【イタリア・スイスの旅】14日目:幸せな動物たちに会いにチューリッヒ動物園へ
【14日目 8月10日(土)】
9:00 チューリッヒ動物園
14:00 動物園を出てチューリッヒ空港へ
17:15 チューリッヒ発・ロンドンへ
長かった旅行もついに最終日。今日はチューリッヒ動物園に行く。当初、動物園は予定になかったのだが、最近チューリッヒを旅行したという友人から勧められ、ぜひ行ってみたい!と旅程に組み込んだ。
チューリッヒ動物園は、「世界一動物が幸せな動物園」とも言われていて、動物たちがのびのびと暮らせるよう広大な敷地で自然に近い状態で飼育されているそうだ。例えば、餌もただ与えるだけではなく、草の下などに隠して動物に自ら餌を探させるという工夫をしているという。わたしは動物園がとても好きなのだが、好きになったのは大人になってからだ。子どもの頃は上野動物園くらいしか連れて行ってもらったことがないのだが、狭い檻に入れられた動物たちを見るだけ、という見世物小屋のような印象を抱いていた。動物園が変わったのか、自分の意識の向け方が変わったのかは分からないが、動物園が物珍しい動物を見せるという単なる娯楽施設ではなく、野生動物の研究や保護を目的とした啓蒙施設でもあり、飼育員さんたちが並々ならぬ情熱や愛情を持って動物たちに接していることを知り、動物園に積極的に行きたいと思うようになった。
ロンドン動物園の入園料が高すぎる(通常料金大人31ポンド、子ども21.7ポンド)のも動物園運営や研究・保護活動にかかるコストを考えれば納得せざるを得ない。(我が家では200ポンド払って年間ファミリーパスを購入し、元を取るべく子どもたちを連れて頻繁に訪れている。)ここチューリッヒ動物園の入園料もファミリーチケット78フラン(大人29フラン)と安くない。
その日のうちにロンドンに帰らなければならず長居できないわたしたちは、開園時間の9時に動物園に到着。広大な動物園だが、チューリッヒ中央駅からトラムでわずか20分ほどの場所にある。入園時にチケットオフィスでキリンの餌やりができるチケットを購入。キリンの餌やりは13:30なので、それが最後のイベントになりそうだ。
<MEMO>キリンの給餌チケットは現地(キリンの飼育場所)では購入できないので要注意。餌やりをしたければ、入園時にチケットオフィスで買うべし。
最初に向かったのはオーストラリア館。ここではカンガルーやエミューなどのオーストラリアの動物が飼育されているが、何と言ってもコアラがいるのが最大の売りだ。コアラはどこの動物園にもいる動物ではなく、わたしは今回が初対面だ。初めてお目にかかったコアラさんは木の上で寝ていたが、それもそのはず、コアラは消化が悪く栄養価の低いユーカリを主食とするため、省エネのために1日20時間も眠るらしい。時折目を開けてもぞもぞ動いて体勢を変えることはあったが基本的に寝ていた。体を丸めて眠る姿が可愛らしかった。
お次は霊長類館。軽々とモンキーバー(雲梯)を5~6つ飛ばして移動するオランウータンが出迎えてくれる。彼らの身体能力の高さには毎度驚かされる。建物の中に入るとマウンテンゴリラの部屋があるのだが、このゴリラ部屋で餌を探すゴリラの姿を見ることができた。下に敷いてある草の中に隠された落花生やココナッツをゴリラたちが必死に探している。やがて1頭のゴリラがココナッツを見つけた。それを木の棒でつついて穴を開け、穴から汁を手のひらに出しておいしそうにすすり始める。するとココナッツを見つけられない別のゴリラ(大きさから勝手にボスと認定)がやってきて「俺にもよこせ!」と横取りしようとするが、「いやだね!」と拒絶。ココナッツをめぐる諍いが起きるが、あまりにも頑なな拒絶にさすがのボスも諦めたようだ。しばらくすると、おいしい汁は全部吸いきったのか、ココナッツゴリラは「これやるよ」とボスにココナッツを献上。ボスは恭しく受け取って吸ってみるも、あまり汁が出てこなかったようだ。ココナッツを床に打ち付けて殻を割り、出がらしを食べていた。ゴリラたちが繰り広げるドラマがあまりにも面白くて見入ってしまった。
霊長類館を出たところで放し飼いのクジャクの一家に遭遇。クジャクの後をついて行くと、草木が生い茂り、水が流れる美しい場所に出た。そこにはメガネグマが暮らしていて、チラリと姿を見ることができた。広くて隠れるところもたくさんあるので、見えたと思ったら次の瞬間には姿が見えなくなってしまう。動物ファーストの素晴らしい環境だ。
またしばらく進むと、モンゴルゾーンに行き着いた。ここではラクダやヤクが飼育されており、遊牧民のテントであるゲルが設置してある。ゲルの中には遊牧民の生活や動物、乳に関する展示があった。
さて、もう11時。そろそろ動物園の反対側に移動しなくては。残念ながら工事中(2025年春にオープン予定だそう)の大型肉食獣ゾーンを通って、園内を走る機関車形のバス「マソアラ・エクスプレス」の乗り場へと向かった。動物園は中央の建物を挟んで大きく2つのエリアに分かれているのだが、バスは一般客が入れない研究棟エリアを通って両エリアを行き来する。反対側のエリアまでは歩ける距離、というかむしろ歩いた方が早いのだが、乗り物好きの息子の喜ぶ顔が見たくて、この手の物につい乗りたくなってしまう。バスを待つ間に、乗り場の近くにいるフンボルトペンギンと、建物の中にいるキングペンギンを見た。
<MEMO>マサオラ・エクスプレスは運転手からチケットを購入可能。1人2フラン(6歳未満無料)。カード決済不可でスイスフランの現金を持っていなかった我々は、座席を確保した上で近くの売店まで走って5人分の乗車券を購入した。スイスで現金が必要だった場面は、こことユングフラウヨッホの屋外の売店の2回のみだった。
チューリッヒ動物園で恐らく一番有名なのは、ゾウの水浴びだ。ゾウが飼育されているエレファントパークには大きな水槽があり、ゾウの泳ぐ姿を見ることができるという。残念ながら水浴びの時間ではなかったようで泳ぐ姿を見ることはできなかったが、広々とした素晴らしい環境の中でゆったりと歩くゾウを見ることができた。エレファントパークを後にして軽くお昼ごはんを食べたら、いよいよ本日の最終イベント、キリンの餌やりだ。
キリンが暮らすのは、大きなバオバブの木が生える、この動物園の中でも一番広いサバンナゾーンだ。ここにはキリンの他に、シマウマやサイ、ダチョウなどのアフリカの動物が暮らしている。キリンの餌やりポイントは屋内と屋外の2箇所にあった。天候によって使い分けるのだろう。晴天のこの日は屋外だ。時間になり、飼育員さんが餌の時間を知らせる音を鳴らすと、遠くからキリンがゆっくりと歩いてやって来る。キリンは長い首を生かして高い木の葉を食べる。飼育員さんから葉っぱのついた枝を渡され、キリンの前に差し出すと、キリンはその長い舌で葉をこそぎ取って1枚残らずきれいに食べた。わたしたちは列の2番目に並んだので、空腹だったのだろう。ものすごい勢いだった。キリンの餌やりは、以前和歌山のアドベンチャーワールドでも体験したことがあるが、そこでは固形の餌を食べさせる方式だった。木の葉を食べさせる方がより自然に近い姿を観察できてよいと思った。
17時の飛行機に乗らないといけないので、ここで時間切れだ。残念ながらマダガスカルの熱帯雨林を再現したマサオラ熱帯雨林ゾーンには行けなかった。子どもたちが大好きなカメレオンを見せてやりたかった。ライオンやトラなどの大型ネコ科動物もこの動物園でぜひ見てみたいし、ゾウの水浴びも見たい。そもそもチューリッヒは時間が足りなすぎて市街観光もろくにできなかった。チューリッヒを再訪できることを願って筆を置くことにする。