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離れて好きの気持ちに気が付いた

後になってから、好きだったと気が付いた。いつ気が付いたのかもう覚えていない。その時にはもう高校を卒業していた。

母は恋バナが好きな人間だった。事あるごとに、好きな人はいるの?彼氏はいるの?としつこく聞いてきた。私が曖昧な表情を見せると、「もしかして女の子が好きとかじゃないよね?」と言われた。私はとっさに、「いや、そういうわけじゃないけど」と否定をした。その時に見せた母の安堵した表情で、同性を好きになってはいけないんだと悟った。

そのため、高校に入るまで私が好きになる人は皆男の子だった。どこかで、男の子を好きにならないといけないと自分にプレッシャーを与えていたのかもしれない。しかし、高校に入ってからは進学校に入ったこともあり勉強一筋で、誰にも恋をすることはなかった、と思っていた。それに、中学までの恋愛に疲れたのか、高校では避けるようにしてほとんど男子と関わりを持つことはなかった。

高校2年生の時、ある女の子と親しくなった。新クラスになった時、私の座席の後ろに座っていた子だった。1年生の時、私の友達が彼女と話しているのを見たことがあり、なんとなく見覚えのある顔だった。何をどう話したのかは覚えていない。けれど、私が話しかけて、私たちは友達になった。お昼ご飯の時は、他に2人が加わって4人で食べた。彼女はとても素直で自分を着飾ったりしない子だった。クラスの中では目立たない方で、でも私に優しくしてくれて、彼女と話すのは面白くて好きだった。どんな話でも笑い話になってしまった。

いつからか、私たちは教室移動などで手を繋ぐようになった。彼女の手は私より少し一回り大きく、そして何より暖かった。とても、安心した。女友達同士で手を繋いだりすることはたまにあることだから、彼女と私もその類いであろうと思っていた。彼女もきっとそう思っていたと思う。いつしか、彼女に触れていないと、落ち着かないようにまでなってしまった。

彼女と交わすメモ交換のやり取りも大好きだった。小さなメモ帳の用紙に、メッセージと好きだよという言葉を書き連ねて、彼女に渡した。彼女からも、同じく好きだという返事が来ることが嬉しかった。手紙だけではなく、彼女とは直接口で何度も好きだと言い合った。お互いに恥ずかしいフリをすることはあっても、彼女に対して愛の言葉を口にすることは恥ずかしくはなかった。まだ、遊びだと思っていたのかもしれない。けれど、他の子にはサバサバした態度をとる彼女が、なぜ私にはデレデレしてくれるのかずっと不思議だった。

高校3年生になった時には、別クラスになってしまった。その頃には彼女とハグも沢山していたため、とても寂しかった。けれど、私たちは学校外で遊んだりして相変わらず仲を深めた。文化祭や体育祭の時には、クラスは違ったけれども、共に過ごした。彼女と一緒にいれることがとても幸せだった。

高校を卒業してからは、年に数回会う仲になっていた。お互い、大学生活で忙しかった。長期休みに予定を合わせて私たちは遊んだ。いつも彼女と会うと、変わらず自分の心が落ち着くのを感じた。いつまでも彼女と一緒が良かった。

ある時、横並びで少し洒落たランチを食べながら、自分の話をした。彼氏ができたという報告だった。言わなくても良かったが、私は彼女の反応が気になり、彼女を試すように言うことにしたのかもしれない。彼女の質問に返しながら、一通りどんな人か説明すると、「そうなんだね」と一言彼女は言った。意外に素っ気なかった。彼女には相手はいなかった。その時の彼女は真っすぐ前を向いていて何を考えているのか分からなかった。

その後に彼女から公園に行こうと誘われた。ウォーキングスペースや小さな湖まであるちょっとした公園である。そこで、2人でゆったり歩いていると後ろからすっと彼女に手を繋がれた。えっ、と心臓が止まりそうになった。彼女とは何回も手を繋いできて慣れているはずなのに、なぜかドキドキが止まらなかった。彼女の方は素知らぬ顔で、綺麗だね~と木々を見上げていた。様々な色の緑が混ざっていた。風で揺れる彼女のワンピースが綺麗だった。綺麗なのは彼女だった。

やはり私はまだ彼女のことを好きなんだろうか、と思った。でも、彼女が私のことをどう思っているのかが分からなかった。それが怖かった。だから、私は何も言わずに、「うん、綺麗だね」と答えると彼女の手を握り返した。相変わらず、暖かい手をしていた。


また会おうねと約束をしてそれ以降、彼女とは会えてはいない。けれど、そのうち彼女とは遊ぶのだと思う。
まだ2人の未来の行く先がどうなるかは、誰にも分かるまい。



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月島のん
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