黒沢怜生六段【将棋のこと】
私は将棋を観るのが好きだ。
そして山崎八段ファンです。
毎週土曜はアベマトーナメントを楽しみにしていたのに終わってしまった。
本日土曜は竜王戦第一局の二日目。これはこれでもちろん楽しみなのだが、山崎ファンとしては、竜王戦も先日の挑決で終わってしまった。久々に挑む挑戦者姿が観たかったです…。
それはそうとして、今年のアベマトーナメントでは観たかった棋士がドラフトで戻ってきました。さすがは優秀な弟弟子こと糸谷八段が指名して、そのチームに入った黒沢怜生六段。
もう一度、どうしてもフィッシャールールで観たかったんです。
黒沢六段に目を奪われたのは2年前。
アベマ初の団体戦で、チーム広瀬に指名された黒沢六段。
団体戦の大事な初戦、しかも時間の無いフィッシャールール、対局者が初手を指して、すぐさま二手目と思ったその矢先にチョンチョンと自陣の駒を
のんびり触って整えるだけでの10秒間無駄遣い。
そのうえ、角道開ける前に雰囲気出しながら端歩を触るフェイント付き。
しびれる、しびれました。そして、一瞬で心を持っていかれました。
しかも、それを増田康宏六段相手にやるのがいい。
増田六段のことも私は好きです。今でこそフィッシャーの達人といった風格と強さの増田六段ですが、この頃はまだ、永瀬王座や藤井五冠(当時の段位とは違います、ゴメンナサイ)との最強チームで、やらねばならないと意気込んでいる若武者のように見えました。そんな相手の出鼻をスッといなすような、悪く言えばおちょくるようにチョンチョン、チョンチョンと駒を触るだけで時間を捨てる。なんなら黒沢六段と増田六段はプロ入り同期です。
あの10秒間を、私は凄く永く感じましたし、そういう間柄の増田六段はどのように感じたのでしょう。
私は番外戦術のあった時代の将棋を知りません。盤上だけで勝負する今の将棋が好きです。しかし、令和の時代にあのような番外戦術もどきを、はっきりと解り易く視聴者に見える形で提供した黒沢六段には感服しました。
広瀬八段がリーダーとなり、勝負事の好きな棋士を集めて「大三元」というチーム名をつけた。フィッシャールールで10秒もの時間を捨てるというのは博打です。でも、その博打こそ我がチームのカラーなんですと挨拶代わりに度初っ端から披露する。
勝負師チームの先鋒として、そして場を盛り上げるエンターティナーとして、昔は居た真剣師と言われる人たちは、こんな感じの雰囲気を漂わしたのではと惹き込まれてしまいました。黒沢六段の少し茶目っ気のある見た目から、いたずらのようにも見えますが、タイトル経験者が3人も注目する中で、飄々とやってのける肝の据わり方、実はこっそり主役を奪わんと言っているようで恐れ入りました。
今大会は飄々としたくても、火の上を歩かされたり滝の中に突っ込まれたりとチーム動画から、それどころではなかった黒沢六段。
最後もチーム大優勢で迎えた決め所の勝負で木村八段に大逆転を喰らい、その流れのままチーム自体も大逆転負け。流れを作った責任を感じているようで、エンディングでもいつもの笑顔が出ず俯き加減だった黒沢六段。
根は当然、真面目な棋士なんだと思います。
でも、私が好きな黒沢六段の魅力は、いつでも飄々としている胆力と、時にしれーと大仕事を成し遂げる意外性です。思えばプロ入りも最終日にいきなり現れたような印象での昇段でしたし、2017年の棋王戦でもあれよあれよと挑決まで勝ち上がってきて、あと一歩の所まで永瀬軍曹を苦しめていた。
不意に素知らぬ顔で現れては確かな実力を見せつけてくる、そんな黒沢六段をこれからも応援しています。
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