恋愛小説。
そういうことになるとは思っていなかった。
今でもそう思っている。
彼が、ーたとえそれが一夜の出来事であってもー 私をそういう対象に見るとは思ってもいなかったのだ。
いま彼は何を想っているのだろうか。
私を憎んでいるだろうか?自分を責めているのだろうか?
いっそ、彼がどう想っていても構わないと思う。
報われないなら、いっそのこと、せめて、傷をつけて、痕を遺したい。
それは春の出来事だった。
偶然帰り際に廊下で会って、
「飲みに行こうか」
それまでにも複数人で飲みに行くことなど何度も会った。
だからなんとも思わなかった。
ほどよく酔いのまわった頃。
「先生の家に行ってみたいな」
彼に興味があったのではない。ただ、医師としての彼に興味があっただけ。
男の人の部屋に行くことに抵抗はそんなになかった。
大学のとき一人暮らしをしていた私は、男友達の家に行くことも稀ではなかった。
軽率だった、と、今では思っている。
ソファに座った身体をとても自然に横たえられる。
仕事では決して有り得ない距離。
心拍数が上がるのを、酔った頭でも感じた。
そのまま先生は私を抱きしめていた。
じっと巣から出てくるのを待つように、私が顔を上げるまで、ずっと。
***あとがき***
土曜日の晩。ワイン片手に酔いに任せてキーボードを叩いて、投稿。
半分経験談、あとの半分は虚構です。
どうしようかな。5つのスキがつくようなら次を投稿いたしましょうか。
お目汚し失礼いたしました。
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