糸谷哲郎八段【将棋のこと】
私は将棋を観るのが好きだ。
そして山崎八段ファンです。
先ほど朝日杯で山崎八段が負けました。もうヤダ。何も面白くない。
休みの日に山崎八段に負けられるのは困る。本当に色々と調子が狂ってしまうんです… そんな熱狂的ファンのような言動をしながら実は対局をマメにチェックするタイプではない私。今日だってたまたまスマホを触っていたら「えっ、朝日杯やってる!」と気が付いて「しかも、山ちゃん!」と慌てて観始めた。盤面は既に終盤、そして劣勢… そんな自分はさておいて山崎八段の投了姿に一局全てを見届けたファンの如く凄く落ち込んだりしています。だいたい何で初戦から菅井八段なの、強過ぎるでしょと組合せに対して八つ当たりしてみたりして…
最近、私が見始めた頃に第一線で活躍していた先生方の苦戦が続いています。自然の摂理と言えばそうなのですが単純に寂しい。順位戦もそろそろ佳境。佐藤会長はA級から陥落だし羽生先生や郷田先生もB1で苦戦中。羽生世代が厳しいのはさすがにやむ得ないのかもしれませんが、天彦先生や糸谷哲郎八段までもが厳しい状況なのはピンとこない。とはいえ他の誰が降級候補なのかと聞かれたら強者揃いで誰もいない。下の若手からの突き上げに伴う世代交代で各クラスの激しさが増して混沌としている気がします。私の中では未だ「怪物くん」のイメージが残っていた糸谷八段も気が付けが30代半ば。順位こそ2位なので今期に限って運悪く星が集まらなかった順位戦と思いたいのですがどうなんでしょう。失礼ながら本音を言えば、以前のような怪物的な勢いがやや感じられなくなったという感想も持っており、なんとか踏ん張ってもらいたいものなのですが…
糸谷八段には活躍してもらわないと困ります。糸谷将棋が好き勝手に動き回って豪快に相手を蹴散らす様を見ると何故か山崎将棋だってまだまだ勝てると期待を持ててしまうんです。逆に元気を感じられないと山崎将棋に対しても不安になってしまう私。正直、○○将棋なんて区別できるほどの棋力は私にはありません。糸谷八段と山崎八段の将棋自体、共に力戦調なだけで全くの別物なんだとも思います。でも、山崎将棋を凄く認めている糸谷八段の発言を沢山聞いてきました。「変態将棋」や「真似をしてはいけない将棋」と逆説的な褒められ方ばかりされる山崎将棋を「芸術だ」「元気が出る」「上手く終息した時には本当に最初から最後まで理想的な将棋なんです」といつも肯定的な表現で褒め称えてくれた糸谷八段。自身が竜王のタイトルを獲得して先にA級に上がった後でも尚、兄弟子への評価と尊敬は変わらぬままでいてくれた。そんな糸谷八段が別物とはいえ個性溢れる力将棋で怪物ぶりを発揮してくれると、その将棋の先にあるのか以前はあったのか、大きく捉えて同じ枠の中にあるのかは判りませんが、どこかにはあるであろう山崎将棋にも同じ力を感じることが出来て、嬉しくなっては希望を持ち続けることが出来るという私の勝手な論理なのです。
奨励会三段で出場した新人王戦の途中で四段に昇段。そのままの勢いで優勝した祝賀会で「将棋界は斜陽産業だから僕たちの世代で立て直さなくてはいけない」と糸谷八段がスピーチしたのは有名な話。今考えてもというか誰が考えても、多くの関係者が集う中で10代の新人がこれを言ってのけたのですから、その胆力たるや驚愕に値します。事実、その宣言どおり普及に活性化にと活動の幅を広げながらも同時並行して好成績を積み重ね、順当にトップ棋士まで上り詰めてしまうのですから敬服にも値します。先日の対談では「今年はインプットに努めたい」と話した糸谷八段。将棋に活動にと一心不乱に走り続けてきたことをふと自覚された時期なのかもしれません。新たなインプットが完了したら、今度は「怪物さん」となって再び豪胆に暴れ回る姿を見たいと切に願います。その時には共に暴れ回る力戦の雄であってほしいと兄弟子の山崎八段にも願ってしまうのです。
なんだか山崎八段の為に糸谷八段には頑張ってもらいたいみたいな文になってしまった。糸谷八段が頑張らなければ山崎八段も弱くなるとも読める。そんなつもりはないのに両先生に対して大変失礼な文章かもしれない…
山崎八段が図抜けて好きなだけで糸谷八段のこともちゃんとファンですし、両先生を心から強いと信じているのにどうしてこんな文章になってしまったのだろう…
やっぱり山ちゃんが負けたせいだ。調子が狂った。
そしてダニーを思い出して、なんとかして欲しいと思ってしまった。
全ては二人の仲が良過ぎるせいだ。二人のやりとりばかり見過ぎたせいだ。
結局のところ私が、この仲睦まじい兄弟弟子のことが好き過ぎて共にずっと強くいてほしいと願っている一般的なファンそのものというだけの話です。