いつかパートナーが ①
ノンセクを自覚してからの約10年間。表では、学校に行って就職して、社会のレールに載ることができたけれど、裏では悩みに押し潰されそうだった。
好きな人ができたり、付き合ったこともあったけれど、いつも長続きしない。付き合うだけでどんどん疲弊していく。相手のことが好きであれば好きであるほど、求められる
度に相手のことが嫌いになっていく。
友情結婚を考えて活動をしたこともあるけれど、上手くいかなかった。
一人で生きていくことを覚悟したときだった。今のパートナーであるSに出会った。
きっかけは友人の紹介で「彼氏の友達を紹介したい」と言われて、断りきれずに行った食事会だった。
好みのタイプではなかったし、話もあまり盛り上がらなかった。だが、Sは私のlineを聞き出して、二人での食事に誘ってきた。
この頃の私は、「普通の恋愛」をなかば諦めていたので、Sに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
どうやってSに嫌われようかと考え、連絡をわざと返さなかったり、約束をかなり先に伸ばしたりした。
そうして迎えてしまった約束の日。私は一大決心をして、Sに告白した。一回会っただけで、何を言ってるんだと思われるかもしれない。そんなことはどうでもよかった。
もし、このまま逢瀬を重ねることになったとして、Sが「普通の恋愛がしたい」つもりなら、私はSに無駄な時間を浪費させてしまうことになる。何回も会った後で上手くいかなかったら、自分自身をまた傷つけてしまうことにもなりかねない。嫌われるなら、何も始まる前に嫌われたい。
私は言った。「私、夜の生活に興味がないし、たぶんできないと思う」ノンセクという言葉を使わなかったが、精一杯の告白だった。
ところが、Sは全く驚かなかった。私が、「驚かせてごめん」というと、Sは「別に驚かないよ。人それぞれだし」という。私は拍子抜けしてしまった。
それよりも、Sは私が小説を書いているという話に興味を持ってくれて、話は盛り上がった。
気がつくと会話を楽しんでいる私がいた。
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