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ウィップスネード動物園でサイの赤ちゃんに対面!
ロンドン動物園の運営母体であるZSLことZoological Society of London(ロンドン動物学協会)は、ロンドン動物園の他にWhipsnade Zoo(ウィップスネード動物園)も運営している。ロンドン中心部から車で1時間ほど北上したベッドフォードシャーにあるウィップスネード動物園は、ロンドン中心部にあるロンドン動物園よりも広大な敷地を有しており、あまりにも広いのでサファリパークではないのだが敷地内に車で入ることができる。(園外の駐車場は無料だが、車で入場する場合は入園チケットの他に1台につき£30の車両入場料が必要。ゴールド会員だと半額の£15だが、シルバー会員は非会員と同額。)ロンドン動物園にはいないゾウやサイなどの大型草食動物がいるのが特徴だ。
そんなウィップスネード動物園で今月2日にサイの赤ちゃんが誕生したというので、週末に子どもたちを連れて見に行くことにした。我が家はZSLの年間パスを保有しており、ロンドン動物園とウィップスネード動物園に無制限で行くことができる。午前中に息子の野球の練習があったため出発したのがすでに1時半過ぎだったのだが、年パスを持っているとそんなときでも気軽に行けてしまうのがよい。ただ、3時間もいられないのに£30払うのはもったいないので、今回は園外の駐車場に車を停めて歩いて回ることにした。(滞在時間が短いときこそ、車で移動して時短したほうがよいという考え方もある。単にケチっただけだ。)
お目当てのサイの飼育場に向かう途中で、チンパンジー、ヨーロッパバイソン、クズリ、ペンギンを見た。
最初に見たチンパンジーは、先週から急に寒くなったので、まだ寒さに慣れないのか室内や屋外のヒーターのそばでじっとしていた。次に見たヨーロッパバイソンは、欧州の陸上動物最大というだけあってかなり大きい。約100年前に野生では絶滅したヨーロッパバイソンだが、当時飼育下で生息していた数十頭を繁殖させて野に放つという取り組みを継続した結果、今では数千頭にまで個体数が増えたそうだ。
次はクマとクズリがいるエリアへ。この動物園は飼育場が広いため動物を見かけられないこともある。今回はヨーロッパヒグマの姿を見ることができなかったが、逆に前回見られなかったクズリを見ることができた。クズリ、英名wolverine(ウルヴァリン)は、長く鋭い鉤爪がよく目立ち、「あー、X-MENみたいだー」とアホみたいな感想が思わずこぼれてしまう。小さくて可愛らしいけれど、凶暴なんだろうなぁ。
ペンギンは、ケープペンギンとイワトビペンギンのいずれも絶滅危惧種の2種類が飼育されている。ケープペンギンはアフリカに生息する唯一のペンギンなので、英語ではAfrican Penguinと呼ばれる。和名の「ケープ」もアフリカのケープ地方のこと。イワトビペンギンは目の上の黄色の冠羽(かんう)が特徴的なあの子たちだ。ペンギンの飼育場は動物園の端っこにあり、ベッドフォードシャーの美しい田園風景を背景にのびのびと暮らしている。雨が上がってようやく顔を出した太陽に向かって、両手を広げて日向ぼっこをするペンギンたちが可愛いすぎた。
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ペンギンを愛でたあとは、いよいよサイの飼育場へと向かう。ここウィップスネード動物園では、ワラビーとパタゴニアンマーラ(ウサギのような耳をした小型のカピバラみたいな齧歯類の動物)が放し飼いにされていて、園内の至るところで自由人である彼らに遭遇する。小型のマーラはサイの飼育場にも普通に出入りできるようで、親子以上に大きさの違う者同士で仲良く草を食んでいた。
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さて、10日前に生まれたばかりのシロサイの男の子(名前はまだない)と初産を終えたばかりの新米ママFahariは小屋の中にいた。穏やかに我が子に寄り添う母が、時折干し草を蹴って近くにいる飼育員に威嚇するような態度を取ることがあった。子を守る母の本能なのだろう。生まれたばかりのわりに体の大きな赤ちゃんサイにはトレードマークの角がまだ生えておらず、顔つきもあどけない。母のお腹の下にもぐったり、尻尾を振りながらキョロキョロしたりしていて可愛かった。
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小屋の外に出ると、今年3月に生まれたBenjaがママのJaseeraと一緒にいた。Benjaは赤ちゃんの異母兄だ。しばらく観察していたが、母子はずっと一緒に行動していた。Benjaはだいぶ大きくなって角も生えかけているが、まだ親離れしていない様子だ。パパのSizzleは離れた場所でのんびりひとりでゴロゴロしていた。お父さんは気楽でいいわねー。
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ところで、わたしがなぜこんなに個体の名前が分かるかと言うと、飼育員さんによるRhino Talkを聞いたからだ。ウィップスネード動物園には生まれたばかりの赤ちゃんを含めて現在9頭のシロサイがいるが、角の形が皆違うので、角を見れば簡単に識別できるのだそうだ。それぞれの角の特徴をレクチャーしてもらったが、さすがに覚えられなかった。
サイの角と言えば、サイは角が薬として使えるとかで角目当ての乱獲に遭い、個体数が激減して絶滅の危機に瀕している。だが、サイの角は髪の毛や爪の主成分であるケラチンでできていて科学的には効用はないと言われている。それでも角目当てに殺されてしまうのは、角を高値で購入する人たちがいるからだ。絶対に買ってはいけないし、もしSNSなどで販売されているのを見かけたら通報してほしいとのことだった。
さて、見てのとおりシロサイは白くない。なのになぜシロサイなの?とうっすら疑問に思っていたのだが、その疑問がついに解消された。サイはアフリカに生息する2種(シロサイ、クロサイ)とアジアに生息する3種の合計5種が世界には存在するが、地面の草のみを食べるのはシロサイだけだそうだ。(他のサイは木の葉や枝なども食べる)顎を地面にこすりつけて草ばかり食べるシロサイは、口が広く平らになっているのが他のサイとの差異(ダジャレじゃないよ)だそうで、wide rhinoと言ったのが聞き間違えられてwhite rhinoと呼ばれるようになったのが名前の由来だとか。で、薄めの灰色のwhite rhinoに比べて色が濃いからクロサイはblack rhinoになったんだそう。より個体数の少ないクロサイにはお目にかかったことがないけれど、いつか2種のサイを見比べてみたい。イギリスだとチェスター動物園にクロサイがいるそうだ。また行きたい動物園が増えてしまった。
ちなみに、今回は時間がなくて見られなかったが、ウィップスネード動物園にはアジアゾーンにインドサイもいる。サイを適切に飼育するには広大な敷地が必要なのだそうだ。だからサイはロンドンではなくウィップスネードにいるのだ。シロサイの飼育場だけで東京ドーム2個分ほどに相当する(のん子調べ)のだから、ウィップスネード動物園がいかに広いかがお分かりいただけるだろう。
そんなだだっ広いサイエリアをぐるっと回ってライオンエリアを訪れたが、残念ながらライオンは遠目にしか見られなかった。ちなみに、ここのライオンはアフリカライオンで、ロンドン動物園のライオンはインドライオンだ。
ライオンエリアを抜け、次はチーターの飼育場へ。毎度姿を拝めなかったのだが、今回ついにまとめて3頭間近に見ることができた。この日は寒かったので団子になって寝ていた。
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もっと見たいがまもなく閉館時間だ。出口へと戻る途中でアムールトラのMironを間近に見ることができた。アムールトラは別名シベリアトラとも呼ばれているように、シベリアの寒い地域に生息するトラで、現存するトラの亜種の中で最大のトラだ。(トラの中だけでなくネコ科で最大らしい)ちなみに、ロンドン動物園にいるのは最小亜種のスマトラトラ。(ベルクマンの法則といって、ほ乳類では、同じ種であっても寒い地域に住むものほど体が大きくなる。)
さて、Mironは今年イギリス国内の別の動物園からやってきたばかりらしい。6月までウィップスネードにいた別のオスがヨーロッパ絶滅危惧種計画(繁殖プログラム)でドイツの動物園へお引越ししたのを機にこちらに引っ越してきたようだ。調べてみたところ、彼は前の動物園でも、その前の動物園でも繁殖でペアを組んだメスに致命傷を負わせてしまったらしく、年齢的にももう繁殖は難しいと判断されたのだろう。ここではひとり暮らしのようだ。
彼は子どもたちが歩く方向について歩き、興味津々でこちらの様子をうかがっている。見通しの悪い場所を好むトラをこんな間近にずっと見ていられたのは初めてかもしれない。トラのファンサービス(ではないのだろうけど)に子どもたちも大喜びだった。
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今回は時間がなくて行けなかったが、ウィップスネード動物園には立派なプレイグラウンドもあるし、有料だがアジアゾーンをぐるっと一周する蒸気機関車に乗ることもできる(車内から動物もたくさん見られる)ので、子連れで1日飽きずに遊ぶことができる。車がないと行きづらい場所だけど、ロンドン動物園よりも空いていてゆっくり見られるので、かなりおすすめである。