推し活の醍醐味

子供たちは高校生の時分から推し活をしている。

自分の好きなアーティストやアイドルグループのライブに出かけている。また夏になればどこそこでやってる『フェス』に泊まりで行ったりもする。

友人と行くこともあれば、一人で出掛けたりもする。

開演一時間前に行けば十分だと思うのだけど、物販でお目当てのものが買えなくなると困るからと夕方からのコンサートに朝早くから出かけて行く。

『推し』はその時々で移り変わっていくようだけど、推しのライブや推しが出るフェスに嬉々として出かける子供達を『若いなぁ』なんて思いながら見送っていた。

その見送る側にいた私に今は推しピアニストがいる。

大人になってピアノを再開してから、自分が弾くのはもちろん(趣味レベルの域を超えることはないが💦)、様々なピアニストの演奏をYouTubeで聴くようになった。そして彼らの演奏にどんどん惹かれていった。

どのピアノ曲を聴いても以前は誰が弾いても同じだと思えたが、やっと今各ピアニストの個性なり演奏が同じ曲でも違うことがわかってきた。以前よりたくさん聴くようになったからだろう。

主にYouTubeが私の音源なのだけど、彼らを目にするのはその小さな画面の中だけ。でもそこにいる彼らは現実味がない。今ここに存在しているだろうことは頭ではわかるのだけど、実際に本当に存在しているものとして認識できないのだ。

ピアノに興味を再び持つまでコンサートホールでやる演奏会に行ったのは数えるほど。30年ぐらい前が最後だったが、ピアノにハマるにつれ生の演奏を聴きたいと思うようになり、チケットを取るまでになった。

お気に入りのピアニスト、YouTubeでしか聴いたことが、見たことがなかったピアニストが出演するコンサート。

初めて舞台に出てきた彼の姿は鮮烈で、彼が実際に存在していることが強烈に脳内にインプットされた‼️

思わず心の中で

『来た‼️王子ーーー✨✨✨』
『きゃーーー✨✨✨』

と(年甲斐もなく)叫んでいた。

そうか、こうやって好きなピアニストに会いに行くのが推し活なんだな。

クラシックのコンサートではペンライトも団扇もなく静かなものだが(当たり前！)、聞きにくる皆さんアツイ。

生音が聴けるのはとても幸せで、それを弾いている推しを見るのももっと幸せだ。

同じ空間を共有してその場を作り上げていく、なんて素敵なことなんだろう。
実際に自分の目でその存在を確かめられる、これが実際にホールに足を運ぶことの意義だと思う。

昨日は亀井くんのピアノリサイタルでサントリーホールへ行ってきた。

後ろの方の席だったけど、チケット争奪戦の末にようやく手にした席。サントリーホールは2000名ほど入るのだけど、舞台をぐるりと取り囲むように座席が配置されているので後ろの方の席でも舞台との距離をさほど感じない。

あっという間に前半が終わり幕間。そしてあっという間に終わった後半。

まさに夢のような時間だった。

そして昨日はもう一つの、ホールに来るまでは予想していなかった最大の楽しみがあった。

リサイタルを行うピアニストが出しているCDを会場で売るのは常なのだが、昨日はCD購入特典に『サイン会参加』とあったのだ‼️

サイン会ということは本人が目の前である。いつもYouTubeで眺めていた彼が、舞台の遠くから見ていた彼が目の前に、のチャンス。
サイン会参加は数に限りがあると言ってる。そりゃそうだろう。

急いでCD購入の列に並び、特典ゲットした。

そうして彼のピアノを堪能した後は急いでサイン会へ。彼を待つ時間は長かったが、その間のなんとワクワクドキドキ💓したことか。

そして『お待たせしましたー』と出てきた彼を見た時はきゃーとまたまた心の中で叫ぶ私。

短い時間の中で何を言おうか考えていたけれど、彼のピアノを賞賛する言葉しか思い浮かばず。

朝家を出る前にしただけの化粧はハゲハゲで、こんなおばさんに応援されていてもあまり嬉しくないだろうなと思いつつ、私は亀井くんを目の前にして最高に嬉しく乙女のように舞い上がってしまった。

舞台に出てくる推しを見るだけでも十分嬉しいのに、その推しが目の前にいる。

手を伸ばせば届く距離に推しを見て、サインを貰って、それはそれは幸せな時間。

嬉しく楽しい、現実だけど非現実的な感覚。非現実が一瞬だけ現実になる瞬間。

これが推し活の醍醐味なんだと思った。

概してアーティストは孤独なものだと思う。世の中の大多数は趣味で音楽を楽しんでいるが、その道でやっていくには想像できないようなプレッシャーがあるだろう。

ファンがいることが亀井くんにとってプラスになるのかマイナスになるのかはわからないけど、私はこれからもずっと彼のピアノを聴いていきたいと思う。

私の推し活は始まったばかりだ。