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ノンマリ連載短編小説 - 「Letters. 君と詠む歌」 第七首 (全12回)

前回までのあらすじ:適当な返事でさっさと帰りたそうにしている玉緒に、アイスを食べようと提案する天津。ついでに一緒に花火もしようと誘うが、女との夏の思い出をこの際コンプリートしようとしているのではと指摘される。


第七首

そういえば 気が狂う前兆だった
一緒に食べた ぬるいレバニラ


「お邪魔します」

どうぞ、と招いてくれた彼女の部屋は白くて、ありきたりで、少し足りなくて、彼女の部屋だった。

「天津くんの家はここからどれくらいですか」
「歩いて大体15分だから、すぐですね」

特に急ぐわけでもなく、まるで俺がいないかのように夕餉の準備をし始める彼女に「アイス溶けちゃいますけど、どうします?」と立ち上がってたずねると

「今朝の残りのレバニラがあるので、それと食べちゃいましょう」

という、なんとも的外れな返答があった。

「レンチンが足りなかったですね」
「ぬるいレバニラも、これはこれで楽しいと思います」

ぬるいレバニラと、ギンギンに冷えたビールと、溶けてもはやジュースになってしまったアイス。それに花火もある。

「なんだか俺」
「はい?」

現状を楽しんでいる自分自身と、口元を少しほころばせながらビールを飲む彼女の姿が、どちらも予想外で驚いた。

「楽しいです」
「それはよかった」

—第八首につづく

Letters.君と詠む歌 / 玉舘(たまだて)
前世占いで「ふたりの前世は平安時代の歌人」と告げられた玉緒と後輩の天津。ひとりで生きることに慣れきっていた玉緒は、親しげに距離を詰めようとする天津の若さを暑苦しく感じながらも、彼と二人で"ひと夏の思い出"をつくろうと考える。正反対な二人がおもしろ半分で詠んだ12首の短歌と、その歌が生まれた12の瞬間の物語。


「nonmari(ノンマリ)」

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