ノンマリ連載短編小説 「龍のコインが来て、そして」 #2 メドーサの憂鬱
2.
『メドーサの憂鬱』
金曜日、朝起きると、髪の毛がもうひどいことになっていた。まるでメドーサみたい。これもあのコインのせい?と少し憂鬱になる。龍の模様が彫られた古いコインが部屋に来てから、なぜかこれまでと違うことが起きるのだ。ベランダに植えてもいないパセリが生えていたり、とか。
髪はどうやってもうまくまとまってくれなくて、そのまま仕事に行かざるをえなかった。出勤すると、マネージャーが無理な仕事を頼んできた。いつもなら黙って引き受けるけど、今日は断固として断ってみた。あとで、「マネージャー、固まっていましたよ」と同僚に言われた。
もしかして、メドーサ効果かも。メドーサは、見た人を石にしてしまうという、蛇の髪をした魔女。ま、明日美容院にいくんだから効果も今日までだし、と思って気を抜いたのが間違いのもとだった。夜、部屋のパソコンがフリーズしてしまったのだ。
こら、そこ。あんたまで髪の毛を見て固まらなくていいから。
—第3話につづく
龍のコインが来て、そして / 中臣モカマタリ
龍の模様が刻まれたコインを手に入れた「私」に起こる、ささいだけれど不思議なできごとをオムニバス形式でつづる連作。
「nonmari(ノンマリ)」
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