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音楽で人の心は変えられない
音楽で誰かの心を救いたいと思ったこともあった。
しかし、音楽を聞き、作り、人生経験に比例して次第にそう思わなくなった。
「愛する人を大事にするには」
「世の中の圧に負けるな」
そういう聞き手が考えながら聴けるような、メッセージのこもった曲が大好きだ。
逆に、「適当でハッピー」みたいな腑抜けたような曲は聴かない。もちろん、それぞれのシーンで、意味を感じて、共感できる音楽は僕もよく聞いている。
僕は根っからの音楽好きなのか、音楽から人生勉強になったことや、自分の人格形成に繋がった要素がたくさんあると思っている。
ただ、それは多くの人に当てはまることではないのだろうと、26年生きて、音楽と人の関わり方を気にかけてきて、そう思った。
なぜなら、どれだけ良い音楽を聴いていたって、悪事をはたらく人間や、人を裏切る人間は一律で存在しているからだ。
仲間を大事にする歌を聞いている人が、自分の仲間以外の人間を平気でおとしめたりするし、
愛を大事にする歌を聞いている人が、愛について真剣に考えていなかったりもするし。
僕は、そういう一瞬でも無駄になってしまった音楽がかわいそうだと思うし、
音楽から色々得ている僕としては、音楽から何も得られなかった人たちもかわいそうな人だなと思っている。
逆に、そうではない人たちがいるのも知っている。
音楽はライフハックのひとつだと思っている。
その時々のマイナスの感情を解消してくれることもある。
答えの出せない悩みの解決へ導いてくれることもある。
だが、音楽がそうしているわけではない。
あくまで、音楽から吸収したインスピレーションを自分で咀嚼して、聞き手が自ら変化へ足を進めるものだと考えている。
音楽は人の心に何かを教えてくれるが、
だからといって音楽そのものの力ではなくて、
あくまで聞き手自身が自分の意思で変わっていく。
音楽は人の心を変えない。
リードしてくれるというよりは、足踏みしている自分の背中を少し押してくれるものだ。
だから、あくまで起爆剤としてのスタンスで自分は発信していこうと思っている。