透明蝉の鳴くコロニー《推理編》
透明蝉の鳴くコロニー《推理編》
トウメイゼミノナクコロニー《オシコトワリヘン》
非おむろ
雨上がりの朝(あした)。07:45。皆、呆然と立ち尽くしていた。
不時着した力〆さえ、のろのろと立った後、ぼそりと、
「言い忘れたが僕(やつがれ)は二十二歳である……。」
と呟き、泥も払わず血も拭わずに呆然と立ち尽くしていた。
オイラは、状況を整理した。
オイラは黄罠欄(こう わならん)。二十九歳、男、身長120cm、黒髪モヒカン。普段はフォークリフトを操縦して生計を立てている。
パルマコン人権(パルマコ ンじんけん)は美女。一時期スタンガンの密造で襤褸儲けをした、パルマコ家の末裔で、今は中華料理屋の非正規で糊口をしのいでいる。二十一歳、身長は180cm。厄介な色の腕時計、パーカー、ロングスカートが瀟洒だ。
女将の趙俟代(ちょう まてよ)は五十八歳の女性。身長220cmの女性で、自作の柔道着らしきものを着ている。帯の代わりに鎖を巻いており、左脚の裾に若干、返り血のようなものが付着している。
金搬質(きむ ぱんち)は溌剌とした美少女。亜麻色のポニーテールが可憐だ。私立短大の人間生活学科に所属、身長160cmの十八歳。この温泉旅館〝寅婆湯(とらばーゆ)〟のすぐ近くのガソリンスタンドでアルバイトをしており、この旅館にはよく泊まるらしい。なお、ガソリンスタンドと温泉旅館の位置関係は頁の最上部の図の通りである。こんな図なら、無い方がよい。頭おかしいんか。
筋肉質の男性の田中太郎(でんちゅう ふとお)は、半導体を転売する会社の専務を自称。身長は140cm。四十二歳、熊の生まれ変わりと自己申告しており、毛深くない。全裸であった為、スタンガンで気絶させ、ガソリンスタンドのロッカーの中に投獄済み。
力〆厶(りきじめ ござい)は無職だという、丸坊主の男性。上は鎖帷子、下はスキー用のズボン(いずれも紫の蛍光色)。身長160cmで、ハングライダーで不時着。右手には強力そうなボウガンを確かに持っている。
趙「哎呀(アイヤー)!」
趙は無意味に叫んだ。
そういえば、鳥阿ゑZU(とりあ えず)さんについて振り返るのを忘れていた。学校図書館司書教諭の女性で、四十歳、身長200cm。ジャグリングの名手で、露天風呂にて宇宙服を着ながら頭蓋骨を破壊されて発見された。
趙「死亡推定時刻ハ、23:00~23:30デスネ~。」
黄「意味も無く、場を混乱させるようなことを仰らないようにして下さい。まずは私が、遺体を近くで見てみます。何か分かるかもしれませんから。」
オイラは露天風呂へざぶり、と、入った。
そして遺体まで辿り着くまでに、なんだか温かくなり、寝てしまった。
非おむろ「透明蝉の鳴くコロニー《推理編》」(小説)
2021/12/07(火)21:11~21:30