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深浦康市九段【将棋のこと】

私は将棋を観るのが好きだ。
観始めたのは、10年ほど前。
そして山崎八段ファンです。

山崎八段が脚光を浴びたのは6年前の電王戦。
他にも結構浴びてますが、大きさで言えばこれかと思います。
コンピューターソフト相手に二日制で、第1局だか2局だか、1日目だか2日目かも忘れましたが、ある日のメインステージで大盤解説していたのが、深浦九段でした。

すでに人間劣勢で中継先に繋いでみても、立ち並ぶ複数のソフトの評価は、一致して人間のマイナス。その場に応援で来ていた棋士達も、皆負け筋しか見えずお通夜のよう。
「どうにもならない・・・」
「指す手がない・・・」
「こうなっては、勝ちようがない・・・」
局面を聞かれた同門の若手が、お手上げ状態と口を揃える。
冷静で正しい意見なのは解るのですが、少々割り切りが過ぎると、いたたまれなくなりました。
”まだまだ時間あるのに、このあと、どうやって楽しむの?”
そんなことを思った記憶があります。

そんな暗く冷め切った雰囲気を引き取った中継元の深浦九段。
メインステージに中継が戻った矢先、
「『ないない』って、無いことばかりを言ってても仕方がない。無いんだとしても、なんとか勝てる筋を探していかないと。」
記憶が曖昧ではありますが、大盤の方へ顔を向けつつ、こんなニュアンスのことを言ったと覚えています。静かな口調でしたが、少し怒っているようにすら見えたのは、私の覚え違いでしょうか。
大勢の観客が見つめる前で、うんうんと唸りながら大盤を睨み思案する深浦九段。無理筋だろうが、人間の勝ち筋を示そうと必死な深浦九段。皆が匙を投げた局面で孤軍奮闘する深浦九段。
”そうそう、そう簡単には割り切りってほしくないんですよ。”
私のような視聴者に寄り添う形で、耳を真っ赤にしながらひたすら考え続けてくれる深浦九段。

深浦先生のこういうところ、凄い好きです。
ひたむきで必死で、懸命に奮戦してくれる。
「諦めない」とは、少し違う。
「諦めてはいけない」って姿に見える。
「諦めるわけにはいかない!」、「諦めてなるものかっ!」って、
諦めそうになる自分を絶対に許さない姿。

自身の対局でも、気持ちが出て動いてしまう先生。
ふいにうな垂れて、はっと顔を上げて、自分の頬を2回張る。
「ペシ、ペシッ」
時々見かける深浦先生の代名詞。
”今、諦めた?” ”一瞬、諦めましたよねぇ?”
そう思うけど、思った時には顔を上げてて、耳を真っ赤にしてウンウン唸ってる。盤を睨んで、頭を振って、前傾姿勢で、また唸る。
過酷な世界で生きてきて、結果を残した先生の理由と凄みを感じる姿。

深浦九段のあだ名といえば「地球代表」
将棋星人の如きあの天才との対戦成績が良いことだけが理由ではない気がします。少なくとも私の中では、それだけではない。
将棋星人が攻めて来たとして、誰なら勝てるという前に、誰なら託せる、託してみたくなるって感情が、深浦九段を地球代表にまで押し上げる。
そのうえ勝ってくれそうなんだから、こんなに頼れる代表はいない。

負けそうな深浦先生は見たくない。
でも、「ペシ、ペシッ」やってる深浦先生は、
申し訳ないが、ちょっだけ見たい。





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