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ワクワクする教員 vs シニカルな教員:児童生徒の未来を拓くための学校文化を考える

〜夜道でスマホのChatGPTにつぶやいた独り言から生まれた随想〜


1. GPT-Proの登場が投げかける問い

2024年12月、ChatGPTのプロ版「GPT-Pro」が発表された。このモデルは、既存のAIの性能を大きく凌駕し、複雑な数学問題や高度な解析も即座に解決する能力を備えていると言われている。その進化のスピードに、多くの人が驚き、あるいは恐れを抱いている。

この技術革新は、私たち教育関係者にも大きな問いを投げかける。

GPT-Proの登場が示すのは、AIが教育における役割を再定義する瞬間である。このモデルは、例えば高度な微分方程式を解く数学的能力や、複数の言語を瞬時に翻訳する力を持ち、学習者が難解な問題に直面した際の「即時解決者」として機能する。

また、個別最適化学習を支援する実例として、GPT-Proを活用した教育アプリが、生徒の解答傾向をリアルタイムで分析し、弱点に応じたカスタマイズドリルを生成する実験が行われている。このように、従来のAIツールを大きく凌駕する能力を備えたGPT-Proは、学びのあり方を根本から変える可能性を秘めている。


2. ワクワクするタイプと懐疑的なタイプ

こうした技術革新に対する教育関係者の反応は、大きく二つに分けられるように思う。

一つは、この進化を歓迎し、未来への可能性にワクワクするタイプだ。このグループは、AIの力を借りて教育をアップデートし、学びの在り方を根本から変えられると考える。生成AIを使えば、生徒一人ひとりの興味や関心に合わせた個別最適化された学習が可能となるし、教員の負担を減らしながら、より豊かな指導が実現するかもしれない。

一方で、AIの進化を冷静、あるいは懐疑的に見つめるタイプもいる。AIに頼ることが教育の本質を損なうのではないかという懸念や、AIが正確性や公平性を欠く可能性への警戒感がここに含まれる。このグループの視点には、一理ある。

教育はただ効率的であればいいわけではなく、感性や倫理、社会性を育む場でもある。この点において、AIが果たせる役割はまだ限定的だ。


3. 教師の「ワクワクするメンタリティ」の重要性

しかし、教育という文脈においては、「ワクワクする」タイプのメンタリティがむしろ望ましいのではないだろうか。

そもそも教師とは、児童生徒の「できないこと」ではなく、「できること」や「これからできるようになること」に焦点を当てる存在であるべきだ。どんなに些細な成長でも見逃さず、それに期待し、ワクワクしながら励ます――こうした姿勢が教師の基本的な役割だとすれば、新しいイノベーションに対しても「ワクワク成分」が多い文化が学校のデフォルトであるべきだろう。

もちろん、慎重さやリスク管理も重要だ。しかし、過度に「できないこと」ばかりに目を向けてしまえば、期待感が萎縮し、子どもたちの成長の芽を摘むことにもつながりかねない。

教育現場には「この先、何ができるようになるのだろう?」「これを使えば何ができるだろう?」という発想をベースに、試行錯誤しながら未来を拓いていく柔軟性が必要だ。


4. 過去のイノベーションが教えること

技術の進化を健全なものにしてきた歴史がある。たとえば、かつてはパソコンやインターネットの導入も「教育現場では早すぎる」「混乱を招く」と言われた時代があった。

しかし、その中で「これを使えば子どもたちにどんな学びを提供できるか」を考えた教師たちが、インターネットを使った調べ学習や、デジタルツールを活用した共同作業といった新しい学びの形を切り拓いてきた。こうした教師たちのワクワクするマインドセットが、今では当たり前となった教育手法を生み出してきたのである。


5. 職員室の「溝」をどう解消するか

私はこの二つのタイプのバランスが、教育の未来を左右する大きな課題だと感じている。特に、22世紀を生きる子どもたちの教育を担う私たちが、どちらかに偏ることなく、新しい技術の可能性とリスクを両方とも見据える必要がある。

しかし、こうした現実を前にしたとき、職員室や教員コミュニティの中では、「新しい技術にワクワクする人」と「その技術を懐疑的に見る人」の溝が埋まらないことがしばしばある。時には、その溝が不信感や対立を生み出すことさえある。

どうすれば、職員室や教員コミュニティにおいて、ワクワクしながら前に進む人たちが、そのエネルギーを妨げられることなく活動できる環境を作り出せるのだろうか。

そして同時に、慎重さを持つ教師たちにも「ワクワク成分」を少しずつ共有してもらうにはどうすればよいのだろうか。


6. 学校文化を「ワクワク」で満たすために

その答えは、職員室や学校文化の在り方にあるのかもしれない。

教師がイノベーションに対して期待し、可能性を楽しむ姿勢を子どもたちに見せることで、学校全体が「できること」に目を向ける空間となる。そしてこの文化が広がれば、新しい技術を歓迎し、未来の可能性に向けてワクワクできる教育現場が実現するのではないだろうか。


結び

GPT-Proという新たな技術の衝撃を受け止めながら、私たちはどのようにして教育をアップデートしていくべきだろうか。その答えを見つけるのは、今この瞬間、教育に関わるすべての人たちに課された大きな使命なのかもしれない。

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