ノンマリ連載短編小説 「龍のコインが来て、そして」 #11 ホットケーキ日和
11.
『ホットケーキ日和』
休日の朝、パンケーキが食べたくなったので、つくることにした。といっても、ホットケーキミックスで、だけれども。ステンレス製のセルクル型を手に入れたので、厚みのあるパンケーキが焼けるのだ。二段重ねにして、とっても特別なバターを四角く切って上に置き、メープルシロップをかける。ああ、美味しそう。
このバター、またもやフリマで手にいれたのだ。これはね、特別だよ、といってわけてくれた。食べ終わって窓の外を見ると、風景がぶんぶんと回っている。まるで電車に乗っているように通り過ぎていく。回っているということは、部屋に遠心力がはたらいていそうだけれど、部屋の中の重力関係はそのままで、窓の外だけが高速で回っている。と、だんだんとゆるやかになって、しばらくすると止まって元の窓の外の風景になった。
まあ、龍のコインがいる間には、いろんなことが起こっても、だんだん不思議ではなくなってきているのだ。
—第12話につづく
龍のコインが来て、そして / 中臣モカマタリ
龍の模様が刻まれたコインを手に入れた「私」に起こる、ささいだけれど不思議なできごとをオムニバス形式でつづる連作。
「nonmari(ノンマリ)」
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