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国際結婚 分かち合えない3つのこと

わたしにはアメリカ人の夫がいる。国際結婚なのだが、お互いに日常生活で違いも違和感も感じていない。育った国、家庭環境、言語、宗教、食生活、生活習慣、教育など出会うまでの人生背景はまったく異なるわけだが、物事の捉え方、考え、感性、価値観など多くが似ていて心地がいい。Good chemistryなのだ。

そういえば、イチローが弓子夫人と結婚した理由で「相性がいいっていうのがいちばん。話すリズムとか価値観とか同じ空間にいるのが心地いい。」と言っていたことを思い出す。

そんな大親友であり、恋人でもあり、旅友でもあり、優れたメンターである夫とも、夫婦ともに認める、どうしても分かち合えないことがある。

その1: 室内照明の度合い

夫は暗い照明を好む。それが私にとっては非常に暗いのだ。間接照明は雰囲気をつくるし、ゆったりと落ち着かせてくれる。夜はそのほうが睡眠の助けになるのも確かだ。しかし、ただでさえ木に囲まれた家は暗くなりがちなのに、照明を落とすと日中でも更に暗さが増してしまう。

一般的に日本の家屋は、天井の真ん中に蛍光灯の照明がひとつで明るい。対して、アメリカの家で天井の照明一点はあまり見かけない。わたしの限られた経験の範囲だが、間接照明が一般的で、まるでロウソクを灯しているかのような暗さが多い。

夫の家族友人宅でも、キッチンについてはその家々で明るさはさまざまだが、リビングは暗めの家が多い。なぜだろうか。

我が家のキッチンの照明

上の写真が我が家のキッチン、ちょうどシンクの真上あたりの照明だ。日の出前の朝、日の入りに近い時刻以降の夜は常にこんな暗さである。

わたしの指定席

こちらは、わたしがいつも座るダイニングの場所。日が短くなってきた最近は、こんな暗さで朝食も夕食も食べている。

食事の彩り、具材の形、器とのコラボレーションを視覚でも楽しむ。ゆっくり噛んで味わうというながれに、あぁ、ありがたいなと思う。これが食卓における わたし流の豊かさの象徴なのだが、この暗さだと豊かさどころか、電気代を支払わず止められてしまったような気分になり人生の堕落すら覚える。苦行のようなものだ。

照明は明るさを調節できるので、夫の不在時はMAXに明るくし食事をする。以前「お互いの好みの中間ぐらいで妥協できるか」と夫に訊いてみた。そしたら、即座に眉間と鼻までしかめて「NO」のひとこと。交渉は敢えなく、儚く散ってしまった。

夫の眼の色は青色なので「明るいと思うのは眼の色のせいかな?」と訊いたが、今度は「わからないよ」と即答。そりゃそうだ。目ん玉の色チェンジ!したことがあるわけもなく、比較できないよね。

その2: 室内温度の程度

分かち合えないと思うこと二つ目は、室内温度と体感温度の大差だ。夫は暑がり。対して、わたしは結構な寒がりである。そんな日本人妻を持つアメリカ人夫は、何の遠慮もなく夏の夜間の温度を21℃に設定して寝たがる。

「いくらなんでも21℃は寒いよ。もうちょっと上げてもらえないかな。眠ると人間の体温は下がるしね。」

スーパー寒すぎて夫に訴えるも「それ以上になると暑すぎて眠れない。起きてしまうという。」と言われる。なら脱げばいいじゃんとも言えない。脱ぐといったって限界がある。シャツを脱いだって、パンツも脱いだって暑いものは暑いから。

そういえば、外国人の体感温度のズレについて思い出す例が3つある。

一例目、シドニーにいた頃の日本人ルームメイトがおもしろいことを言った。彼女にはオーストラリア人の長く付き合っている彼氏がいて、わたしは結婚まで行くんだろうなと思っていたが、

彼女「わたし、結婚するなら日本人がいいんだよね。」
わたし「え!なんで?」
彼女「だって暑さの感じ方が違うからね〜同じ部屋でずっと眠れないんだよね。」

当時は、そんな理由で最終的には日本人を選ぶかもしれないことに非常に驚いた。選択は人ぞれぞれだが、わたしにはとても意外だったのだ。

二例目、コロラド州に留学していた頃、アルバイト先に37.2℃くらいの微熱があると伝えたら、それは平熱ですと言われた。アメリカ人の平熱は37℃程度といわれている。夫の平熱も37℃くらいだ。

三例目、日本でホテルに勤務していたときの話。部屋の温度が下がらず暑いと何度も電話をしてきたイギリス人のゲストがいた。なるべく要望に応えようとホテルで設定している最低温度より低い、これ以上下げられない温度にまで下げたと説明したが、それでも暑すぎて眠れないからそれ以下にしてくれと訴える。北陸の11月に18℃かそれ以下は鳥肌立つほど寒いよね。

その3:笑いのツボ

わたしにはアメリカンユーモアがわからない!これが分かち合えないことの3つ目だ。「ここは絶対笑うとこ!」という場面が理解できない。まったく響かない、どこにも刺さらないから笑うどころの話ではない。むしろ脳内では「いったい何を言いたいの?」と混乱することが多い。

遠距離をしている頃、移住したら夫とソファに座って、snuggleして、映画やテレビシリーズを夫と観て、笑いや感動をシェアすると楽しみにしていた。念願叶い毎週一緒に映画やテレビシリーズを観ているが、

実際は、シェアするどころか笑ってるのは常に横にいるアメリカ人夫。うらやましいほどゲラゲラ笑っていることがよくあるのだ。もちろん、わたしの英語力やテキトーな記憶力の問題もあるのだが、それにしても理想と現実の差に愕然とすることが多い。

先日は映画『バービー』を一緒に観た。「コメディだから、きっと笑えるよね。」その考えが甘かった。

最初のシーンから既にお手上げ。これさえ先に観ていれば理解できたと思うのが、下のリンクだ。左が私が観た『バービー』の冒頭シーンで、右が『2001年宇宙の旅』のシーン。ふたつを見比べてほしい。

夫曰く、『2001年宇宙の旅』はとてもシリアスな映画。その重要シーンを『バービー』という、ちょっとおバカな映画の冒頭シーンに使いパロディとして再現しているところがツボらしい。日本語字幕ではどう訳されているのか、訳されていないか興味のあるところだ。

このように、アメリカ映画では、クラッシックな映画の名場面の音楽、衣装、セリフ、役者の動きなどを組み合わせ、新たな映画で再現したりすることがあるらしい。『2001年宇宙の旅』の冒頭シーンだけでも調べると10の映画が出てきた。

それぞれの映画で意味があるわけだが、英語ができたとしても、国ならではのユーモアを理解しネイティブと同じように即座に反応できるというのは、そもそもが難題なわけだ。きっと日本のお笑いなんかでも、外国人の夫には同じ現象が起こるだろう。

このユーモアが共有できないのは国際結婚ならではかもしれない。日本人として日本に生まれ日本で育った私と、アメリカ人としてアメリカで生まれアメリカで育った夫。そもそもの土台が違うから重ならない。

下のリンクは、国際結婚されている人気YouTuberさんの動画。日本人の奥様を持つイギリス人とアメリカ人のご主人お二方ともが、ユーモアを共有できないことを話されている。共に結婚生活が長い方々だ。

動画は21分40秒。ユーモアのセンスが違うとのお話は、5分くらいから数分ある。


というわけで、以上が、私たち夫婦が抱える分かち合えないこと3つである。

照明については、夫の心地よさも十分にリスペクトしたいので、明るくしっぱなしは避け臨機応変の対応をしている。たとえば、わたしが食事を作るなら、その時間だけは明るくさせてもらって終わったら元の暗さに戻すとか。

室温については、寒さより暑さが強いほうが身体に影響が強いだろうから、わたしが重ね着して寒さに対処、あとは毛布などで暖かさは保てる。夏でも長袖、寒くなってきた現在は寝巻き含めて2~3枚きたうえで、更にフリースを着て寝る。これが黄緑色なら、まるでガチャピンだ。

笑いのツボについては、夫が非常に協力的でありがたい。映画を観る前や、観ている途中でポーズをして説明をしてくれる。あとは、わたしのこれからの努力次第で得た英語力が役に立つかもしれない。

そういえば、

「分かち合えないズレ」について考えていたら思い出したことがあった。夫に出会う10ヶ月前に書いた理想の人リスト100項目に「同じような部屋の明るさを好む人」「体感温度が似てる人」「映画やテレビを観て同じシーンで一緒に笑える人」は書いてなかった。かすりもしていない。

昨今よく聴く「ノートに書けば叶う」式なものだが、実際「毎日一緒に夕飯を18時に食べれる人」「同じものを見て同じように美しいと感じる人」は書いて、しっかりと叶っている。そう考えれば、共有できない事柄も自業自得だと笑えてきた。

日本人同士のカップルはどうなんだろう。ちょっと興味があるところだ。

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