まち歩き力を鍛える
小さい頃、母親からピアノを教えられるとき、「一週間もひかなければすぐ感覚なくなっちゃうから」と言われたことは、フィールドワーク的な観察眼にも言えることのようだ。
つまり、定期的に一人で歩いて見てみないとなくなっていく筋肉的な、神経的なやつ。
最近、ちょくちょく仕事でいろいろな地域や組織を観察しに行かないといけないことが増えてるので、生意気にもちょっとだけつかめてきた観察ポイントを整理する。
まず調べる
行く前に調べる。知ってる人に聞く。
人口、地形、歴史、産業、食性、宗教やコミュニティに係るポイント、図書館や博物館の場所など。
輪郭を捉えてから臨む。これによって不要な思い込みをうむこともあるけど、象を大木と思い込むリスクは減る。短い時間で見なきゃいけないときには特に重要度が高い。
あと意外と大事なのが、思い出を知ること。誰かの思い出は、観察時の想像力を活性化させてくれる。話を聞くための時間を取ったりブログを調べたり、歴史上の人物のエピソードをあさることは、とても大事な前準備だと思う。
とにかく歩く
1日は少なくとも時間を取っておく。
朝の姿から夜の姿まで観察しないとわからないことがある。できれば平日と休日も見ておきたい。
最初にすべきは、歩いたり登ったり触ったりして自然や地形、痕跡を感じること。そこからとにかく町を練り歩く。スクールゾーンや商店街、住宅街といった暮らしのエリアと、観光のためのエリアは分けて歩くのが良い。
ご飯はなるべく地元の人がよく利用するもの、とりわけ誰かの思い出に係るものを選ぶようにしている。
郷土資料を読む
地域の持つ原風景に触ったあとにすることとして、図書館と資料館は必須にしている。ここでいろいろ合点がいくことが多い。まちの区画分けの特徴や、生き残り方の特徴も見えてくる。
意識の片隅においておきたいことは、ここの資料の多くは「治める視点」で描かれているということ。その次が「旅する視点」、最も解読が難しいのが「暮らす視点」。地元にとっては当たり前、旅人にとっては隠された空間ゆえのわかりにくさがある。僕程度の未熟者だと、かなり時間を頂かないと見つけられない。
再び歩く
資料を読み終わったあと、一度整理のために発見を書き出してみる。そして、過去の他地域での発見と比較して、漏れがないか確認する。
そこから、再び歩く。地図で歩いてないエリアを確認してから、できるだけ学校の帰り道のような虚無感で歩く。するとふとしたとこで、草取りに苦労するお年寄りや、公園で遊ぶ家族の家族事情が垣間見えたりする。
思い巡らす
帰ってから、自分の取ったテキストメモやボイスメモを振り返り、思い巡らす。これまでのどの特徴に合致するか、合致しないか。特異な点はなんだったか、ここで暮らすとしたらどんなことに出会うことになるか、この地域を愛せるようになるには…などなど。
仕事のおかげで、このように定期的なフィールドワークの訓練ができることに感謝している。と同時に、出会う地域や組織を愛せなければ良い仕事には繋がらない。
あとは、なんだかんだ基礎作り。
週一で筋トレをしていたおかげで、昨日の実地視察は一日中歩けた。好きなフィールドワークをするために嫌いな体作りを辞めるわけにはいかないらしい。