故郷を想う。
緊急事態宣言から1ヶ月ほどが経った。
都会の真ん中でワインをひとりで開けながら想う。
数千年、もしくは数万年変わらない故郷の山陵。
空の青と、山の緑のくっきりとした境目。
爽やかな風の流れ、鳥の声。あまりにも眩しい太陽の色。
毎年5月の連休は実家に帰り夏野菜の植え付けを手伝うのが日課であった。
今年は帰ることができない。
今夏、還暦を迎えた父母のお祝いをしようと考えていた。
それも叶うだろうか。
60の齢はこのご時世、人生の折り返しを少々過ぎたばかり。
普段から健康にはそれなりに気遣う両親である、大丈夫。
大丈夫。
むしろ心配をしているのは両親のほうであろう。
都会の真ん中で、いま医療機関で働く娘であること。
心配をかけてしまって申し訳ないと、思う。
しかし、やはり病を患うひとのために此処に居たい。
反面で、やはりあの故郷の風を頬に受けたい。
どうか、生きて。
生きて、また会いましょう。