不動産事業者がボランタリーなコミュニティ形成事業に取り組む論理の検討〜株式会社プラスホームのケーススタディ
2022年7月3日に宮崎市民プラザで実施されたコミュニティ政策学会宮崎大会で、「不動産事業者がボランタリーなコミュニティ形成事業に取り組む論理の検討〜株式会社プラスホームのケーススタディ」と題して報告をしました。ここではその報告の記録を記しておきます。
1.研究の背景
コミュニティ政策においては、地域住民の自発的なまちづくり活動が十全に実施されるよう支援することが重要であると言われている。ここでいう「まちづくり」とは、「地域社会におけるボランタリーな公共財供給活動」と定義して説明している。
このまちづくり活動は、その非排除性、すなわち、お金がない人や友人関係が貧しい人でも、その地域に住む人であれば誰でも使える(≒利用にあたって排除されない)財やサービスを供給するという点で、きわめて親切な善行であり、それゆえにたくさん実施されるにこしたことはないし、その公共的な性質ゆえに、行政政策として支援の対象となっている。
ところがこの非排除性は別の事態ももたらす。それは財やサービスの利用にあたって正当な対価を支払わないで「タダ乗り」する、「フリーライダー」が発生することである。
フリーライダーが発生すると、まちづくり活動の担い手には不満感が生じる。この不満感が活動を阻害する程度にまで大きくなると、まちづくりにおける財やサービスの供給が過少化する。
また、公共財の供給に置いては、仮にフリーライダーへの不満感は生じないにしても、利用者が増えてもそれに比例して対価が増えるということはない。結果として、活動規模はおのずから小さくなるし、ボランタリーな活動に依存しがちになる。これが、活動の継続性や専門性に不足があるという、よく知られたボランタリーなまちづくりの課題が生じる基本的なメカニズムである。
これを解決するモデルとして、谷(2019)は京都市伏見区のまちづくり活動者、TH氏のケーススタディから、TH氏型活動モデルを提案した。
これは公共サービスを自己実現の過程で結合的に生産し、なおかつ自己実現に資する投資財として活用することで、フリーライダーを納得し難い存在というより、むしろTH氏の自己実現を助ける活動に位置づけなおすことができ、そのためフリーライダーへの不満感に妨げられることなく公共サービスを供給することができる、というモデルである。
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