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『アイヌモシリ』から変わった世界

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住んでいる地域・北海道でやっと公開となったので観てきました。

※ネタバレ含みます。

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舞台は近隣のアイヌコタンだったので、何度も訪れたことがあったのですが、まず見終わった後の率直な感想は「リアルだなぁ」、そして誰かに「この映画面白かった?」と聞かれたら、「面白かった…よ?」みたいな反応しかできなさそう(個人的面白ポイントを伝えるのに時間がかかりそうという意味で)でした。皆さんはどうでしたか?

出てくる人も場所もやっていることも、ほとんど現実と同じことで、だからこそイオマンテを自分たちの”神聖な”儀式としてやろう、ということに意味が出てくる(と思っている)わけですが・・・。少年・カントが見つめるアイヌとこの地域に向けたまなざしは、大人でもない、子どもと言っても将来の選択を迫られる年齢の子の等身大だと感じました。

映画の中ではイオマンテをやることの賛成反対、アイヌから離れたい葛藤からどうなったかなど、あらゆることにおいて明確な決断は出ていません。そのあたりもリアルでした。母親はきっと(観光)アイヌとしてやっていくことの辛さとか、アイヌの歴史を振り返ったら強くカントのことを引き留められないのかもしれません。その地(血)から離れたいと揺れ動く子どもに、アイヌの気高さと誇りをうまい距離感で伝えてくれたのが、デボさんだったと思います。

明確な決断は出ていないとはいえ、最後のカントの目を見たら、自分のルーツや文化についてもっと知りたいというような、入口に立ったようにも(実は結論が出ているというか)。それはカントだけではなく、観ている私たちもなんじゃないかと思いました。今後アイヌについて思いを巡らせる/巡らせねばならない1時間24分の序章。物語の本編は、描かれていないここからなのかもしれません。

個人的にカントの目が好きでした。とっても綺麗な目をしていました。あと、デボさんに教わった、この世とあの世がつながっている洞穴?に行き、雪を投げつけていたカントが振り返るシーン。亡くなった父の姿が写らなくてもわかるくらい、この少年の今一番会いたかった人がいる、その何とも言えない緩んだ表情に思わず泣けてしまいました・・・。

とにかく、この映画を見る前と後では観光産業やアイヌ文化の今後など、見え方が変わると思います。阿寒湖の温泉街でもそうなんだから、去年できたばかりのウポポイ(民族共生象徴空間)については、より深刻さを感じます(またアイヌの方の悩みを増やしているのではないかと)。何でも一筋縄ではいきません。

全然関係ないですが、演奏していたOKIさん。有名になる前はよく私の祖父母の家に来ていたそうです、知らなかった。今度は生演奏聴いてみたいな。


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