
「ワインの庭から」 白梅
ゆっくりとした坂道を上ると、ピンク色の蕾と開花をはじめた白梅が視界に入ってくる。周囲には蔓バラのフェンスが境界をつくり、ジャスミンが垂れ込める暖簾を潜る…。いくつかの階段を上がり南に目をやると、草木を透かして表の景が見え隠れし、木の葉の隙間から木漏れ日が注ぐ「ワインの庭」がある…。
ようこそ「ワインの庭」へ。
梅は百科の魁と言われていますが、今年はやや遅い開花でした。
梅の花には、ほれぼれするような気品がありますね。
うちの梅は、移白。つぼみのうちはピンクで開花すると白に変わる。
万葉の時代には、白梅のみだったらしい。
紅梅は、まだ伝わっていない。

南高梅は自家不結実性なので、受粉樹がなければ結実しない。
幸いワインの庭の周辺には、種類の違う梅がありミツバチの仲立ちで互いに受粉樹になっている。
上手く受粉すれば、梅雨明けを待って果実を収穫し、梅酒や梅ジャムにしている。僕の愉しみの一つだ。
つい最近このnoteで、素敵な白梅の絵を見た。
ほれぼれするような気品をまとった男性と共に描かれていた。
僕もそんな絵が描けたらいいな、と思いつつも、白梅から漂う気品を描く技量は僕にはまだ無い(笑)。
万葉集で詠まれた草木の中で、萩に次いで多いのが、この白梅だという。
奈良時代の人々に広く愛されていた証し。
天皇から民衆まで様々な階層の万葉人が詠んだ歌が収められている。
万葉歌の半数は誰が詠んだのか分からないというのだから、万葉の時代の文化水準の高さを感ぜずにはいられない。

白梅を題材に詠んだ歌の中で、僕が一番好きなのはこの一首。
久方の 月夜を清み 梅の花 心開けて 我が思へる君
-万葉集 巻-1661 紀女郎-
月は情感を表す象徴だと思う。
清らかな月光は、人の心を開かせ、白梅をも開花させる。
月の光を受けて自ら輝く白い梅の花に、自身の気持ちを込める…。
月は白梅をより印象深いものにし、澄みきった気高さを演出している。
これは現代的な抒情詩のようだ。
「ワインの庭」で、月夜を清み 白梅を眺めてみませんか?
あなたは白梅にどのような思いを込めますか?
月の輝く夜にお待ちしています…。