見出し画像

ノンマリ連載短編小説 「夢語部(ゆめかたりぶ)」 #12 夢の果て


第十二夢
『夢の果て』


電車に乗っていると「夢の果て」と言う駅名を見つけた。線路が繋がっていないというのに、私はそこへ向かう切符を持っている。車掌さんに詳しい話を聞くと、夢の果てに言っても特に何かが起こるわけではないらしい。

命を奪われることも、病気になることも、怪我をすることもない。だが、一つだけ異変が起こるのだ。それは「夢を見なくなること」らしい。

人によっては安眠が出来るということで、夢の果てへと向かう人もいるのだという。しかし、私は。(いつまでも夢見る子供じゃいられない)なんて格好つけの科白があるけれど26歳の夢見る少女が至って良いだろう。他人の在り方に文句を言う暇があるのなら、自分も少年少女でい続けられるように生きれば良いのだから。

「次に向かいますは夢の果て、乗り換えの際は足元にお気を付けください」

車掌さんの挨拶を前に、私は電車を降りた。まだまだ、夢を見ていられるように。


作:白旗ラメント


nonmari(ノンマリ)

おひとりさまのおひとり時間に寄り添うWEBマガジン「nonmari(ノンマリ)」。ひとりで過ごす夜をテーマに、短編小説やエッセイなど更新しています。 お仕事を終えてほっと一息ついた時、寝る直前のベッドの中で。おひとり時間を過ごすあなたが、心おだやかな夜をすごせますように。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?