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あいつがムカつくのは、あいつのせいではなくて、気圧のせい

 就職活動の面接ってあるじゃないですか。あれ、受かりやすい時間と受かりにくい時間があるんだと何かの論文で読んだことがある。午前11時くらいが一番厳しくて、午後1時ごろは受かりやすいんだとか。なんでも、11時くらいは、空腹感や血糖値の低下が生じて、気分が不機嫌になるので、判断を厳しくするんですって。一方で昼飯食べた後は満腹感でホッとしていて、ご機嫌になるので判断がゆるくなるとか。人間ってちょろいっすよね。

 フレイザーの金枝篇で有名な王殺しっていうのがありまして。昔の人は、「王様=神様=世界を管理している存在」という図式を信じていたので、王が衰えるのを放っておくと、神様の魂が衰え、結果として世界が衰えて滅んでしまうと。だから例えば天災や不作も王様の力の衰えのせいと考えられていたんだそうです。そのままでは困るので、現王を殺し、力を備えた新たな王に入れ替える、という発想になったんですって。

 現代人の僕らはこれを「昔の人はそんな迷信を信じていたんだなあ」と笑うかもしれないけど、実は大差ないんじゃないかなあ。先程の例なんかにもあるように、人間の感情や認知は血糖値やホルモン、気圧や気温、その直前に経験なんかに影響されて決まってしまうということが様々な研究からわかってきているんだって。

 例えば宇宙ステーションの中で働く宇宙飛行士っているじゃないですか。何億ドルもかけてそこに送り出されている精鋭たち。でも彼らだって何ヶ月も密室にいたらケンカしちゃったりするわけですよ。地球上でやるなら、ああそうですかで済む話かもしれないけど、宇宙ステーションでそれをやられると困る。プロジェクトが難航したり、下手したら全員の命にかかわる。だから彼らのメンタルケアっていうのがすげー研究されて、結果、血糖値のコントロールが超大事だってはなしになって。そのために食事の内容とかタイミングをかなり制御するようになったんですって。

 「人の意思で操作できるもの」だと思っていたものが、意思以外のものに影響されて作られているなんて、つい最近まで思われていなかったんだろうなあ。気合でなんとかなるなんて信じられてきた。だから未だにうつ病なんかは気合とかやる気の問題だという人だっているでしょう。

 逆に、「自分は何でもできる」という信念のことを「幼児的万能感」という。僕らは実は内心、自分自身を全知全能の神であるかのように思いたいんすよね。自分を含む人っていうのはそれくらい神めいたものだと思いたい。だから災害や不作も人のせいだと考えたがる。今も昔も変わらないんすよね。

 「あいつがムカつく」のも、「あいつ」のせいではなく、なんか気温とか血糖値とか、そういうもんのせいだっていう話。よく「他人のせいにするな」というけど、そういう場合「お前の責任だろ」という意味で使われる事が多い。でもそれも本来人のせいじゃないことを「人のせいにしている」という点では、どっちもどっち。小さい頃に教わったと思うけど、人のせいにするとよくないんすよね。

 図にしてみるとこんな感じ。

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