藤森哲也五段【将棋のこと】
私は将棋を観るのが好きだ。
そして山崎八段ファンです。
先週のアベマトーナメントのドラフト会議、楽しかったです。まさかの初手が澤田七段とは思いませんでしたし、森門下の三先生は棋風をそのままに周りを翻弄することに夢中で、誰一人として門下チームを作らない。それでも初出場の千田七段は予想以上のエンターティナーぶりを発揮し、山崎八段も予想に反してガチなチーム構成で期待が膨らむ。全体的な顔ぶれも変わって大会の本編が楽しみでたまりません。
そうなるとそろそろ実況席も交代してみてはと思うのですが、こちらは後任候補が選出できない。そもそも「実況」という言葉を棋界に持ち込んで敷居を下げることに成功した藤森哲也五段と、決めポーズまで持ち込んでは益々馴染み易いものへと企む戸辺七段の布陣はなかなかに強靭。個人的には金井六段と井出五段の二人を推したいのですが、退陣を迫るにはあと一歩、いや桂・香、一枚くらいは欲しいところかもしれません。
ドラフトではめでたくも戸辺七段が二回目の選出を受け顔をほころばせていました。そうなると困るのが選ばれなかった藤森五段。どんな表情をしても不自然に見えやしないかと私なら不安になってしまいます。藤森五段が不自然に見えた訳ではないんです。素直に笑顔で褒め称えていたと思います。でも悔しくはあると思うんです。その気持ちを隠し過ぎては不自然、出し過ぎても危険と難しい振る舞いを迫られているなぁと観ていました。
選ばれても不思議ではない棋士なんですけどね。元気で社交的でメディア慣れも抜群だからこの企画には向いていると思います。将棋だってフィッシャー有利と言われる振り飛車穴熊を得意にしている。一昨年は勝ち残ってのエントリーチーム入り、昨年もスタジオ対局まで勝ち上がってきていたのですからフィッシャーでの実績も証明済みのはずです。ご本人にも自負があるのではないでしょうか。だから私個人の願望なのですが、最後に言ってやったらよかったのにと観ていたんです。「皆さん、僕のことを忘れてませんか?」とか「今までの実況席での功績に気を使ってもらいたいです。」とか。トップ棋士の先生方に対して失礼なおふざけかとも思いますが、藤森五段のキャラクターなら許されそうな気がします。絶えず明るく、そしてノリよく、棋界のイメージチェンジに貢献してきた功労者なんですから。でも、この願望は藤森五段に対して私が失礼なのでしょうね。おそらくは棋士としての藤森五段がこんな自虐を許さなかったのだと思います。「エントリートーナメントを僕も頑張ります。がんばりまーす。」と言ったのが最後の締め言葉。さほどお道化ず重くはならない程度の真剣な宣言に、内に秘めた悔しさと過去二年でつけた自信を感じて「頑張れ、哲っちゃん!」と声を出してしまいました。
私は千駄ヶ谷の将棋会館に一度しか行ったことがありません。会館に行けば棋士にも出会えるものかと期待しましたが会えませんでした。ただその時、唯一お見掛けできたのが藤森五段でした。2015年の春だったと思います。何故はっきり憶えているかというと藤森五段が関係者と思われる方と順位戦の話をしていたのが聞こえてきたんです、「惜しかったねぇ…」って。その年の順位戦、C級2組の藤森五段は8勝2敗と好成績ながら順位の差で昇級を逃していました。だから憶えているのですが、その後の順位戦はなかなか厳しいもので指し分け以下の星が続いています。普及活動ではA級の活躍の藤森五段。でも、それだけでは少し寂しい… 色んな媒体での活動が増えた将棋界において無くてはならない存在ではありますが、プレーヤーとしての存在感をも期待しているファンは沢山います。勿論、私もその中の一人ですから、最後はこんな締め言葉で。
「頑張れ、哲っちゃん!」