私と私が苦手な父の話。
ふと感じた家族の話を書こうと思う。
私は大人になっていくにつれて、父のことが苦手だと感じることが多くある。
母もそんなに好きではないけど、まだ良いほう。
父は明確に「苦手」というのがわかる。
でも決して「嫌い」ではない。そこはやっぱり家族だからなのかなともやもやした気持ちになってしまう。
小さい頃は父にくっついてた人間だった。
可愛い可愛い娘を可愛がる父といったごくごく普通の関係。
いろんなところに連れてってもらったし、買ってもらったし、それなりに優しくしてもらったし。
でもすごい嫌いなところもあった。
父は暴力を振るう人だった。
もちろん私が悪いことをしたからなんだけど、父はまず口より先に手が出る人だった。
もちろんまだ子供だからぎゃーぎゃー泣いてしまっていた。近所迷惑だというくらい、すごい大声で。
それにさらに怒ってしまいまた怒鳴るの繰り返し。
顔を地面につけさせられてそのまま踏んだり、ゴミ袋に入れられてベランダに放り出されて鍵閉められたり。
その時は泣き喚くことしかできなかったし考えられなかったけど、今思えば私が悪いことしたからこうなったんだなと思う。
まあそれにしてはやりすぎてるとも思うけど。
母は何度も止めていたのを知ってるし、弟もそれをみて泣いていたこともあった。
暴力を振るう父は、当時も今も大嫌いだ。
そんなことは私が中学生の頃まで続いた。
こうも続いていくと、私と父の関係は悪化していく一方だった。
優しい父もいたが、それも、暴力によって不満が積み重なっていき、中学生半ばにもなると話すことがなくなっていった。
反抗期、とは違う。反抗はしてなかった。
ただ話をしなかった。
そんな期間が2年もあった。
もともと父と弟は昔から仲が良くなかった。
性格の不一致もあるのだが、私が怒られて暴力振るわれてる姿を小さい頃から見ていたから、物心つく頃から父の印象は悪かったのだろう。
娘とも息子ともコミュニケーションが取れない現状に父は何を思ったのかはわからないが、父から「暴力」が消えた。
私が高校2年生のときだった。
すごい話しかけてくるようになった。
なにをした、どんなことをした、なにが好きなのか、嫌いなのか。
昔の、よく知っているにこにこした父親になっていた。
だが私はもう父のことが好きではなかった。
ここで初めて父に反抗心を見せた。
昔ならこれで怒っていた。
「うるさい」って言った。
父は何も言わなかった。
そこからは何を言われても私の態度は冷たかった。
だけど父はめげなかった。
当時私が好きなアニメを見始めた。
話を合わそうと好きなアイドルの名前を覚えた。
日常何をしてるのか聞くようになった。
そんな父に少しだけは優しくしようと、ちょっとずつ話をするようになった。
たまに、話を聞いて笑っていた。
父はなんとなく満足そうな表情だった。
私との関係性は、まあ煮え切らん関係だったが、悪くはなかった。
そんな中、父との関係性が悪化したのは母と弟だ。
弟は元々だったが、母の態度が異常に冷たくなったのを感じた。高校3年生のときだ。
結局は夫婦生活の小さな積み重ねがどんどん溜まっていってそれが露骨に態度に出るようになった。歳のせいでもあるかもしれないが。
一つターニングポイントとしてあったのが、父の不倫疑惑事件だ。
久しぶりに偶然、昔付き合っていた人に会ったらしい。その日から父は付き合っていたときにプレゼントされたマフラーをつけ始めた。
それに気づいた母が大激怒をした。
離婚に発展するくらい話し合いがヒートアップしてたときがあったらしいがその時私は友達の家にいたため、弟からの話で初めて知った。
その話は上手く落ち着いたのだが、関係性は今現在も良いとは言えない。
そんな状況になってしまってから起きたのが、父の押し付けだった。
母も弟も父を避け気味になってしまったが、情はあるのかなんだか知らないが、私に向かって母は
「お父さんの話し相手になってあげて」
「お父さんと仲いいでしょ?」
というようになった。
ふざけんな。
怒った。
話はしているが昔のことを忘れたわけではない。不本意でしかなかった。
それでもその役割を担ってしまった。
気持ちはわかるからだ。
避けられてしまって居場所がない父の状況と一緒にいたくない母の気持ちも。
本当に不本意ではあったが私は父の話し相手になっていた。
とはいったものの大したことはしていない。
家で会ったときにちょっと話す。
夕飯の時間が一緒だったら話す。
たまに2人して暇な時間があったら近くに買い物にでもいく。
大きなことは何もしていなかった。
だが、大きな進歩ではあった。
大人になってから知らなかった父のことを知ることができたからだ。
父について知ったことは、ラーメンが好きなこと。どんな仕事をしているのか。車の運転が下手なこと。
人に興味がないこと。
一緒にいるにつれ、父は人に興味を持たないことを知った。
人が何をした、どこへ行った、何が好き、何が嫌い。それに気づいてようやく、子供の頃からの違和感の意味がわかった。
小さい頃受けていた暴力も、自分が気に食わないからだと。
嫌な気分になったから叩く。
小さい頃のビデオを見返したことを、父は一度だってない。
子供の成長を記録する理想の父親を作る。
私の進路に口を出したこともなかった。
夜遅く帰ってきても、「どうせ男といたんだろう」と決めつけで話すようになった。
私の話を広げようとしなかった。
さらにわかったのは、父は自分のことにしか興味がないことだ。
自分がいい思いをすればそれでいい。
父の中の、理想の父親像を、自分の中で描けてればいい。
父親らしい振る舞いをする。
とりあえず進路の話をする。
自分の経験談を語る。
裏が見えてしまえば、もうなにも感じなくなった。
なにも話さなくなった。
上部だけの簡単な会話を繰り返すだけになった。
踏み込もうという気が私も父もなくなってしまった。
家族の繋がりだけで構成された、ただの人と人。
人に興味のない人に、どう仲良くしていけばいいのだろう。
どう優しくすればいいのかわからない。
ただ、もやもやする。
そう考えるようになって、初めて私は人に興味のない人が苦手だと感じた。
大人になってから、父親から教わった1番為になることだった。
結局私は子供の頃から大人になっても、父のことが苦手だ。
もっと大人になったら好きにだろうか。
死に目を見たら涙が出てくるのだろうか。
父に関して感じることが少ない今、近くにいなくなったら、何かを考えるのだろうか。
今日も父は冷え切った家のリビングで1人テレビを見ていた。
この冷え切った家族を、父はどう思ってるのだろうか。
私が帰ってくると同時に、
「おう!帰ってくるの遅いな!仕事大変なのか!」
笑顔で話しかけられ、興味のカケラさえも感じられない、他愛のない会話が始まる。
今日も父は自分の理想の父親を演じてる。
やはり私は父が苦手だ。