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(続)✌経の章✌/『ケンケンパ書庫カーニバル』
ケンケンパショコカーニバル ヘノショウ
※この章は本編開始の章ではありません。本編中の或る章のURLから飛んで、〝続き〟としてこの章に辿り着いた方はOKですが、そうでない方はまずは序章をお読み下さい。其がゲームブックの呪効というヤツです。げへへ!
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「おや、おきゃくさんかい!?」
ピンポーン、という呼び鈴を押した目の前の部屋ではなく、隣の部屋から出て来たのは……オランウータンだった。人語を発している。
〝物語〟の中の世界、とやらだからか!?
……オランウータンは、腰の辺りに、銃を携帯している!
設楽「……あ、あ、あの……。」
オランウータン「あんたら、どうしたんだい? すいどうのけんしん? それとも──」
伏「失礼しましたゅ~!」
オランウータン「まって! あんたら、このあぱーとでめざめたんじゃないのかい!?」
設楽「……え!?」
オランウータン「ちょっと、へやではなしていかないかい? ……べつのせかいからこのせかいにきたんじゃないか?」
……!?
銃を携えているオランウータンに促されて部屋に入ると、見覚えのある飲んだくれ警視正が昼間っから管を巻いていた。
設楽「だ……惰宮警視正!」
惰呑「We are…」
うい~、あ~、と唸っている。缶麦酒片手に、殺風景な部屋で壁に凭れ掛かって、のんびりしている。拳銃はオランウータンにあげちゃったようだ。……盗まれたのか?
惰宮 呑流比とは幾度か面識がある。というか、亜川と一緒に居ることが多い印象だ。
十年前から亜川にはいろいろ頼みごとをしているんだとか。警視正だが、警視庁からも岐阜県警からも軽んじられているおじさんで、威嚇射撃がしたくてたまらない困ったおじさんだ。警官の制服を着たままで真っ昼間っから缶麦酒を呷っているので、本人に間違いないだろう。白髪まじりのリーゼント。五十一歳だが、もっとお年を召しているように見える。
オランウータン「ささ、すわってすわって。いたのまだけど。」
伏「こういう板の間の店を持ちてえよお。」
設楽「は、はあ……。」
オランウータンは、くんしゃぎょうこ、という名らしい。ひらがなで。
既に出来上がっている惰宮警視正に代わって、くんしゃぎょうこが色々と説明してくれた。烏龍茶のペットボトルもくれた。
信じ難いが、下記が現状らしい。
・惰宮警視正は勿論、くんしゃぎょうこも、亜川 鉛児と面識があるらしいが、この〝物語〟の中の世界では一度も逢っていないらしい。(抑もくんしゃぎょうこは此世界のことを〝物語〟の中の世界とは知らなかった。──尤も、私達も、亜川から小澤笠への手紙の中でしか、〝物語〟の中の世界、だという根拠は無い……。)
・此処は〝物語〟の中の世界、且つ、滋賀県伊香市余呉町。
・西暦が採用されていないらしい。皇紀や元号も無く、今年のことはただ、乙巳、と言い表すらしい。来年は丙午。つまり、十干と十二支で循環しているようだ。六十年の還暦で一周だろう。……。
・本日は七月六日。
・曜日の概念自体が無い。
・二十四時になると、零時に戻る。何を当たり前のことを──という話ではない。意識が有ろうが無かろうが、零時になると部屋に寝転んだ状態に戻る。〝次の日はやって来ない〟。
・くんしゃぎょうこと惰宮警視正は、もう既に百日以上、この世界に居るらしい。私達がこの世界に来た〝五月三十一日〟と同じ年の二月十九日に、この世界に来たようだ。
・二日酔い且つ酩酊、いや、泥酔で、惰宮は動けない。盗難だか誘拐だかが起こって、それを解決しろと部下に言われて伊吹山東図書館へ来たような気がするが、よく覚えていない。五平餅屋の人語を操るオランウータン・くんしゃぎょうこがたまたま買い出しついでに惰宮とばったり遭遇し、そのまま伊吹山東図書館の草が茫々の裏庭まで来たとのこと。そして二者は、意識が途切れ、〝物語〟の中へ。〝物語〟の中へ入る直前、視界の隅に、獣や宇宙服に似た服を着た者を見掛けたような気もするとのこと。
伏「獣というのは、自己紹介かゅ~?」
くんしゃぎょうこ「ぶっとばすぞ! りすやいたち、というよりかは、てんというか……あれだ、びーばーみたいな、へんなやつ。じゃっかんかわいいかんじの。」
設楽「ふむ……。ところで、この世界へは意識が途切れて来た、と仰ったが──」
私は、くんしゃぎょうこと惰宮警視正に、弓について訊いた。
くんしゃぎょうこ「なにそれ!? 弓を弾いて来るなんて、知らない。」
惰宮「ゆーみんの曲なら、幾つか知っとるぞ!!!!! ダーッヒャッヒャッヒャッヒャ!!!!!」
惰宮警視正はへべれけだ。
弓について知らないとは、どういうことだ……? 弓に触れていなかったことになるが……? 伊吹山東図書館の〝裏庭〟から来た……? 〝書庫〟ではなく……?
んで、くんしゃぎょうこは、〝目覚める時は惰宮は必ず二階のこの部屋、自分は三階の決まった部屋で目覚める〟と言った。
設楽「ふむ……。」
くんしゃぎょうこ「そんでね、じぶんのまいにちは、このふりょうけいかんからけんじゅうをうばうことからはじまる。」
金を含め、所持していた物が、一日の始まりに全て元に戻るらしい。
伏「おなかすいたぺゅ~。」
くんしゃぎょうこ「すぐそこにちゃんぽんやがなんけんかある。はらごしらえしてきたら? おかねある?」
設楽「ええ、有ります、有難う。……ええと、くんしゃぎょうこさんはずっと此処に居ますか?」
くんしゃぎょうこ「そうだねえ……。きょうもまた、でんしゃにのろうかな。いみないけど。」
設楽「え?」
何うやら、滋賀県からどうあっても出られないらしい。どの方角から出ようとしても、線路が落石で封鎖されるんだとか。一度、惰宮を促してタクシーで出ようとしても、同様に出られないとのこと。
そして、岐阜県警察へ電話しても警視庁の本部へ電話しても警察庁の窓口へ電話しても、〝惰宮 呑流比〟などという警視正は居ない、という。
伏「そんな不良は警官ではない、という組織からの意思表示かゅ~?」
設楽「え~……? まあ、ある……かも?」
伏「それに、滋賀県から一歩も外に出なくても人生は謳歌すること能うゅ~!」
くんしゃぎょうこ「いちりあるけど、いまはそういうはなしではなく……。」
オランウータンが困るような発言をしないでほしいが……兎に角、お言葉に甘えて私と伏はちゃんぽんを食べに行くことにした。
くんしゃぎょうことは、〝明日〟──つまり、次の今日、またこの部屋で会う約束をした。
伏「美味いゅ~! そういえば、骸骨と原尿のこと……。」
設楽「あ! 訊くのを忘れていたな、くんしゃぎょうこに。……其にしても、近江のちゃんぽんは美味いな。追加で酢を少~し入れるのが、堪らん!」
外では、さっ、と、驟雨が通り過ぎていったようだ。店内の扇風機は、可成の年代物である。割り箸の袋には、〝と丁真戊〟と書いてあった。店長自ら、じっくりと皿洗いをしている。テレビでは大相撲がやっているが、知らない力士達だ。
伏「ぶぇっくしょんゅー!」
伏は一応、鼻紙で守護し乍ら嚏をした。有難い。守護が無かったら、今頃、真正面に座っている私の顔面は、地獄に外ならなかっただろう。
其にしても、美味かった。
食後。
午後三時ぐらいだろうか。
伏「さ~て、何処へ行くゅ~?」
ちゃんぽん屋の隣に公園が有った。中之郷、という駅の跡地らしい。そこに、此町──滋賀県伊香市余呉町の地図が有った。
地図をしげしげと二人、見た。
伏「この後はどこに行くゅ~?」
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《甲》設楽「……剣歯自動車学校とやらに行くか。アドバルーンも出ているし、祭かもしれない。」
伏「御祭楽しみゅ~!」
自動車学校に到着し、屋台を廻った。美味そうなツナマヨ鯛焼きの店で、二人、足を止めた。餡子の代わりにツナマヨを詰めているらしい。美味いに決まっている。
二木「らっしゃい!」
来島「あと数分で、焼き立てが上がります!」
二人の店員と、一人の客が居た。
葉茶「やあ……。……ワイは葉茶 覧。ここの鯛焼きはオススメだよ……。」
二木「有難う御座居ます!」
伏「美味しそうゅ~。待つゅ~。」
私(設楽 建健爬)、伏 兜、板前風の角刈りの男性店員・来島 冫零、ストレートミディアムショートの女性店員・二木 凪世、痩せた死神のような雰囲気の男性客・葉茶 覧の五人で、少し、雑談をした。
来島君と二木さんは剣歯自動車学校の八回生、葉茶君は十六回生らしい。卒論の執筆中だとか。
二木「剣歯自動車学校、初めてなんですか!?」
葉茶「へえ、県外の人なんだ……。」
来島「県外の人、初めて見ましたよ!」
〝物語〟の中の世界の人々だからこういう反応なのか、そういうわけではなくこの人々達固有の反応なのか、判断しかねる。
そんなこんなで、美味しいツナマヨ鯛焼きを購い、頬張るに至った。
葉茶「ワイは普段、草餅許食べているけど……此ゃあ美味いよなあ……。」
全くだ。
伏と私は夕方まで、体育館で上映していた映画を観た。二人共、号泣してしまった。
アパートに帰って寝ても実験にならないので、剣歯自動車学校の北東にある墓谷山の麓の治長庵という茅葺屋根の旅館に泊まった。
(⦿ω⦿)👍
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https://note.com/non_omuro/n/n0ec357f0824e
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《乙》設楽「剣歯自動車学校の図書館へ行ってみよう。兎に角、情報が居る。」
伏「らいぶらりゅ~。」
剣歯自動車学校の図書館へ着いた。
伏「剣歯自動車学校は元々、剣歯虎自動車学校だったゅ~が、虎の字が有ることによって、本当は此処余呉町に在るにもかかわらず、虎姫町に在ると誤解されがちだったゅ~から、虎の字を取ったらしいゅ~。」
設楽「へえ。……じゃなくて、この世界について、調べてくれ!」
色々、調べた。……何うやら元の世界同様、四十七都道府県も諸外国も、ちゃんと存在しているらしい。
ただ……いくら調べても、〝亜川 鉛児〟の情報が出て来なかった。
二人は無言で図書館を出た。もう日が暮れている。
学食で豚丼とサラダを食べて、移動。アパートに帰って寝ても実験にならないので、剣歯自動車学校の北東にある墓谷山の麓の治長庵という茅葺屋根の旅館に泊まった。
(⦿ω⦿)👍
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https://note.com/non_omuro/n/n0ec357f0824e
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《丙》設楽「ふむ……。郵便局へ向かうか。」
伏「〒やなあ。」
〠。
局長「君達、暇なら此処で働かないか?」
設楽「え、いや、働くのは一寸……。」
伏「それより、此処から岐阜県に葉書は出せるんでぺゅか?」
局長「ぺゅか?」
設楽「此処から岐阜県に葉書は出せますか?」
局長「ええ、勿論。……何故そんな質問を?」
設楽「いや、別に……。」
何となく気まずくなったので、郵便局の窓口で売っているかぼすの蓋付き缶ジュースを買って失礼した。これは、元の世界でも売っている……ような気がするが、パッケージが微妙に違うような気がしないでもない。
美味い。
学食で味噌ラーメンを食べて、移動。なお、伏は羊羹を勧めて来たが、私は甘いものを食べる気分ではなかったので断った。
アパートに帰って寝ても実験にならないので、剣歯自動車学校の北東にある墓谷山の麓の治長庵という茅葺屋根の旅館に泊まった。
(⦿ω⦿)👍
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https://note.com/non_omuro/n/n0ec357f0824e
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《丁》設楽「余呉駅へ行って、敦賀方面へ抜けられるか試してみよう。」
伏「福井県は久々ゅ~♪」
余呉駅には行けたが、福井県へは行けなかった。線路が天然の熔岩でやられたらしい。何だよ天然の熔岩って。
広田「参りましたねこりゃ。」
近くに立っていた筋肉質の美女が、そう呟いた。
近江塩津駅は人でごった返していた。
ふと、公衆電話を見て、閃く。亜川 鉛児の携帯電話へ電話した。
繋がらなかった。〝現在使われておりません〟でも、〝話し中〟でもなく、〝電波の届かないところに居るか、電源が切れています〟だった。
伏「仮に電源が入って通じたとしても、その電話番号の主が亜川の儘か、それとも別の誰かなのかは、分からないゅ~。」
慥に。
莫迦げた混雑。近江塩津駅に元の世界で来たことはあるが、こんなに混んでいるのを見たのは初めてだ。というか、元の世界の近江塩津駅のことをあまり憶えていないので、駅舎が同じかどうかの分からない。ただ、こういう、和風の民家みたいな造りで合ってたような気がするが……。
徒歩で余呉町まで帰った。
すっかり日没。
またちゃんぽんを食べた。
アパートに帰って寝ても実験にならないので、剣歯自動車学校の北東にある墓谷山の麓の治長庵という茅葺屋根の旅館に泊まった。
(⦿ω⦿)👍
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《戊》設楽「余呉駅に行くか。……関ケ原を目指そう。」
伏「岐阜県行きだゅ~♪」
余呉駅には行けたが、岐阜県へは行けなかった。県境で急に温泉が湧いたのと、線路を大量の蝸牛が食べ始めたのと、熊、蛇、蜂が大量発生したらしい。
河野「参りましたなこりゃ。」
近くに立っていた筋肉質な丸坊主で丸眼鏡の男が、そう呟いた。
醒ケ井駅は閑散としていた。
乗客は私達二人と、此丸坊主の男のみだった。
長距離走で余呉町まで帰った。脚が棒になる。
すっかり日没。
アパートに帰って寝ても実験にならないので、何も食わずに水だけを飲んで、剣歯自動車学校の北東にある墓谷山の麓の治長庵という茅葺屋根の旅館に泊まった。
(⦿ω⦿)👍
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