長沼航(ビリー)

俳優。1998年生まれ。 散策者とヌトミックの2つの劇団に所属しつつ、俳優の立場から演劇やダンスなど舞台芸術の創作・上演に幅広く関わっている。また、演劇/演技の創作過程についての論考やエッセイの執筆も重ねて行っている。

長沼航(ビリー)

俳優。1998年生まれ。 散策者とヌトミックの2つの劇団に所属しつつ、俳優の立場から演劇やダンスなど舞台芸術の創作・上演に幅広く関わっている。また、演劇/演技の創作過程についての論考やエッセイの執筆も重ねて行っている。

最近の記事

薬の匂いの手芸店(インタビュー+エッセイシリーズ「フライング・ディスク🥏」Vol.1 石原朋香〈エッセイ〉)

 K野さん、と呼んでいる店があった。駅から東西方向に伸びている本町通りの、真ん中あたり。ローソンの隣。いつも「水曜どうでしょう」のステッカーが貼ってある車が、店舗の右側に停まっていた。店に入ると、ふんわりと薬の匂いがして、オルゴールの音色でJ-POPを演奏する有線が流れている。正面にレジと処方箋のカウンターがあって、「動悸、してませんか?」「お腹の調子を整える」などと、大きくコピーが記された健康食品のポスターが貼ってある。いかにも小さな町の薬局の風景だが、この店の向かって右半

    • パーソナルな身体を舞台上に存在させたい——「作品を作る俳優」としてのあり方(インタビュー+エッセイシリーズ「フライング・ディスク🥏」Vol.1 石原朋香〈インタビュー〉)

      —— 今日はよろしくお願いします。 石原 よろしくお願いします。 —— 最初に石原さんの肩書きを教えてもらってもいいですか? 石原 最近は少し変わった言い方ですが「作品をつくる俳優」と言っています。自分の活動を一般的な言葉で説明・分類すると、俳優、デザイナー、それから演出・振付・構成といったパフォーマンスを組み立てる活動をやっています。くわえて、日々のかなり大きな割合を占めている趣味として手芸があります。SNSがほぼ手芸アカウントになっているので、私のことを「手芸の人」

      • 日記 #7

        2022/09/25 稽古の予定だったんだけど、直前に無くなったので、humunusを観に行く。急だったから、鑑賞のコンディションはそこまで良くなく、うつらうつらしてしまったけど、音/声のアプローチはやはり面白かった。韻文的に書かれたテキストが立ち上げる風景。アコースティックじゃない可能性とかあるのかな。 演劇における演者の構えと、映像作品における演者の構えは異なる説得性を持つのかなと思った。気になったのは速度だった。映像には客観的な時間が流れている。そこでゆっくりと動く

        • 日記 #6

          2022/09/19 流石に怒涛すぎて何日か書きそびれた。 ヤマケンがいろいろ考えている人なんだなと思って、より好きになった。ちゃらんぽらんなようでいて、思考をしっかり走らせている。 石倉くんと朝倉さんとすずけんさんと夜中まで話した。 2022/09/20 朝集合してハイエースで京都まで出て、そこから新幹線で帰宅。京都駅で赤福を12個買った。全部自分で食べる。 2022/09/21 疲れからか、さすがに元気がない。稽古もあんまり面白いこと思いつかず、ちょっとしょ

        マガジン

        • 日記
          3本

        記事

          日記 #5

          2022/09/14 朝日新聞の一面にゴダール死去のニュース。 2022/09/15 朝起きて荷造り。駅に着いてから、出発時刻を1時間勘違いしていたことに気づく。特急券がただの紙に変わった。人の金で自由席移動か……。 しかし、人の世はうまくできているもので、違う車両であっても数百円払えば振り替えてくれるのだった。京都駅は駅員のイントネーションも東京や神奈川とは違う。 2022/09/16 昨日日記書き忘れたかなーと思ったが、しっかり書いていた。昨日から1日しか経っ

          日記 #4

          2022/09/10 朝早めに起きて稽古①。荷物が多い。 散策者で喋るとき、いつもテンションを下がってしまうので、もっと快活に話せるようにコンディションを整えたい。興奮するようなことを、しっかりやるべきなのかもしれない。 移動前にカレーを食べる。サリサリカリー。おいしい。持ってきたキーマカレーはまた後日食べる。 稽古②。『ぼんやりブルース』通し。ちょっと前半のテンションの持っていき方に難があった。及第点は出せるようになったと思うから、残りの期間——もう次の稽古は豊岡での

          日記 #3

          2022/09/06 昨日の夜から、今日の朝にかけて精神が荒廃して、終わったかと思ったけど、朝食後に二度寝したらなんとかなった。カウンセラーに「心というのは、上がったら絶対下がるんです、下がりたくなかったら上げない、上げたいなら落ち込むことをある程度見越しておきなさい」と言われていたが、本当にその通りだ。見込み、大事。 稽古。ソロシーンの抜き稽古。昨日思いついたアイデアを試したら、割とうまくいった。調子いい日はなんで調子がいいんだろう?こういうところ、かなり見えにくいと思

          日記 #2

          2022/09/01 朝起きて、ごはん食べ、洗濯。書き物をいくつかして、挽肉を買いに行く。買えた。昼ごはん作ってたら出かける時間。 帰ってきて、残りの洗濯物を干して、寝る。 起きたら雨。正確には雨が降るすこし前に起きて、雨が降っていないことを確認し、もう一度寝たらその隙に雨が降り始めた。いつもはベランダまで入ってこない雨が、大粒かつ強風のせいで入ってきて、ハンガーが飛ばされていた。もう!いやね!雨雨雨。ますます嫌い。利害関係のないときの音は好きだけど、降られるのはほんと

          日記 #1

          ふと思いついて、何日かの日記をまとめて投稿してみようかと思う。備忘したい欲がまた高まってきた。続かなかったらそれでも、の軽い気持ちで!あんまり長くならないようにしたいよー。 2022/08/27 ヌトミック、稽古をする。世田谷公園では祭り。たくさんの核家族を一気に見て、ギョッとする。少子化が嘘みたい。 グレイモヤβ。フランツからケビンスまでずっと面白かった。お笑い、というか、突飛なアイデアのショーケースみたいだ。メタフィクション漫才(車海老のダンス)。「「イカは正しい」で

          親しさの快楽の回路

          これまでいろんな人と関わってきたはずだけど、俺が人と過ごしてて感じる快楽ってほぼ一通りに収斂してたんじゃないかって気がする、とふと思ってメモする。 たぶん俺は言葉の人間で、言葉で人と通じたい。けど、そこでいう通じ合いっていうのは、別に論理的で生産的な議論から生まれる相互理解とかじゃない。お前が喋ってる言葉が俺の口から出てもぜんぜんおかしくないな、逆もまたしかりだなと思えるときに、俺は生きてるって感じる。二人の言葉がつながり、いままさにこの場で作られているならば、会話の快はこ

          親しさの快楽の回路

          分からないままで生きる/見る(『きみの鳥はうたえる』を観た)

           つい先日のこと。演劇の本番が終わって、なんだか虚脱状態のまま家に帰った。そのままは眠れない気分だったからなにか見ようと思って、リビングにあるプロジェクターの電源をつけ、Amazonプライム・ビデオで目ぼしい映画を探すことにした。上下左右に敷き詰められたサムネイルを行き来していると、無料配信がそろそろ終了する映画のところに『きみの鳥はうたえる』を見つけた。数年前に早稲田松竹で観た。なぜ観たのかはもうはっきりとは覚えていない。映画館から出たときに、すごく良い気分だったことだけが

          分からないままで生きる/見る(『きみの鳥はうたえる』を観た)