愛すべきは9月の風で

身に纏う思い出は足取り軽く
冷めた空気の匂いに歓喜する

池袋の駅前パルコ交差点を道ゆけば

叶いもしない妄想なんて
手に入りそうな現実だけで

口にするのも青くさい会話が意気揚々と
後ろからついてくる

そんな9月の夜風は少し冷たくて
何故だかそれが心地良い夜だから

この夜の冷たさも
いつかは春の風に変わるから

無表情な感情は田園都市線の
アイボリックな蛍光灯を仰いでる


妄信的に誰かに縋りつけるなら
依存的に誰かにしがみつけるなら

薄暗くて何もない
六畳一間みたいな僕の心に君は居て

僕はと言えばそんな日々から
逃げ出してしまった人間だから


退廃的な悲壮感を好む日々も
最早飽き飽きして過ぎ去って

もう目の前の景色にこの意識を
乗せてしまう日々だから



そんな9月の夜風は冷たくて
何故だかそれが心地良い夜だから



この夜の冷たさも
いつかは春の風に変わるから

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