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女ふたりが幸せを掴むために

GYAO!で絶賛公開中の韓国映画『お嬢さん』を観ました。パク・チャヌク監督作品はこれが初めて。劇場で公開されてから年月が経っているのでフェミ界隈からしたら「遅いよ!」って怒られそうだけど、今回観ることができて本当によかった。どれくらいの人が今、初めて観ているのかな。最近観た人、ぜひ仲良くなりましょう。

予告には一切触れずに本編に入りましたが正解でしたね。気になる人だけどうぞ。。。

あらすじとかすべて飛ばしてガンガンネタバレに入ります。


観終えた感想は、「気分爽快!ありがとう自由をくれて!女ふたりで幸せを掴みにいきます!」…と、薬でもやったかな…と思うくらい気持ちがハイになりました。そして映画の人物に感情移入。自分が主語になってしまうくらいの居心地の良さみたいなのがありました。LGBTQ映画でラストがこんなにも潔いものって意外とないのではないでしょうか。

しばらく映画から離れていたので古の記憶をたどると、LGBTQ映画は3パターンに分類されると思ってます。①同性愛が罪とされていた時代・国が舞台(つらい)②一度は結ばれるけど”禁断の恋”が物語の感動要素にされて離れ離れにされる(つらい)③ラブシーンが多い(なぜ?見世物じゃないよ?)

古の人間です。でも、こういう傾向って今でもあるんじゃないでしょうか。オススメがあれば教えてください。すぐにバージョンアップします。

どうして彼らは幸せになれないんだ。いわゆる男女の恋愛物はハッピーエンドが多いのに!(男女でも、女は病気で殺されたり”演出”に使われることが圧倒的に多いけど…)。これは前から言い続けてきたことですが、二人が幸せになる姿が見たい。そこに壁や試練はもういいのです…。

ここで、いつもは「時代背景を考えれば当時は同性愛はご法度だったし、苦労や辛いことの方が多かったに違いない。作品を作るうえで、その背景は変えられないしある意味、描くことに意味はある」と正当化させてきました。

…と、思っていた私が今回驚いたのが、映画の中で、同性愛を疑われる、同性愛を否定する内容が出てこないんですね。1939年日本統治下の朝鮮で。「秀子お嬢さま、まさか珠子に心を奪われたわけでは?」とか藤原伯爵あたりが言いそうな気もしますが、最後の最後まで二人の関係を問うようなことはありません。(そもそも計画的に、お嬢さんがスッキに心を許してもらわないと藤原伯爵としては困るわけですし、お金にしか興味のない男なのでそういうことに興味関心がないわけなのですが…。春画にも女性同士の情事が描かれていて、変態上月の存在も上記を否定することはなく)

自分のことが(映画の中でも)否定されない。セリフで傷つくことがない。これって、実はとても重要なことではないでしょうか。ある時代を背景としたものでも「こういう映画にできるんだ」という発見と感動がありました。二人の性的指向が問われないこともいい。愛が二人を結び、これからも共に生きようとさせた。この関係がとても好きです。

まあ、最初観たときは3部まであるとは知らず、「え、こんなに心をずたずたにされて終わることってある??」と1部終了後のショックは大きかったし、ラブシーンも多いし(GYAO!はR15指定でモザイクが多数)、エロ本読まされてるシーンはつらいし、結局、女二人の関係は”見世物”なの?と、先に記述した③パターンか?と頭を抱えた時もありましたが…。気づけば2回目の再生に手をかけていましたね。1度観ればもう怖くない。そして終始ニコニコして観られる。超超かわいいスッキとお嬢さん。その二人のラブシーンはとても愛らしいのです。

好きなシーンは数知れず。本をびりびりに破くところからの、草原を走るシーン。やっぱりみんなこのシーン好きですよねーきっと。何回観ても泣けます。段差を登れないお嬢さんに荷物で階段を作ってあげる演出も素晴らしい…。お嬢さんとスッキの感情の変化が様々なセリフに散りばめられていて、二人の愛は精神的に深い部分からスタートしてるのがよくわかります。

総じて、『お嬢さん』はエロが全面に出るような宣伝はあまりにももったいなく、一人の人間の心の移り変わりを豊かに描き、女性が自由を獲得したフェミ映画だと思っています。

好きな登場人物が死なない、未来があるってなんて素敵なことなんでしょう。『テルマ&ルイーズ』(1991年、アメリカ)も大好きな映画ですが、ラストがつらい。男の手でずたずたにされたり残酷なシーンがないのは救いだけど…。女たちがタッグを組んで悪いこと(自由を掴みにいくこと)をする映画は最高ですね。


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