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自治会をどう変えるか〜持続可能な自治会づくりに向けて〜

 先日、とある県下の自治会長を集めた研修会にお招きいただき、講演しました。お題は「自治会をどう変えるか〜持続可能な自治会づくりに向けて〜」。でっかいテーマです。

 よく知られるように自治会では、役員の高齢化や加入率の低下が長年の懸案事項としてあります。自治会の運営がしんどいということから、会員の脱会が起こったり、会自体を解散するという選択をする自治会もあります。

 このような状況でも持続可能な自治会の姿を探ってみたい、というお題をいただき、話題を提供しました。本記事はその研修での講演の記録です。

全国調査から見える自治会の姿

 まず自治会というものの全体像を概観するところから始めましょう。 自治会に対する高名な全国調査報告として辻中豊 他『現代日本の自治会・町内会-第1回全国調査にみる自治力・ネットワーク・ガバナンス』(木鐸社、2009)があるので、そこから見ていきたいと思います。こちらの記事を参照のこと。

 さて本報告を見るとわかるのですが、調査がなされた2006年時点では、いずれのクラスタでも、90%~100%加入と回答しているところが最も多かったのですね。これは加入率低下に苦しんでいるという現在の自治会の姿とずいぶん乖離して見えます。

 この調査からは、加入率の低い自治会の特徴として、マンションなどの集合住宅数と単身世帯が多い傾向があることがわかっています。具体的には、集合住宅が多いと回答する自治会は、加入率が80%未満の自治会では74%であったのに対し、加入率100%の自治会では26% であるというんですね。

 ただし、2000年代後期以降、特に都市部では事情が違うかもしれません。澤田道夫『地縁組織の加入率と活性化に関する一考察 町内会・自治会制度をめぐる基礎理論的研究(2)』は、2008年以降に政令市が行った町内会加入率調査から、政令市においては加入率が微減を続けていることを明らかにしています。

 つまり、ゼロ年代中期までは高い加入率を誇っていたが、とりわけ都市部でゼロ年代末期から加入率の低下が如実になった、ということなんですね。これについて澤田さんは、2005年の最高裁判決の影響を指摘しています。この判決は、自治会加入の任意性を認めるものでした。

 この判決は、おそらく二つの影響を地域社会に与えました。

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