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ねむい:2025年1月ハードオフパトロール記

暇を持て余し気味の正月休みが終わり、入ってくる仕事の流れも通常のペースを取り戻してきた。年末年始は仕事が少なかったものだから自分も不本意ながらぼんやりと過ごしていたが、休みが明けて仕事の依頼が再び舞い込み始め、がってんだ、待ってました!とパソコンに向かうも、意気込みとは裏腹に脳がまったくついてこない。作業を始めようとした途端に睡魔が襲ってくるのである。こういう場合、眠気に対抗しようとしても無駄なことはわかっているので、一旦デスクに突っ伏して居眠りをする。たいてい30分以内に目が覚めて、ぼんやりした頭にカフェインを流し込み、どうにか立て直して作業を再開する。

40代までは、こういう睡魔に襲われるのは午後のひとときだけだったのが、ここ最近は午前中から眠くなることもしょっちゅうある。1日のうちに2回居眠りすることもざらではあったが、この年明けはとうとう、居眠り回数が3回になってしまった。1回30分として、1時間半をデスクに突っ伏しながら過ごしていることになるし、目覚めてからもしばらくは寝ぼけ頭で使い物にならない。こうして日中に怠けてできなかった分は夜遅くに挽回するしかない。いきおい就寝直前まで作業していることが増え、睡眠時間は削られ、翌日はまた眠くて使い物にならず……の悪循環を繰り返すことになる。要は気力体力が不足しているのだ。一旦緩んでしまうと、通常モードに復帰するまでに時間を要する。昨日・今日と、ようやく普通に仕事ができるようになってきたかな、という感じである。もう1月も半ばを過ぎてしまった。だからあまり休みたくないのだ。もう来年から来なくていい、正月。

このお寺に初詣に行ったら、お茶とバウムクーヘンがもらえたのは良い思い出

コロナ禍を境に、毎年行かせてもらっていたアメリカ出張がなくなってしまい、ひそかな楽しみだったカリフォルニア激安古レコード漁りも今や遠い過去の話。近年はもっぱら、ハードオフが掘り出し物レコードのパトロール現場である。今年に入ってすでに2回ハードオフパトロールを行っている。新年1回目の捜索では、自分が20年以上前に欲しくてたまらなかったレコードが出てきた。当時、新宿東口のとある中古レコード店の壁に2万円近くの値札が付いて飾られていて、買おうかどうしようか1時間迷ったあげくに結局買わなかった、という思い出がある一枚。結局そのアルバムは数年後にCD化され、あのとき大枚はたいて買わなくてよかった、となったのだが、そのレコードが当時の10分の1ぐらいの値段でハードオフにあったのだ。そのときは、もうCD持ってるからいいよね、と回収を見送ったのだが、何日か経つと後悔が始まった。なぜ、あのとき買わなかったんだ。CDを持ってるからってアナログを買ってはいけない法律はない。いや、あれはアナログでこそ聴きたかった。やっぱり、あのレコードが欲しい……そうだ、きっと今ならまだ遅くはないはず!と、朝の通院ついでにハードオフのレコード売り場に再び姿を現した自分だったのだが、残念、しっかり売れてしまっていた。大都会から遠く離れた現場であっても、そんなに甘い世界ではないのである。中古レコードは一期一会。こんな後悔を味わったことも一度や二度ではない。

失望のあまりそのまま帰ろうとしたが、いや、タダで転んでなるものか、とレコード掘りを敢行、結局手に入れたのはベンチャーズのレコードだった。ベンチャーズ?おじいさんが昔好きだった、テケテケギターで歌謡曲みたいなのやるバンドね、と軽視するなかれ。ビートルズより一年早く来日公演を行い、圧倒的な演奏力で聴衆をノックアウト、日本にロックの夜明けをもたらした重要なグループである。ビートルズも彼らのギターサウンドをチェックしていたという。それに自分はまだおじいさんではない。購入した1965年の「Knock Me Out」は、歴史的名曲「10番街の殺人」を含む代表作。自分が買ったレコードは、その当時に日本で出た赤いカラーレコード、いわゆる「赤盤」で、日本語ライナーノーツも当時の雰囲気をそのまま伝えてくれる。しつこいようだが、65年当時自分はまだ生まれていない。大好きな音楽の半分以上は追体験である。とにかくこれはこれで、いい買い物だった。

このジャケットもいかにも60年代で結構好き

さて、その買い逃して後悔したレコードとは、RCサクセションの「HARD FOLK SUCCESSION」という編集盤。初期の彼らはシングルでしか発表していないアルバム未収録曲が多く、シングルを手に入れようとすれば一枚数万円はするであろうところ、この編集盤にはそういう初期RCのレア曲が全部もれなく収録されていたのだ。RCサクセションの初期というと、もしかすると「トランジスタ・ラジオ」あたりを思い浮かべる人もいるかもしれないが、もっと初期、20歳そこそこの忌野清志郎と林小和生、そしてチャボこと仲井戸麗市よりも前に在籍した初代ギタリスト、破廉ケンチの3人組だった時代である。人気者になってからのRCはローリング・ストーンズっぽいイメージを打ち出していたが、初期の彼らは3人でヴォーカルを分け合い、アコースティックギターとウッドベースを叩き付けるように鳴らして叫ぶ、尖りまくったトリオだった。ストーンズというよりは、当時の彼らの演奏を体験した人たちは日本のビートルズだ!と思ったらしい。

自分はどの時期のRCも好きだけど、初期のRCサクセションは特別。この時期の曲に「ねむい」というのがあって、年明けの眠くてたまらない時期にはこの曲のことをよく思い出していた。くだんの編集盤ではなく2作目のオリジナルアルバム「楽しい夕に」に収録されていて、長年親しんできた。ひねくれたコード進行にシニカルな歌詞、終始眠たそうな清志郎の歌に年代物の戦前ポップスみたいなコーラスが入る、初期ならではの作りで、やはりビートルズ的な世界なのである。この大好きな「ねむい」を頭の中で再生しながら、ぼくに必要な眠りを眠らせておくれ、ぼくは疲れてるのさ、と居眠りばかりしていた2025年1月の前半であった。


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