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ノンマリ連載短編小説 「夢語部(ゆめかたりぶ)」 #3 本のホットケーキ


第三夢
『本のホットケーキ』

本で出来たホットケーキを作る魔女がいるという噂をSNSで見て、マップを頼りに魔女の家へと辿り着く。

合言葉は自分が生まれて初めて読んだ絵本の名前。私は星になった可哀想な小鳥の絵本の題名を口にする。扉が開くと、部屋の一番奥に魔女が座っている。

「注文は愛言葉の絵本で作るのだけれど、良いかね?」

老齢の見た目とはちぐはぐな、鈴の鳴るような声で彼女は言う。私が「おねがいします」と言えば、彼女はホットケーキを作り出す。材料は合言葉の絵本とカンテラオパール、一晩寝かせて液状にした雲だ。

魔女の魔法で三つの材料が混ざり、私の元へ運ばれる。本のホットケーキは口ではなく心臓で食べるので、まだ温かいそれをワイシャツを開いた胸へ押し付ける。とろり、ホットケーキが解けていく。

「幸せだったよ」

すっかりと食べてしまう前にホットケーキは言った。絵本の中の小鳥は死の間際幸せだったのだと理解して、少し泣いた。


作:白旗ラメント

★一話先行公開中★
第四夢『恐竜と花』
https://nonmari.jp/series/s001104/


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