⭐️大人のピアノとの向き合い方①〜とっておきの1曲を時間をかけて仕上げる
まず、私の大好きな指揮者大友直人氏の著者
「クラシックへの挑戦状」からの一節を紹介したい。
〜最近私が大切にしているキーワードに、「手間暇かける」というものがあります。今、テクノロジーの進歩により、世の中のあらゆることが簡易化されています。ボタンを押すだけで多くのことがすむ時代です。
音楽にはいろいろなジャンルがあって、私はどれも好きなのですが、なかでもクラシックの魅力をあげるとすれば、まず一つは普遍的な価値を共有できるということ。そしてもう一つは、手間暇かけるという価値観を再認識できるということだと思います。(p.166)〜
子どものレッスンの場合、複数のテキストをスピーディーに進めることが多く、なかなか一つの曲に時間をかける余裕がない訳だが、
趣味で楽しんでいる大人の場合、1曲にかける時間は十分にあり、それはある意味「贅沢な音楽との向き合い方が出来る」という事なのである。
大友氏が言うように、現代はテクノロジーの進歩によりスピードの時代になった。
私自身も、以前は欲しい本があったら本屋を数件廻ったり、注文後1週間待って本屋に取りに行ったりしていた。それが今は家にいながら翌日には届いてしまう時代になった。知りたい情報だって
検索すれば一瞬で出てくる。
そんな時代だからこそ、時間をかけて創り上げる素晴らしさというものは、逆に贅沢なものだと言えるのではないだろうか。
自分だけのとっておきの1曲を選び、時間をかけ、まるで上質なワインのように熟成させて
その世界に浸っていく。私はその経過を楽しむのが好きだ。だからこそ、こんなに長い間ピアノと付き合ってこれたのだろう。生徒さんにも常々手間暇かけることの素晴らしさを知って欲しいと願っている。
「今の私はコレだ。この曲でいこう!」
そう思える1曲と出会い、何ヶ月もかけて丁寧に譜読みをし、それを仕上げる。
〝今の自分にしか弾けないスペシャルな1曲“
の誕生である。
そして…発表の瞬間。
それは、今を生きる大人にとって
そう簡単には手に入れることの出来ない
輝やける瞬間✨と
言えるのではないだろうか。