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【リスボンの旅】2日目:シントラの宮殿巡りと2万歩ハイキング

【2日目:11月1日(金)】
リスボンの街の歴史において一番の重大イベントは、1755年に起きたリスボン大地震だろう。多数の犠牲者と甚大な被害を出したリスボン大地震が発生したのは、269年前の今日、11月1日だ。11月1日は万聖節(諸聖人の日)といって、カソリック教会にとって大事な祝日だ。地震のあった日は、ミサに来ていて罹災した人が多かったという。

11月1日が祝日であることも、リスボン大地震が起きた日であったことも、この旅を計画した時点では知らなかった。休日は電車もバスも本数が減ると聞いていたので、シントラに行く日は平日にしようと金曜日に行く計画を立てたのに、祝日だから休日ダイヤだということに気づいたのは旅行前日だった。困ったことになった。シントラで一番人気のペーナ宮殿は朝10時に予約していたのだが、ちょうどいい時間の電車がないのだ。夫がUberで行けばいいんじゃない?と言うので、Uberを利用することで落ち着いた。結果的に当初1時間半で想定していた行程を40分弱に短縮できたし、シントラのバスは価格設定が高いので、Uberにして正解だったと思う。

<MEMO>リスボンからシントラで電車で行く場合、運賃は片道€2.40。シントラのバスは1回€4.55。電車とバスで行く場合、バスに2回以上乗るならTrain&Busパス€14がお得。Uberだと4人乗りで片道€25~30くらい、6人乗りで€40~45くらいが目安。

9時少し前に庭園のエントランス前に到着。すでに行列ができている。一番早い宮殿の入場チケットは9時半で、宮殿まで徒歩30分なので9時にエントランスが開く。入場してシャトルバス乗り場に並ぶが9時15分くらいまでバスは動かなかった。でもバスは徒歩30分の道のりを3分ほどで移動できるので、だいたい6分間隔くらいで来る。1本見送ったが9時半前には宮殿に着くことができた。その頃には先頭の徒歩組も登り終えていた。タイムスロットが厳密に管理されているようだったので30分ほど宮殿の外で独特の外観や景色を楽しみながら10時になるのを待った。

<MEMO>ペーナ宮殿のチケットは大人€20、子ども(6‐17歳)€18、ファミリー(大人2名・子ども2名)€65、シャトルバスは6歳以上有料で€3。オンライン事前購入(3日前までに購入)で15%オフになる。売り切れるので、事前の予約必須!(要時間指定・遅刻は入場不可とチケットに記載あり。) 

右手のインパクト大の彫刻は海の神トリトン

ところで、このド派手でヘンテコな宮殿は誰がどんな経緯で建てたものか気になったので調べてみた。この宮殿は、1836年に当時の女王マリア2世の王配フェルナンド2世の命によって建てられたそうだ。元々は修道院であったが、冒頭でも触れた1755年のリスボン大地震を受けて修道院は廃墟と化していた。シントラの街を気に入ったフェルナンドは、この廃墟を王家の夏の離宮に作り変えようと買い取って再建させたという。

「余がフェルナンド2世である」

外観もイスラムと西洋の様式が融合したようなごちゃ混ぜ感のある不思議な造形だったけれど、内部もそんな感じだった。元々は修道院だったということで、教会建築らしさも随所に残しつつ、煌びやかな宮廷の雰囲気もあって面白かった。

特にエキゾチックな雰囲気が漂う中庭

部屋毎に誰が何の用途で使った部屋かの説明があった。登場人物は主にフェルナンド2世、エドラ伯爵夫人、カルロス王、アメリア王妃の4人。あまり役に立たないかもしれないけど、せっかく調べたのでざっとまとめてみた。

フェルナンド2世:この宮殿建設の発起人であり最初の主。女王マリア2世の王配。イギリスのヴィクトリア女王の従兄。(アルバート公の従兄でもある)
エドラ伯爵夫人:フェルナンド2世の後妻。女王のマリア2世は早くに亡くなり、約15年間寡夫だったフェルナンドは1869年、53歳のときに約20歳年下のオペラ歌手エリゼ(=エドラ伯爵夫人)と再婚。
カルロス1 世:マリア2世とフェルナンド2世の孫。1889年に即位し、1908年に暗殺される。またの名を「殉教王」。王太子のルイス・フェリペもこのときに死亡したため、王位は次男のマヌエル2世に継承される。マヌエル2世はポルトガル王家最後の王(1910年に王制廃止)。
アメリア王妃:カルロス1世の王妃、マヌエル2世の母。

ポルトガル王朝の晩年に王家の人々が過ごした宮殿は、王制廃止後に国定記念物に指定され、1995年に世界遺産に登録された。

元々はこんなド派手な色じゃなかったとか

お腹がすいてきたので1階のレストランで軽く食事をした。レストランといってもカフェテリア形式だ。テラス席のある2階のカフェテリアは混雑していたが、こちらは時間が早いこともあってガラガラだった。ここでポルトガル名物のコロッケを3種いただいた。バカリャウ(干し鱈)、エビ、鶏肉。この3種が定番らしい。

この3種類(別のお店の写真だけれども)

当初の予定では、ペーナ宮殿の次はバスで街の中心部まで出てランチやパティスリーを食べてからレガレイラ宮殿に行くつもりだった。しかし、昼食は済ませてしまったし、Uberで来たからバスのチケットもない。子どもたちにはしんどいかと思って一度は断念したムーアの城壁に行きたい気持ちが沸々と湧いてくる。よし、行こう。「今日はたくさん歩くから覚悟して!」と家族に告げ、ムーアの城壁を目指すことにした。ペーナ宮殿周辺を走るバスは一方向運行でペーナ宮殿からムーアの城壁に行くには1周近くぐるりと回る必要がある。上り坂もあるが徒歩10分ほどの距離なので歩いた方が早い。

途中で見えてきた城壁は遥か遠くに見える。わけもわからずついてきている家族から思わず絶望的な声が漏れるが、エントランスには程なく到着した。券売機でチケットを購入して、いざ城壁へ!

<MEMO>ムーアの城壁のチケットは大人€12、子ども(6‐17歳)€10、ファミリー(大人2名・子ども2名)€33。こちらもペーナ宮殿と同様にオンライン事前購入(3日前までに購入)で15%オフになる。ペーナ宮殿やシントラ宮殿とのセット割りもあり。

城壁までの道のりはハイキングみたいで楽しかった。先史時代のサイロ、ムーアの王が下に埋められているという伝説のある貯水槽、元々はモスクだったがレコンキスタで教会に転用された教会跡などが残る山道をのんびり歩いていたら30分ほどで城壁に辿り着いた。

城壁の向こう側に絶景が広がっている

先ほどまでいたペーナ宮殿も遠くに見え、ペーナ宮殿が山の上にあるということがよく分かる。わたしは高いところが苦手なのだが、思っていたよりも壁が高かったのでさほど怖さは感じなかった。風が穏やかだったからかもしれない。途方もなく長く見えた城壁だったが、サクサク歩けて子どもたちも難なく踏破することができた。

こんな高いところによく建てたなと思う

来た道を引き返してエントランスまで戻ると、再びバスルートの反対周りで山を下る。次の目的地であるレガレイラ宮殿では徒歩で30分ほど(とGoogleマップには表示されている)。舗装された道をずっと下っていけば辿り着くような気でいたが、Googleマップに従って進むと道路を逸れて山の中へと入っていき、途中から完全にハイキングの様相になった。大きな岩と木々に囲まれた山道を転ばないように慎重に下っていく。ロッククライミングをしている人たちも見かけた。下から登ってくる人たちともたくさんすれ違ったが、逆コースはかなりキツそうだった。

こんな山道を下っていく

30分ほど山道を歩いただろうか、ようやく舗装された道に出た。この時点ですでに40分ほど歩いており、レガレイラ宮殿の予約時間の14時を回っている。ここからも宮殿のエントランスまでは意外と遠くて、到着したのは14時25分だった。14時30分のスロットの人たちの行列の横を通り抜けてギリギリセーフで入場することができた。

<MEMO>2024年11月時点のレガレイラ宮殿のチケットは大人€12、子ども(6‐17歳)€7。2025年1月から大人€15、子ども€10に値上げする模様。リスボアカードで10%オフ。

レガレイラ宮殿は、深い木々に覆われた広大な敷地の中に宮殿や塔、洞窟などの見所が点在している。一番有名なのはイニシエーションの井戸だ。まず最初に、遠くから見えた塔を目指して登った。塔の上からはペーナ宮殿とムーアの城壁が見えた。

遠くに見えるムーアの城壁(左)とペーナ宮殿(右)

今まで散々歩いてきて疲れていたので、さっそくイニシエーションの井戸を目指す。広すぎて迷子になりそう!と思ったら本当に迷子になり、方向音痴なわたしたちは気づけば同じところをぐるぐる回っていた。探検しているようで楽しいっちゃ楽しい。

ようやく標識を見つけて正しい方向へと進む。しばらく進むと広場に出た。Googleマップはここだよと示しているが、人影はまばらだ。広場にはモニュメントがあり、その奥には立ち入り禁止のロープが張られた洞窟の入口があった。ここがイニシエーションの井戸の入口だと勘違いしたわたしは落胆するが、周りの人たちがこんなに平然としているのはおかしいと気を取り直し、再び歩を進める。

巨大なセコイアの木やゴッホの描くオリーブの木のように枝がぐねぐねした木が生える道を進んだ先に、ようやく行列を見つけることができた。15分ほど並んで入場。後で調べて分かったことだが、立ち入り禁止の場所も井戸に繋がる洞窟の入口で、かつてはここからも入場することができたようだ。(今は井戸の上から入って下に降りるという一方通行になっている。)

深さ27メートルもあるそう

実際に入ってみると深さを実感する。わたしたちは螺旋階段で上から下りるスタイルだが、かつてここで行われたという秘密結社のイニシエーション(通過儀礼)は、真っ暗な井戸の底から洞窟を抜けて地上まで出てこられたら合格、というものだったらしい。井戸の底まで下りて上を見上げてみる。地上がとても遠くに感じた。

井戸の底から先は洞窟になっていて、探検家の気分で洞窟の中を進む。と言っても、足元を照らすライトが設置されているのでスリルは半減だ。外界に開かれた洞窟の隙間からは藻に覆われた池が覗き、池に落ちる滝や飛び石も見えた。

真っ暗だったら絶対に怖いやつ

最後に宮殿内部を鑑賞し、宮殿を後にした。ここから市街地までは歩いて10分ほど。シントラ名物のパティスリーを食べにPiliquitaへ。店の外に人だかりができていて店内もかなり混雑していた。近くに2号店があるので試しに行ってみたらそちらでは並ばずに購入することができた。ケイジャーダとトラヴェセイロとココナッツケーキを購入。帰りの電車で食べることにした。

いっぱい歩いたけれど、下りが多かったのでしんどくはなかった。シントラを徒歩で回る場合は、高いところから低いところへ移動していくルートがよいと思う。そうすると、ペーナ宮殿→ムーアの城壁→レガレイラ宮殿→シントラ宮殿の順になる。ただ、山の上にはお店がないので要注意。わたしたちのようにペーナ宮殿で軽く食べるのも一案。

電車の時間を確認し、駅まで急ぐ。チケットの購入にやや苦戦したが無事に電車に乗ることができた。ボックスシートも確保できた。あとは終点まで座っていればいい。安心してパティスリーを頬張る。う、うまい…!歩き疲れた体に糖分が沁みる。

そして、終点リスボン・ロシオ駅(仮)に到着。ほー、地下鉄ロシオ駅は普通だけど、電車のターミナル駅は立派だねぇ!なんて言いながら気分よく写真撮影などをしてからGoogleマップで現在地を確認したら、リスボン・オリエンテ駅にいることが発覚。勝手にロシオ行きと勘違いしていた電車はオリエンテ行きだったらしい。わたしはしばしばそういうミスをやらかす。振り返れば、日付を間違えたり行き先を間違えたり、旅の失敗には枚挙にいとまがない。でも旅に失敗は付き物だし、こんなのは些細なミスだ。

ロシオ駅(仮)改めオリエンテ駅

駅の窓口で24時間有効の1日乗車券を購入し、地下鉄を乗り継いで帰った。シントラであんなに急いだのに40分後の次の電車に乗るよりも帰りが遅くなった。やれやれ。疲れたので宿のすぐ近くのレストランGranja Velhaに行くことにした。すぐ近くのお店は大繁盛なのに、しばらくわたしたち以外にお客さんが来なくて心配になったが、普通に美味しかったし安かった。全く気取らないお店で、奇を衒わない素朴な料理がよかった。日本人のツアー客が団体で訪れるお店のようで、日本語のメニューがあり、ウェイターのおじさんも時折日本語を使って笑顔で接してくれた。しばらくしたら常連客と思しきお客さんが、またしばらくしたら飛び込みと思われる団体のツアー客もやってきた。だんだんと賑わい始めたお店を後にして宿に帰った。

平日だと思ってたら祝日で休日ダイヤだったり、乗る電車を間違えたり、トラブルもあったけど、楽しかった!今日はいっぱい歩いた。なんだかんだ、ちびっこたちはペーナ宮殿からシントラ駅までの長い道のりを完歩してしまった。末っ子はつい最近まで抱っこ抱っこだったのになぁ。

明日はリスボン市街を観光しようと思う。

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