【リスボンの旅】1日目:ポルトガルの栄光の跡を残すベレン地区へ
【1日目:10月31日(木)】
朝5時にロンドンの自宅を出発し、車でヒースロー空港へ。出発が少し遅れて11時頃にリスボン国際空港に到着した。
今回の旅の宿は、バイシャ地区のフィゲイラ広場近くのAirbnbだが、宿に向かう前にまずは阿夫利で腹ごしらえをすることにした。そう、リスボンには日本の人気ラーメン店「阿夫利」があるのである!友人からリスボンに阿夫利があると聞いてからというもの、阿夫利のラーメンが食べたくて仕方なかったわたしたちは、リスボンに着いて真っ先に阿夫利に直行することにした。空港からお店までは地下鉄で向かう。
<MEMO> 駅の窓口で€6.8の1日乗車券(地下鉄・トラム・バス・ケーブルカーなどで使えて24時間有効)を人数分購入。チケットの初回購入時は再利用可能なカードNaveganteの発行に+€0.5必要。窓口での支払いはコンタクトレス決済ができず、フィジカルカードで支払う必要があった。
オシャレエリアであるシアード地区にある阿夫利に到着。イギリスにもラーメン屋さんはたくさんあるけれど、ゆず風味の繊細なスープを提供してくれるラーメン屋さんはなく、ひさしぶりの阿夫利の味に感動した。メニューを見て値段はロンドン並みかなと思ったけれど、昼はワンドリンクが付くらしく、この値段でお酒も飲めちゃうのは安い。(あくまで対ロンドン比較であって、日本と比べると高い。)日本の阿夫利とは違って寿司などのメニューもあった。店員さんの話によると、日本のスタッフがときどきラーメンの味のチェックに来るのだとか!店員さんの感じも良く、並々注いでくれた白ワインを飲んで早速ほろ酔いに。
お店のあるシアード地区から宿の最寄りのロシオ駅までは地下鉄で1駅。余裕で歩ける距離なので、目新しい景色を楽しみながら歩いて宿へ向かう。途中で有名なサンタジュスタのエレベーターの横を通りがかると、子どもたちが乗りたい!と言うので乗ることにした。20分ほど並んでクラシカルなエレベーターに乗ると、のぼった先にはオレンジ色の屋根と青い空と海のようなテージョ川というリスボンらしい風景が広がっていた。はじめて見る景色を前に、これから旅が始まるというワクワクが胸いっぱいに広がる。天気も最高。幸先の良いスタートだ。
<MEMO>サンタジュスタのエレベーターは€6だが、€6.8の1日乗車券で乗れる。だいぶ得した気分。
14時半頃にチェックインを済ませ、荷物を置いてトラムでベレン地区へと移動する。街の中心地であるバイシャ地区と人気観光地であるベレン地区を結ぶ15番のトラムは利用客が多いため、4両編成だ。旧市街を抜け、川沿いを30分ほど走って目的地へ。
最初の目的地は、ジェロニモス修道院とそのお隣にあるサンタ・マリア・デ・べレン教会。トラムを降りると目の前に巨大な修道院と教会がドーンと存在していた。さすがは世界遺産である。
ジェロニモス修道院は、ヴァスコ・ダ・ガマらの偉業を讃えるためにポルトガル黄金期の富を注ぎ込んで建設されたという、いわば大航海時代の記念碑的な建造物だ。マヌエル様式の最高傑作と言われているらしい。「はて、マヌエル様式とはなんぞや?」と思い調べてみたところ、15世紀後半から16世紀にかけてマヌエル1世治世のポルトガルで流行した建築様式で、富を誇示するかのような過剰なまでの装飾が特徴とのこと。
マヌエル1世は、またの名を「幸運王」という。ポルトガル王国の黄金期に絶対王政を敷いた王様だ。傍流の生まれであったのに偶然が重なって王に即位したことも「好運」と称される所以である。祖父はドゥアルテ1世(航海者たちのパトロンとして有名なエンリケ航海王子の兄)で、同時期のイギリスはヘンリー7世と8世父子のチューダー朝の時代であると情報を整理すると、大航海時代で繁栄してからスペイン・ハプスブルク家のフェリペ2世に統治されるまでの一番いい時期だということが分かる。(知らない歴史を新たに学ぶときは、すでに自分が持っている知識と結びつけて整理することで理解しやすくなる。)
ジェロニモス修道院とサンタ・マリア教会は一体になっているが、教会には無料で入場することができる。まずは無料部分の教会へ。繁忙期は混雑して入場するのに並ぶと聞いていたが、わたしたちが訪れた15時半頃は空いていて並ばずに入場することができた。
教会の中は、月並みだけど「荘厳」と表現したくなってしまう華麗でおごそかな空間で、細かな装飾が施された柱や天井のリブ、色鮮やかなステンドグラスがとても美しい。奥の祭壇の両脇には、ニッチの奥にゾウに支えられた王家の棺があった。コメルシオ広場の騎馬像の台座部分にもゾウの像があった。
祭壇の左手奥に進むと聖具室があり、ここは入場するのに€1かかる。ここも素晴らしいと後で聞き、€1をケチって入らなかったことが悔やまれる。(聖具室は16時までで、後で戻ってきたときにはもう閉まっていた。)
教会を出て、次は修道院へ。こちらはチケットを提示する必要があり、その場でオンラインでチケットを購入した。(窓口で購入する場合は、大通りの反対側にあるチケット売場で購入。)こちらも並ばずに入場することができた。
ジェロニモスとは、聖ヒエロニムスのこと。聖ヒエロニムスは4世紀に聖書をラテン語に翻訳したことで知られる聖人だ。立派な白い髭と禿頭が特徴で、赤い帽子とローブ、ライオン、聖書、骸骨が共に描かれることが多い。
修道院に入って階段を上ると、踊り場と上った先の壁に聖ヒエロニムスを描いた絵が飾られていた。回廊に出ると、四方を取り囲む柱とアーチに圧倒された。浮き彫りが施された柱がズラリと並ぶ。過剰なまでの装飾という説明が頷けてしまう。およそ修道院らしからぬ華美な建物である。
まずは2階部分をぐるりと一周してから1階に下りる。1階部分では食堂と棺が安置された部屋に入ることができた。ジェロニモス修道院にはヴァスコ・ダ・ガマの棺があると聞いていたので、この棺がそうかと思ったら別の人の棺だった。(誰の棺だったか名前は忘れてしまったが、この修道院の設立に貢献した人物の棺だと説明を読んだ気がする。)
ヴァスコ・ダ・ガマの棺はどこだ?と探しているうちに出口に辿り着いてしまった。さっきの教会にあるに違いないと思い、再び教会に入場。ぐるりと一周したが見当たらない。諦めかけたところで、工事中のエリアに娘が棺を発見!気づかずに素通りしたのが不思議なくらいデカデカと看板があった。隣にはルイス・デ・カモンイスの棺もあった。ポルトガルで一番有名な詩人らしいが、恥ずかしながらここに来るまで知らなかった。ガマとカモンイスの棺と先ほど修道院で見た棺はゾウではなくライオンが支えていた。
工事中だったのが残念だが、棺を無事に発見できてホッとした。特に思い入れがあるわけでもないのに、見逃したままではなんだか落ち着かない。ミーハーな観光客根性丸出しだ。
<MEMO>ジェロニモス修道院は18時、サンタ・マリア教会は17時まで。教会は月曜定休。修道院は12歳まで無料、13〜24歳€6、25歳以上€12。リスボアカードがあれば入場無料。
次の目的地である発見のモニュメントを見に行く前に、修道院発祥のお菓子、パステル・デ・ナタを食べにパスティシュ・デ・ベレンへ。ここは元祖ナタのお店で修道院時代のレシピが今現在まで受け継がれているのだそう。店の外まで行列ができていたが、テイクアウトはナタのみのため回転が早く、すぐに買うことができた。甘党のちびっこたちはナタを一口食べるやいなや「おいしい〜!」と顔を綻ばせていた。まだ温かいナタを食べてホクホクな気分で発見のモニュメントへと歩いて向かう。
遠くからも大きく見えたモニュメントは、間近に見たら想像以上に大きかった。ポルトガルが世界各地を「発見」したことを讃えるこのモニュメントには、エンリケ航海王子やヴァスコ・ダ・ガマ、マゼランなどの偉人の像がズラリと並ぶ。先頭に立つのがエンリケ航海王子。日本にキリスト教を伝えたザビエルの姿もあった。
わたしたちがここに着いた頃にはすでに17時を回っており、太陽は西の空に沈みかけていた。夕陽を受けるモニュメントは、黄昏のポルトガルを見ているようで感慨深かった。写真で見ていた昼間のそれとはまったく違って見えた。
テージョ川沿いを夕陽に向かって歩いて行く。次に目指す先は、船の出入りを監視する要塞として建てられたというベレンの塔だ。発見のモニュメントからは歩いて20分ほど。大きなタンカー船が4月25日橋の下をくぐり、外洋の方へと横を通り過ぎていった。赤く染まる夕焼け空をバックに浮かび上がるベレンの塔のシルエットが美しかった。
ベレンの塔も人気観光地でいつも混雑していると聞いていたが、わたしたちが着く頃には閉館時間の17時半を過ぎていて閑散としていた。干潮で塔のすぐそばまで行くことができ、子どもたちは砂浜に落書きをして遊んでいた。
19時にレストランを予約していたので、そろそろ帰ろうとトラムの停留所へ。ベレンの塔付近は閑散としていたし、ジェロニモス修道院からは少し距離があるしそんなに混んでいないだろうと思っていたら停留所は大行列で帰りのトラムは座ることができなかった。道路も混雑しており、Googleマップでは20分強と表示されていたが実際には45分かかった。朝も早く、歩き疲れた末っ子は立ちながら寝落ちしそうになっていて、途中から抱っこした夫は揺れる車内で眠る子どもを抱き続けて大変だっただろうと思う。予約していたレストランにも遅刻しそうで焦ったが、なんとか時間までに辿り着くことができた。
友人から教えてもらってMaria Catitaというレストランを2週間前に予約しておいた。予約しないと入れない人気店だそう。雰囲気の良い小洒落たお店で、店内にはハロウィンの装飾がされていた。料理も洗練されていて美味しい。ただ、子どもには少々スパイシーで食べられない料理もあった。ポルトガル名物のイワシは残念ながら売り切れだった。また食べる機会があるだろうと思っていたが、結局この旅行中にイワシを食べることはできなかった。デザートに頼んだ€2のアイスクリームが想像の3倍くらい大きかった。リスボンはロンドンに比べるとだいぶ安い。
満腹になって夜のリスボンを歩いて宿まで帰る途中でスーパーに寄って翌日の朝食を調達した。この日はハロウィンだったが、ところどころ装飾を見かける程度で仮装した人たちの姿は全然見かけなかった。
明日は日帰りでシントラに行く。(続く)