新任教員の採点ミス―聖光学院中学・高等学校に着任した時に驚かされたこと
聖光学院中学・高等学校に着任したのは、昭和時代が終焉を迎えようとしていた1988(昭和63)年のことである。
着任して最初に実施した1学期の中間試験で、答案を返却して解答解説が終わった途端、中学3年生の生徒が教壇に殺到した。
「先生、採点ミスです!」
先頭にいた生徒が口にしたのは、新任教員の私の気持ちを激しく動揺させる言葉だった。
変な汗が体中から出てくるのを感じながら、差し出された答案を受け取ろうとした時にその生徒が次に口にした言葉で、さらに私は動揺した。
「先生、これ、マルじゃありません。バツだと思います!」
教壇に殺到した生徒たちのほとんどが、同じ採点ミスを申告してきたのである。
不正解のはずの解答に私がマルをつけてしまい、本来よりも良い点数を付けられていることに、中学3年生の生徒たちが一斉に「抗議」してきたのだ。
「なんという学校に赴任してしまったのか…」
教員のミスで不正解がマルになっていたり、合計点が10点多かったりした場合、「ラッキー!」というのが、当時進学実績において聖光学院よりも上を行っていた県立高校の卒業生だった私の「常識」だった。
そんな私の「常識」をあざ笑い、採点ミスという失態以上に、教師という私の立場を激しく動揺させたその時の中学生たちは、聖光学院第29期生である。
その後、高校を卒業した彼らは、当時としては突出した大学進学実績を残すことになる。
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