世界の始まり
たまたま覗いた骨董市で見つけた、その小さなコップ程の小瓶に浮かんだ地球儀は見れば見るほど良く出来ていた。
いったいどのような仕掛けになっているのかはわからないが、ちゃんと二十四時間周期で自転していて、明るい部屋の中で見ても昼と夜に別れている。
暫くは瓶をクルクル回して色々な角度から地球儀を眺めていたのだが、そのうちある一定方向に瓶をこすると、自由自在に地球儀を拡大したり縮小したりできることがわかった。
試しにどんどんと地球を拡大してゆくと、地上に街並みが現れ、地上を走る豆粒ほどの車や歩いている人間の姿も、それぞれが区別できるほどにまで近寄って見ることができた。
ふと思いついて自分の住んでいるマンションの場所を探しだし、瓶を傾けて窓から部屋を覗いてみると、なんと瓶を覗き込んでいる私の姿が見えるではないか。
私は窓を開けて手を振ってみた。と、そのときうっかり手が滑って窓から瓶を落としてしまい、瓶はそのまま地面に落ちて粉々に砕け散り、世界は終わった。
(2019年1月にSSGへ投稿したものを加筆修)200206