今日と明日の隙間で
仕事納めも無事に過ぎ、連休を迎えて数日をベッドで過ごした。
携帯で小説を読み、iPadで映画やドラマを見て、YouTubeを見て、気が向いたら五分だけ、寝ながらできる足痩せトレーニングをして。
2019年があと数時間で終わるのも、昼寝から覚めてぼんやり開いたインスタグラムで知った。
ツイッタラーの皆さんが一様に来年の抱負を聞いている。
YouTuberさんが今年を振り返っている。
今年はどんな年だったろう。
いいこともいやなこともたくさんあったけれど、そういったもの全て押し並べて、今までの二十数年となんら変わりがなかった気がする。
新しい出会いがあって、別れがあった。
大事にしたかったけど失ったもの、誰かに失わせたものもあった。
反省もあるけれど、それ以上に、今日までしっかりと一年を生き抜いた自分がいる。
自分という存在と過ぎ去った日々を振り返るのに、年越しはたしかにいいきっかけだけれど、ゆっくりと記憶を辿って振り返るには一年はあまりに長い。
わたしが拙い記憶から思い出す彼らは、今年の思い出にわたしを残すだろうか。
「サービス業だから、年末年始は忙しいよ」
「年越しは一緒に過ごせる?」
「ゆっくりさせて。今年最後の休みがこないだのクリスマスで、来年最初の休みは三が日過ぎてからなの」
「そう」
残念、を隠そうともせずにそれだけ答えると、彼は続けた。
「ガキ使見なきゃ。知ってるじゃん、お笑いガチ勢だから」
「去年のやつ復習してたもんね」
「そうそう。去年のネタ引っ張ってたりすんだ、覚えてるだけでも笑いが違うわけよ」
「なるほど」
言ってる間に車が止まった。
冬は比較的持ち物が多い。住宅街だから後ろがつっかえることもないが、ハザードを付けて止めてもらっているとどうしても気が急いてしまう。
「送ってくれてありがとう」
顔を上げ目が合った瞬間、唇が触れた。
「はい、どーも」
「…お仕事がんばってね」
「うん」
「今年はありがとう」
「こちらこそ。気をつけて帰ってね」
ありがとう、と残してあっさり解散した。
この年齢で年末年始なんて、所詮この程度の温度感ですよ。
今頃一緒にご飯食べてる予定だったのにな。
ふと思い出すとさびしくて、暖かい布団の中でもぞもぞと寝返りをうつ。
来年は結婚するんだ。
きっといい相手に恵まれるはずだから。
来年の抱負は、腐れかけた縁に甘えない、にしよう。
LINEが鳴る。
きっとわたしの抱負なんて新年開始5分で早々に砕けるだろうが、それもまたよし。
結局は、今日も明日も変わらないのだ。
来年に残した課題は山積みだ。
ちょっとした目標も、仕事関係も、増やしに増やした体重も、人間関係も。
365日を積み重ねて、来年も「いつもと変わらない一年だった」とだけ言えたら満点だ。