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#8 東欧の空気感にみる

年末年始、奇跡の九連休。
わたしはその恩恵を受けた一人である。
財布の紐もゆるみ、
存分に食べ、読書や映画を愉しみ、
ドライブしたり、森へ出かけたり、
気ままな年末年始を過ごした。

2018年の独映画『希望の灯り』を観る。

旧東ドイツの街にある、
スーパーで働く庶民の日常を、
淡々と描いた映画である。

これが東欧の緊張感なのだろうかという、
まるでアキ・カウリスマキの映画のような、
淡いコントラストで、
食い入るように観てしまった。

おそらく本作の主眼は、
人間模様や感情のすれ違いだと思うが、
ドイツの東西分裂と再統一がもたらした、
人々の暮らしや想い、
ベルリンの壁崩壊というものが、
全ての人にとって薔薇色ではないことが、
人々の絶妙な距離感に滲み出ている。

そして資本主義の合理的な生活の中にみる、
ある種のツラさが、
どこか今の日本社会の空気と重なってみえた。

わたしは映画や小説をみるとき、
テーマや見方を強いることなく、
隠喩的に示唆することで、
観る側に解釈の自由さを与えてくれる、
そんな描写や余韻がとても好きだ。

そのような意味でもこの映画は、
最高なかたちでそれを提供してくれた。

2025年はどんな一年になるのだろう。
いつの時代もそうかもしれないが、
先行き不透明な今を生き、
またかとうんざりすることも多い。

でも考えてもみれば、
現代人はコントロールすることに、
慣れすぎていて、
思い通りにいかないストレス耐性に弱い。
自然と向き合っているとわかるが、
コトは思い通りには運ばないのだ。
未来のことなど、祈るほかない。

それでも、目の前に起こることを受け入れ、
対峙しながら日常の細やかな愉しみを、
どうにか笑って過ごすことの大切さを、
本作にみた気がする。

正月の余韻がまだ抜けない、
そんな年初めを過ごしている。

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