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海上輸送に関するざっくりした説明

モーリシャスでの座礁事故に衝撃を受けた。これをきっかけに、今まで見聞きした海事に関わる知識をまとめたくなったので本稿を書く。

※この記事では、個人的に勉強したことを「なんとなく、こんな感じかな」という理解でまとめています。専門家ではありません。

海事とは

本稿で扱うテーマは「海事」である。タイトルでは「海上輸送」と書いたが、これは海事の一部であると考えて良いのではないかと思う。2020年9月時点で、「海事」はWikipediaで以下のように説明されている。

海事(かいじ、英:maritime affairs)とは、海に関する事柄または海上で発生する事柄。《略》狭義では海運・船舶等に関する事柄である。

本稿では後半の「海運・船舶等に関する事柄」を指して海事と呼ぶ。個人的にはこの定義に「港湾に関する事柄」も加えて良い気がするが、詳しいことはよくわからないのでwikipediaは編集しないことにする。

海事に関する情報源としては、日本海事新聞などがある。また必要であれば、J-Stageでこれに関する論文を読むこともできるし、Twitterで検索すれば、海事に関するアカウントも存在する。

安全な航行のための仕組み

船が事故を起こすと大変である。何を当たり前なことを、と思うかもしれないが、本当に大変なことだと思う。モーリシャス座礁のニュースを追えば想像しやすいだろうが、自然環境に与える影響は計り知れない。また船の事故は、多くの人命を奪うこともある。タイタニック号事件では1,500名程度が命を落とした。

こういった事故が起きないよう、いくつかの条約が定められている。たとえば、タイタニック号事件をきっかけにSOLAS条約が制定された。この条約ではISMコードというものが採択されているが、とてつもなくざっくり言うと「国際航海に従事する船は、安全のために、こういった条件を満たしてね」というようなことが定められている。

SOLAS条約の他にも、船が満たすべき条件を示す条約はいくつかある。いずれにせよ、対象となっている船は、これらの条件を満たしていることを旗国に検査・審査してもらい、それぞれの証書を取得する必要がある。証書の無い船はサブスタンダード船と呼ばれ、各国の機関(日本で言えば国土交通省)がこれを撲滅しようとしている。

ちなみに旗国とは船の国籍にあたる国のことで、船が持つ国籍を船籍と呼ぶ。パナマ船籍とは、国籍がパナマである船ということになり、パナマまたは代行機関が上記の証書を発行する権限を持つ。

海事に関わる人々

海事に関連する人や組織(のうち私が認識できているもの)を下図にまとめた。

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一番左上が船を作る会社である。船は完成後船主に引き渡され、管理会社によって運用される。船が海にでたら、船のことは船長が取り仕切る。船が港に停まるとき、たまにPSCというチェックを受けることがあるのだが、これはPort State Controlの略で、その船の安全性などをチェックしている(場合によっては勾留され、何某かの処置を行わない限りは海に出られないこともある。日本のPSCは国土交通省が担当している)。

船には基本的に保険がかけられている。保険に入る時は、いくつかの証書があると有利である(必須なのか、保険料が抑えられるのかは知らない。ケースバイケースかもしれない)。証書には、例えばDOC、SMC、ISSCなどがあり、取得に必要な検査・審査がそれぞれ定められている。旗国又は旗国から代行権限を与えられた船級協会が、船からの申し込みを受けて検査・審査を行い、合格であれば証書を発行する。

船級協会には、オフィシャルに認められた組織とそうでない組織がある。オフィシャルなものには、日本海事協会やロイド、ビューロベリタスなどが存在している。オフィシャルに認められた組織で証書を発行した方が、そうでない場合よりも証書の信頼性が高い。

検査と審査

検査と審査は区別されており、検査とはハード(船本体)のチェック、審査とは管理システムのチェックである(例えば、船長に緊急時の対応を尋ねてみて、正しい回答が返ってくるかどうかをチェックするイメージだと思う)。また審査には、管理会社の審査と船の審査がある。

検査や審査は、船の種類や船籍によってチェックされる項目が異なる。また、何かしらの事故をきっかけに条約が増えたりして、必要な検査・審査の種類が増えることもあるので、船級協会などはその都度対応していかねばならない。

海上輸送が支える日本の暮らし(の、ほんの一部)

海上輸送は、日本の生活を支える根幹の一つだと思う。例えば、国産の豚肉や日本で養殖した魚について…豚の飼料は主にコーンから作られているが、これは殆ど輸入品であるし、魚の餌に多く使われている魚粉は、これまた殆ど輸入品である(魚粉は確かペルーからの輸入が多い)。そして、コーンも魚粉も、多くは船で輸入されていたと思う。極端な言い方をすれば、何かしら海上輸送しないと国産の肉や魚も食べにくくなるということだと思う。

私は、海上輸送に関わる方々のことを心から尊敬している。就職活動の時に気付いていたら、今とは別の仕事に就いていたかもしれないとさえ思う。これからも、この分野については勉強していきたいと思っている。

最近髪をばっさり切りました。