プリマハムのシェア拡大、24年3月期中間決算を分析
ハム・ソーセージ大手のプリマハムは、10月31日に24年3月期の中間決算を発表しました。どんな内容だったのか分析していきます。
上期営業25%増益で着地
上期実績
ほぼ事前に上方修正していた通りの着地になりました。営業利益の進捗率は59%です。
売 上 5.2%増の2227億円
営業利益 24.8%増の68.2億円
経常利益 27.4%増の74.2億円
最終利益 4.7%増の38.6億円
今期計画
進捗率は50%を大きく超えていますが、期初に開示した通期計画を据え置いています。年間配当も65円で据え置いています。
売 上 9.2%増の4703億円
営業利益 18.3%増の115億円
経常利益 14.2%増の120億円
最終利益 68.7%増の76億円
値上げ効果で増収、数量も増えてシェア拡大
期初の計画から一転して上期は大幅な増益に
5月に開示した24年3月期の会社計画では、上期の営業利益は2.4%増の56億円でしたが、10月20日に上方修正した通り、増益幅が大幅に拡大して着地しました。据え置いた通期計画115億円に対する進捗率も60%近く、順調と言えます。
売上も5%増、2022年から既に3回の値上げを実施していますが、それでも売上が落ちていないのは安心材料です。
売上総利益率 11.6%→11.6%
販管費率 9.0%→8.6%
営業利益率 2.6%→3.1%
粗利である売上総利益率は横ばいです。原材料価格上昇で値上げしても売上総利益率の改善には至っていないことが分かります。販管費率が0.4%下がったことで営業利益率は0.5%改善しています。
加工食品事業はコンビニ向けが寄与して増益
次はセグメント別に見ていきます。プリマハムには加工食品、食肉、その他の3つのセグメントがありますが、その他は業績への影響が小さいので割愛します。
加工食品事業
売上+5.9% 営業利益+7.2%
第1四半期は10.1%減益でしたが、値上げ効果で増益に転換しました。業界全体では販売額が前年を下回る厳しい環境の中で、増収増益を確保できたのは明るい材料です。
決算短信によると、ハム・ソーセージ部門は主力商品の「香薫」が好調に推移、鹿児島の新工場が本格稼働した効果もあって売上、販売数量ともに前年を上回っているとのこと、値上げしても数量が増えているのは好印象です。ただし利益のほうは「値上げの浸透以上に原材料のコストが上昇」したことで前年を下回ったとのこと、価格転嫁が追いついていないことが分かります。
また加工食品部門も業務商品の回復や値上げ効果で売上が拡大しましたが、利益はコスト増に価格転嫁が追いつかず前年を下回りました。それでもコンビニ向けのベンダー事業が売上、利益ともに前年を上回ったことが寄与して加工食品事業全体では増収、増益になりました。
食肉事業
売上+3.7% 営業利益1.95億円の赤字→6.2億円の黒字に転換
仕入れコストに対して価格転嫁が浸透したことで、粗利が改善し増益になりました。第1四半期の時点で営業利益は3億円、前年の赤字から黒字に転換し、上期累計で6.2億円、7-9月も順調であることが分かります。
ハム・ソーセージは販売数量も増加、シェア拡大
プリマハムの決算で注目点は、ハム・ソーセージの販売数量が伸びていることです。主力商品の「香薫ウィンナー」は前年から6%も増えていました。
23年4月に3回目の価格改定を実施、家庭用5~20%、業務用5~30%の値上げ幅になりました。これだけ値上げしても、買い控えによる悪影響がなく数量が伸びているのは少し驚きです。
販売数量(前年比)
ハム・ソーセージ合計 105%
・コンシュマー向け 103%
・業務用 109%
・ギフト 88%
加工食品合計 100%
他社はどうなのでしょうか。最大手の日本ハムはハム・ソーセージは金額こそ103.8%と伸びているものの、販売数量は業務用が減少したことが影響して97.9%と減らしています。つまりライバルの日本ハムのシェアは縮小していることになります。
これはプリマハムが業界内でシェアを拡大させていることを意味し、日本ハムからシェアを奪っていることも考えられます。だとしたら今後、ハム・ソーセージ業界の勢力図にも変化がありそうです。
営業キャッシュフロー拡大、フリーキャッシュフローはプラス
キャッシュフロー計算書も確認します。
営業CF +135億円
投資CF -132億円
財務CF -44億円
+--はしっかり稼げていて先行投資もして借入金も返せている、成熟企業として理想的なキャッシュフロー計算書です。
営業CFは仕入れ債務が102億円、売上債権が71億円増加したものの、税前利益が11億円増加したことなどで全体で前年から85億円増加、投資CFは主に有形固定の取得で前年から74億円の支出増、フリーCFは-8億円から3億円のプラスに浮上しています。
今後もシェア拡大できればまだ成長余地あり
プリマハムの決算を分析すると、コスト増の価格転嫁が進み増益に転換し、値上げしても売上も販売数量も伸びていることが分かりました。ライバルの日本ハムは数量を落としているので、プリマハムが今後も販売数量を増やしてシェアを拡大できれば、まだ成長余地はありそうです。
気になる原材料高も、飼料価格はピークから6700円ほど低下していて、少しずつ落ち着く方向に向かっています。原材料価格が下がり、商品価格を維持できれば粗利は改善して、現状で3.2%とやや低めの営業利益率も上がりそうです。
パリュエーションは23年11月1日時点でPER15倍、PBR0.99倍と、他の食料品企業に比べて割安で、配当利回りも2.8%とセクター内では高いほうですが、株価を見るとあまり評価されていない印象です。
それでも今後も順調に業績が回復して、巣篭もり需要で最高益だった21年3月期を超えることができれば、21年につけた3700円更新は十分に期待できるでしょう。
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