーブで明暗のつながりを緩やかに…クラリティー、ストラクチャーでディテールを甘く調整しています。
レベルは上下を詰めて明暗の振り幅を狭めた上で、より明るい方向へ印象付ける調整をしています。
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写り込んでいる素材の存在感を浮き上がらせたかったので、シャープネスの調整で線が細い部分の輪郭を強調する方向に寄せて細かい部分にも目を向けやすくさせつつ、ノイズを付加して立体感を加えています。
また、微々たるズレですが…回転角とキーストーンの調整で水平の精度も上げました。
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全体の色味があっさりし過ぎている印象です、カラー毎に彩度や明るさを調整できるパラメーターで表現したい色合いに近づけていきます。
日光の温かみを感じやすい様に黄色の存在感を増したり、水色の彩度を下げてメリハリ感を出したりと…細かい部分を詰めたら、最終的に基本補正に立ち戻って破綻の無いようにまとめて完成としました。
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大量にまとめて調整する際はもちろん、スマホで撮影した写真をちょこっとだけ補正する事もあり…ワークフローは一定ではありません。
今回紹介した流れは単なる一例として、自分自身がしっくりくる手順を身に付けて頂ければと思います。
また、他にも今回は取り上げていない様々なパラメーターがあります…オート調整機能を活用するのも良いでしょう。
今回紹介したのは、いわゆる現像という作業にあたりますが…未経験でも取り掛かるハードルは確実に下がりつつ、出来る事はどんどん増えています。
撮影するだけでも体験として楽しめるものですが…もうひとつ、写真を磨き上げて自分が感じ取ったものを、より情操的に人に理解してもらうという楽しみ方もあると思います。
私は独学で色んな所からTIPSを拾ってきては、腑に落ちたものを混ぜ合わせて最終的には気合いで帳尻を合わせるようなタイプです。
それでも…だいぶ意図した通りに現像が進むようになってきたので、やり方の一例や意識している事を紹介してみました。
世間には、理論に基づいて体系的に技術を指南している書籍がたくさんあります。
勉強するのがしんどくて写真が楽しくなくなっては本末転倒ですが、知識を得る喜びが感じられるようなお気に入りの本に出会えたら最高ですね。
分かりやすく課題が見える写真をきっかけに、現像の楽しさを軽く紹介するつもりが…思いの外、長々と書いてしまいました。
それだけのめり込む魅力が有るという事を感じてもらいつつ、ちょっとでも記事を面白がって頂けたら幸いです。
2024年9月