野に、咲く。8
「僕のお父さんはパイロット」前編
六月になり今度は父の日です。僕の父について話しておきましょう。
父は母と同じく昭和22生まれ、長崎県の離島で漁師の家に生まれた。
妹と弟がいて、僕からするとこのおばさんとおじさんには
とても可愛がってもらった。おじさんはぼくを映画に連れて行ってくれて
おばさんはよく叱ってくれた。まぁ叔父と叔母の話はまたいつか‥
父の生い立ちだが一緒にいた期間が短すぎて聞けなかったが、期間は短くても
この父は内容が濃すぎるエピソードが多い。
1970年代に起きたオイルショックで父の仕事にかなり影響があったみたいで
僕が生まれる前に無職となり都会から生まれ故郷に家族を連れて帰ってくる。
その後はほとんど仕事をせず、酒は飲むわタバコは吸うわ、遊んでばかり
あるとき僕を車に乗せ、海沿いを走行中に急停車した。
服を着たまま海に飛び込みなかなか上がってこない一時間くらい経った頃、
着ていた服にアワビやサザエなど魚介類を入れ上がってきた。
その場で火を起こし貝を焼き食べた。アワビは持っていた小刀で薄く切り
刺身で食べさせてくれた。 何も説明はなく無言。
またあるときは山道を走行中、急停車した。山道から外れ藪の中を歩いて進み
ついていけなくなった僕は山で一人になる。 二時間ほど経つと、父が現れた。
自然薯や山菜、木の実など、持てるだけ持ち、降りてきた。
その日は僕も父母姉の住むアパートへ行き、入ることができた。
父は満面の笑みで僕を見ながら自然薯をすり鉢ですりおろし、炊き立てのご飯に
乗せすすりながら食べていた。自然薯のとろろごはん、僕はこの自然薯のとろろが
どうしても食べれない、この頃から大人になった今でも苦手な食材の一つで
受け付けないのだ。
そんな無職の父は僕に手を挙げたことがない。
ないのだが‥父が人を殴るとこを、 見たことがある。
つづく
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?