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いのちは燃える

大学のサークルで焚き火をした。
弾き語りやセッションを目的とする音楽のサークルだ。
今回の活動は一応、新歓という名目でらしい。
滝が落ち、川が流れ、吹き抜けのいい山の中だった。
こんなにも良い場所が大学の近くにあることを今まで知らなかったことに悔しくなってしまった。


薪をくべ、火をを起こし、炭で安定させる。胸を張って焚き火と言える、そんなかなり本格的なものだった。
そして20人以上のメンバーがそれぞれ食材を一品以上持ち寄り、それをコンロや七輪(大学の落し物コーナーで拾った)で焼いたり炙ったりした。肉やウインナーなどの定番に加え、バナナやマシュマロなどの変わり種も豊富で楽しかった。


忘れてはいけない、ここは音楽のサークル。お腹いっぱいになったら、みんなで焚き火を囲んでギターに合わせて歌を歌う。山の中なので気兼ね無く大熱唱できた。
赤白く縷縷と火照る小さな炎は、時間を忘れていつまでも眺めていられた。僕達は朝日が昇るまで歌い、語り尽くした。

火も小さくなり始め、そろそろお開きかなといったところ。そんなとき友達の一人が唐突にこんなことを言い始めた。

「この炎ってなんか人生みたいやな…」

「どういうこと?」
僕は眠い目を擦りながら咄嗟に聞き返えす。
対してその友達は何か喋っていたのでおそらく質問のアンサーをくれていたんだと思う。なぜ"おそらく"かと言うと、聞き返したにもかかわらず、睡魔に襲われこの時からほとんど意識がないからである。しかしどういう意味だったのか、そこまで気にならない。むしろ今になって、少しわかったような気がした。


この日の夜の降水確率は90%だった。


おわり

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