ノンマリ連載短編小説 「夢語部(ゆめかたりぶ)」 #9 綻び学者
第九夢
『綻び学者』
綻び学者は世界の綻びを研究している。彼等彼女等が言うには、綻びとは完璧であろうとするから生まれるのだそうだ。元から不完全を許容している人間に綻びは存在せず、完全であろうとすることが綻びに繋がるらしい。ならば不完全を目指せば人間が綻ぶことはないのかと問えば、不完全を目指すことは完全を目指すことよりも綻びを生むのだという。
「我々人類は何かを目指すことで、綻びを生み出すことを学ばなければならない」
「我々人類は何者かであることを固執するあまりに、綻びを生み出し続けている」
綻び学者たる彼等彼女等はそう言い、人類の綻び消費社会に苦言を呈する。また、とある綻び学者はこうも言っていた。
「綻びが悪いのではなく、綻びを許容しない人間が問題だ」
許容されずに虐げられた綻びはいずれ世界を滅ぼすのだ。その言葉を口にした綻び学者は悲しげだった。
作:白旗ラメント
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第十夢『お化けの整形外科』
https://nonmari.jp/series/s001110/
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