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母が作るハンバーグのようになりたい。

 私は母が作るハンバーグが好きだ。子どもの頃から食卓によく登場する、我が家には欠かせない料理である。母の作るハンバーグは美味しいだけではない。楽しいのである。

 我が家のイベントには必ずハンバーグが登場する。誕生日にハンバーグ。ハンバーグは「誕生日おめでとう。良い一年になるといいね。」とでも言ってくれているかのように、体の中から私を幸せにしてくれる。クリスマスもハンバーグ。サンタクロースを待ちわびながら食べるハンバーグは、一口食べるごとに、私の楽しみを何倍にも大きくしてくれた。母の作るハンバーグはおいしいと同時に楽しいを味わえるものであった。

 だか、それだけではなかった。

 私が中学3年のときである。私は高校受験の合格発表を、母とドキドキしながら見に行った。結果は不合格だった。一緒の塾でともに切磋琢磨した友人は合格し、私の目の前で家族と抱き合って喜んでいた。とても悔しかった。泣きたかった。でも、隣にいる母の横顔を見て、ぐっと泣くのをこらえた。

 その日の晩、食卓にはハンバーグ。私は、「なんでこんな日にハンバーグなのよ。」と母に文句を言いながら一口食べた。おいしかった。気がつけば、私は涙が止まらなくなっていた。目標にしていた高校に入るため、毎日毎日勉強した日々が走馬灯のように思い出された。

 そんな私に、母は、「よく頑張ったね。とっても悔しいね。」とひとこと言って、一緒に泣いてくれた。母の横で泣きながら食べたハンバーグは、悔しくて辛い気持ちを吐き出させてくれた。私はとても楽になれた。私は、母のハンバーグに救われたのである。母は私の真っ暗な心に、灯りを灯してくれた。

 私は母のハンバーグのおかげでやる気と希望を取り戻し、第二希望の高校に無事合格した。そして、その高校でできた大切な仲間とは、今でも交友が続いている。

 母の作るハンバーグは、私の生きてきた人生の中で、とても大切な存在である。楽しいときをより楽しく盛り上げてくれた。そして、辛いときはそっと寄り添い、なぐさめてくれた。

 大人になった今、私は思う。「母の作るハンバーグのようになりたい。」と。

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