のこすはなし【日々のこと】

居酒屋でちょっとしたお通しが出たとします。
私は食べてしまいますが、食べない人もいます。
食べたい物を頼むのだから、少しであっても要らない物でお腹を満たしたくはないようです。この考えを私は悪いとは思いません。当然の希望だと思います。でも私は食べてしまいます。なんなら、食べない人の分も食べてしまいたいくらい。勿体ないとは少し違います。フードロス問題が・・・という大層なこともよく解りません。セコイと思われても困るので、実際には自分のお通ししか食べませんが…

なんか嫌なんです。苦手というか、残すと小さなストレスも残る。
ひょっとすると他の人よりも皿が空になるのを見るのが好きなのかもしれません。目の前の料理がちゃんと食べて消えていくことが好きなんです。スッキリするというか極端に言えば快感というか。その裏返しで残すことがとても嫌なのかもしれません…

私の実家、家族は私以外は食べない派の人達です。お通しくらいは食べると思いますが、思考的には無理して食べなくてよい派です。そして、お正月のような行事ごとは豪勢に食べたい派。沢山準備して好きなだけ食べて、後は残せる人達です。場合によっては捨てれる人達です。くり返しになりますが私はこの考えを悪いとは思いません。むしろ一般的で、お正月気分とはそういうものなのかもしれません。だから口には出しません。口は皆の残した料理を入れるだけで手一杯ですから。手も料理を口に運ぶだけで手一杯。そしてお腹はいっぱいいっぱいです。

家族には楽しい食卓ですが、私には合わない。
家族は無理な物だけでなく、そもそもあまり食べない。食が細いんです。
私だけが案外よく食べれたので、若い頃は片っ端から片付けてました。

「たくさん、食べたなぁー。美味しかったか？」
「うん、すごく美味しかった。」

嘘です。
もっと美味しく食べたかったが食卓に余裕のなく置かれた料理を見た時点で諦めた。私が食べなきゃ誰が食べる。私が満腹ではなく満足で食事を終えたらメチャクチャ残る。たぶん皆は構わない。だから無理して食べてる私が悪い、そんなことは解ってます。食べてしまうから次も沢山準備するんでしょ、それも解ってる。でも残せなかった。全部は無理でも頑張ってしまう。やっぱり残ってるのを見るのがただ単純に嫌なんです。そして、物凄いストレスだったんです。

そんなお正月を二十年近く過ごした。三日もあるので腹もストレスもパンパン。空腹を忘れた二日目以降は苦行です。食でこれですから正直言って他ごとも合わない。基本は全て家族の気遣いなんです。良かれと思ってしてくれているのは痛いほど解る。他の人なら喜ぶことを同じく私にもしてくれているだけ。それがどうしても私には合わない。善意なのでストレスの吐け口がない。それが一番のストレスとなって私をまた襲ってくる…

もう若くないので全然食べれません。実家ではストレスと共に残してます。
食卓の様子も年々変わってきましたが根本的には変わらない。皆にとってよいお正月をしているのだから変える必要がないのです。だから今年、私が帰るのを止めました。二十年分のストレスが溜まってしまって、もうお通し程度のストレスですら溢れてこぼしてしまう…

そして初めて、妻と二人だけのお正月を過ごした。
贅沢こそしますが食べれるだけの料理を小さな食卓に余裕をあけて載せる。
豪華でも賑やかでもないけれど、彩りよく品よく妻が盛ってくれている。
ほどよく食べているのでちゃんと空腹になる。だから次の食事も美味しい。
私がずっと望んでいた、穏やかで静かなお正月。

例年のストレスはありません。
ただ、家族に対しての胸の痛みが少しあるのでnoteに書いて残します。