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舞台『拝啓、繊細な君へ』:原作手記

〈献辞〉
拝啓、繊細な君へ

人生で初めて脚本を書きました。
厳密に言うと人生で初めて脚本を書き上げられました。
演劇をはじめた高校演劇部時代から何度も書こうとして、完璧主義が祟って書き上げることができませんでした。

人生で初めて一人で舞台に立ちました。
厳密に言うと人生で初めて全編一人で舞台に立ちました。
高校の文化祭のクラス劇でストーリーテラーとして、数回舞台上に一人の時間はありましたが終始一人だけは初めてでした。

とはいえ脚本を書いたつもりが第一にできあがったものは出来事や感情が並んだ”手記”みたいなものになりました。物語を創作しようとしたらなかなか落ちまで辿り着けず、事実を元に脚本を書き上げるという路線に変更したからです。
本作は、自分の体験やそこから感じたことが羅列した文章を脚本に紡ぎ直す工程を踏みました。

わたしは自分のことをなんとなく雨女だろうなって思っているので雨の日の話を書きました。

わたしにとって、雨の日ってものすごく心の中が目の前の世界に反映されるような気がしています。
わたし自身が、雨の日にこれを恵みの雨と思うのかはたまた憂鬱の雨と思うのかはその日の心持ち次第のような気がしているのです。
繊細な心を持った人にとっては、よりその繊細さを感じられる一日。
わたしが思うに、それが雨の日のような気がしているのです。

わたしは役者として自分の中で人生で起きた様々なことは舞台で昇華するも決めているので、そんな雨の日の話を書きました。

ここまでこの駄文的献辞を読んでくださった方には薄々勘づかれていそうなので、ちゃんと素直に白状して、献辞を書き換えます。

拝啓、繊細なわたしへ


2024.12.28.
映像制作集団 TEAM Gさん企画
舞台「空想的形状記憶について」参加作品

『拝啓、繊細な君へ』 脚本:柴田ののか

〈あらすじ〉
「外は今、雨が降っています。しかもまあまあな大雨です―――

雨の日に仕事から帰ってきた。ただそれだけの話です。
でも非日常みたいな日常の話です。
ただそれだけで短い話を紡ぐことができる、
それがわたしの、そして君の日々だと思います。
でも話とよぶには少し大げさな気もするので、
手紙ぐらいのささやかなものとして送らせてください。
そしてふと思い出せたらいつか思い返してみてください。
それは大切な君の、君だけの時間です。

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