【士業の実費弁償金の課税】 ~会計処理及び誤処理についての考察~
地獄の自己紹介(※)から、一転、自分の記録用に真面目なやつ書きます。
(※)書籍出版の目標の関係上、非公開にしました。
雑文、乱文ご容赦願います。
【弁護士等の旅費や宿泊費について、実費精算分を含めて請求する場合】
・弁護士等の旅費や宿泊費について、実費精算分を含めて請求する場合、
実費分は収入金額(売上高)として計上し、源泉徴収の対象となります。
謝金、調査費、日当、旅費などの名目で行われるものも源泉徴収の対象となる報酬・料金に含めます。
国税庁リンク
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/02/12.htm
実費弁償金の課税
【照会要旨】
弁護士の収入の中には実費弁償たる宿泊費又は交通費が含まれていますが、これらの宿泊費や交通費は、立替金として処理していれば、課税の対象外として取り扱ってよいでしょうか。
【回答要旨】
弁護士の業務に関する報酬又は料金は、弁護士がその業務の遂行に関連して依頼者から支払を受ける一切の金銭をいうものと解されています。
したがって、実費弁償たる宿泊費及び交通費であっても、ホテルや交通機関等への支払が実質的に依頼者による直接払と認められるものでない限り、弁護士の報酬又は料金に含まれ課税の対象となります。
なお、依頼者が本来納付すべきものとされている登録免許税や手数料等に充てるものとして受け取った金銭については、それを報酬又は料金と明確に区分経理している場合は、課税の対象となりません(基通10-1-4(注))。
【関係法令通達】
消費税法第2条第1項第8号、消費税法基本通達10-1-4
10-1-4 事業者が課税資産の譲渡等に関連して受け取る金銭等のうち、当該事業者が国又は地方公共団体に対して本来納付すべきものとされている印紙税、手数料等に相当する金額が含まれている場合であっても、当該印紙税、手数料等に相当する金額は、当該課税資産の譲渡等の金額から控除することはできないのであるから留意する。(平11課消2-8により改正)
(注) 課税資産の譲渡等を受ける者が本来納付すべきものとされている登録免許税、自動車重量税、自動車取得税及び手数料等(以下10-1-4において「登録免許税等」という。)について登録免許税等として受け取ったことが明らかな場合は、課税資産の譲渡等の金額に含まれないのであるから留意する。
【会計処理の流れ】
上記を踏まえると、
例えば、代表であるパートナー弁護士A(個人事業主)が、アソシエイト弁護士Bの業務の遂行上必要な費用として旅費を立て替えた(立て替えたのはBとする)実費精算(弁償)分を含め、依頼者である法人Cへ請求するの場合の会計処理の流れについては、以下の処理が適切であると思料されます。
(前提として)
※旅費は、依頼者である法人Cによる直接払いでない(≒領収書の宛名がCの名前でない)
※消費税抜きの金額で源泉税を計算する場合
(お詫び)
※当初の記事では、パートナー弁護士A(本人)の会計処理において、外注扱いとなるアソシエイト弁護士Bが経費を立て替えて、経費精算をしているにもかかわらず、「立替金」という勘定科目を使用しておりました。
・立替金勘定は、AがBの経費を立て替える際に用いる勘定定目であり、本事例の場合では、適切な勘定科目ではございません。
※「未払金」勘定を使用するのが、適切な処理となります。混乱させてしまったこと、謝罪申しあげます。
①アソシエイト弁護士Bが旅費交通費33,000円を立て替えた時の仕訳
・旅費交通費 33,000 / 未払金ー弁護士B 33,000
②受任事件が終了し、パートナー弁護士Aの名前で、報酬1,100,000円及び旅費交通費の実費精算分33,000円を相手先法人Cへ請求する時の仕訳
・売掛金 -C 1,024,774 / 売上高ーC 1,133,000
預け源泉税 -C 108,226
③売掛回収時
・普通預金 -〇〇銀行 1,024,774 / 売掛金ーC 1,024,774
④アソシエイト弁護士Bへの報酬及び経費精算
・外注費ー弁護士B 200,000 / 普通預金 ー〇〇銀行 214,436
預り源泉税(報酬)ー弁護士B 18,564
未払金ー弁護士B 33,000
【問題提起:よくある誤り】
しかし、弁護士等の士業でありがちな処理として、②の請求時に旅費交通費33,000円を立替金などの勘定科目で処理し、消費税や源泉所得税の対象に含めておらず、宙ぶらりんになった33,000円を事業主勘定にしてえいや!とする事例が散見されます。
【誤った処理】
②請求時
・売掛金 -C 1,030,900 / 売上高ーC 1,100,000
預け源泉税 -C 102,100 立替金(不課税) 33,000
⑤決算時
立替金 33,000 / 事業主貸 33,000
【この処理に関する考察】
※筆者の個人的見解であることをお断り申しあげます。
・弁護士をはじめとする士業の調査においては、確認事項であり、最低でも経費のマイナス処理にしないと非常に危険だと感じます。
・経費のマイナスなら、利益と消費税(本則課税なら)には影響せず、源泉税の不足も最後は精算されるので、最悪何とかなるかもしれませんが(決して適切な処理ではありません)、
税理士が認識し、この処理を放置している場合、見解の相違と言えず、売上計上漏れではなく、売上除外と認定されるリスクがあります。
・士業という職業柄、実費だといって断固譲らない場合等も想定されます。その際は、やり取り等を調書に残し、立替金部分は経費のマイナス処理するなど、自身が税理士法違反に問われないよう護る必要があると考えます。
そして、このやむにやまれないケースでの処理は、利益と消費税に影響がない消費税の本則課税適用者に限られ、簡易課税適用者や免税事業者の場合には、通用しないことに留意する必要があります。
以上
【参考文献】